みなさまごきげんよう。
フェルディナント・ヤマグチでございます。
先週の三連休は、東京・城南地区在住のトライアスロン仲間と、バスを仕立てて千葉・館山に昭和スタイルの海水浴に行ってきました。
本業は歯科医ですが、船舶やら大型免許やらを持つ資格マニアの久保選手がハンドルを握り、一路館山へ。連休の中日は行きも帰りも近来稀に見る大渋滞で、何と往復で9時間近くかかりました。プライベートジェットなら米西海岸まで飛べる時間です。運転お疲れ様でした。
しかし東京湾アクアラインは(空いていれば)本当に便利ですね。トンネルを抜ければ、(もし空いていれば)アッという間に館山です。(奇跡的に空いていれば)東京からほんの少しのドライブで、ここまで美しい海が楽しめるのですから堪りません。
それにしても混雑が酷い。そろそろ通行料金を見直す時期に来ているのかも知れません。
プライベートビーチ(と呼べるくらいにエクスクルーシブな海岸)で午前中からアワなんぞを喰らいまして、素敵な時間を過ごしました。
今回のコンセプトは「昭和スタイルの海水浴を再現しよう」でありまして、スイカ割りをやり、往復のバスと貸し切りの会場では常時昭和の歌謡曲を流したりしました。古い歌は長い間歌わなくてもスッと歌詞が出てくるものです。これで家族麻雀でもやったら完璧でした。昔は海岸で麻雀する人をよく見かけましたよね。
昭和世代の海水浴らしく、スイカ割りもやりました。けっこう当たるものです。
城南互助会(年を取ったらみんなで助けあおうね、の意を込めた会)の面々と。 お利口さんの子供たちは炸裂するオヤジトークと長い渋滞にも良く耐えました。
で、こちらは都内某所でインテル勉強会。インテルと申しましても、デバイスメーカーのアレではなく、ソッチ系のことであります。参加者の所属先はもちろんのこと、陸自の山崎閣下以外は顔も出せないという極秘の会。いやぁ、世の中大変なことになっております。アメリカさんには敵いませんなぁホンマ。
こんなモザイクだらけでは、殆ど撮影する意味が無いのですが、これだけのメンツが揃うことは滅多に無いので。一応押さえておきました。
さてさて、それではボチボチ本編へと参りましょうか。
日本一売れている乗用車、4代目プリウスの開発責任者、豊島浩二さんのロングインタビュー第2弾です。
クルマに名前を付けるのは実は大変骨の折れる作業だと聞いた。それはそうだろう。人でもモノでもクルマでも、付けられた名前でそのイメージは大きく変わってくる。
声に出した時の音感。ローマ字で表記した際の見た目感。
今は亡き「ソアラ」なんて、ふわっと空に飛んで行きそうな、実にいい響きがする。アイシスはローマ字表記にすると、残虐な人殺し集団の名前と同じになってしまい、ちょっと残念だったりする。
「PRIUS」はラテン語で「~に先駆けて、~に先立って」という意味なのだそうだ。
トヨタはエンジンとモーターを併用して動力源とする量販型「ハイブリッドカー」を、世界に先駆けて販売することを強くアピールするために、PRIUSと命名した。誕生以来四半世紀。より進化し、より洗練されたこのクルマは、どのような思いで作られたのか。詳しくお話を伺っていこう。
“ミソ付き”の豊島さんがなんで開発責任者に?
F:プリウスは日本で一番売れている乗用車です。また世界的に見ても、ハイブリッド車として他の追従を許さない、圧倒的、絶対的な王者です。世界一の自動車メーカーの、世界一のクルマのチーフエンジニア。そうなると、ピカピカの経歴の方が任命されて然りです。
ですが、豊島さんのお話を伺うと……何と言いますかその……結構やらかしていらっしゃる。サラリーマンとしては、かなりの遠回りをされているし、いろんなミソも付けてしまっている。
豊島さん(以下、豊):正直な話“ミソを付けちゃった感”というのは有りますよね(苦笑)
まあ、リーマン・ショックなど時代の流れも有って、自分自身の失敗でミソを付けたのかというと、そこはいろいろ言いたい部分も有るのですが、結果としては間違いなく経歴にミソは付いている。チーフエンジニアとして、漸く車両の企画ができるよう立場になってきたのに、このままモタモタしていたらすぐに定年になってしまう。ああ、俺はこのまま何のクルマも立ち上げずに、定年退職してしまうんじゃないか……こんな恐怖感は確かに有りました。このままで自分のキャリア終わってしまうのか、そんな危惧も。
F:そんな時にトイレ専務から声を掛けられて…….。
広報有田さん:トイレ専務じゃありません!トイレで声をかけた吉田専務です!
担当編集Y田:ダメですよ有田さん。この男は人が嫌がると喜んで更に付け込んで来ますから。根性が曲がっているんです。いちいち反応しない方が良い。流すのがコツです。
広報有田さん:でもこのまま定着しちゃったら、私、本当に困るんですよ。
ADフジノ:そういうことも言わないほうが良いです。弱味を見せたら終わりです。
豊:ともかくですね、トイレで「お前、いま何をしているんだ」と声をかけられて、プリウスの開発責任者を任命されて。
F:つまりトヨタ版カングーの開発頓挫と、EV開発スタディーの早期撤退は、実はミソでも何でも無かったと。トヨタ的には。
豊:そうなんでしょうね。その2回は、会社から実はミソとは見られていなかったようです。
F:それにしても、どうして豊島さんがこの大役に選ばれたのでしょう。
豊:どうなんだろう。それは分からない、僕に聞かれても(笑)
「当時、プリウスの開発は“大炎上”していました」
F:どうして自分なのかと聞かれましたか?
豊:うん、それは後で聞きました。どうして僕がプリウスなのかと聞きに行った。そうしたら、「新しい血を入れたいからだ」と言われました。
F:新しい血。それはつまり、ハイブリッド畑を歩いて来なかった、先入観の無い人に任せたかったという事でしょうか。
豊:僕に期待されたことは、プリウスのリセットをすることです。だからまずはじめに僕がやったのは、プチッとリセットボタンを押すことでした。
「こいつなら炎上の現場に突っ込んでも倒れないだろう…と思われたんですかね」
F:プリウスのリセット。それは初代から3代目までのプリウスを引きずるな、或いは否定しろ、という意味でしょうか。まったく新しい仕組みのハイブリッドをやれ、と。
豊:いや、違うんです。この4代目。新型のプリウスには、既に企画の種があったんです。4代目には前任の開発責任者がいて、もう種が蒔かれていた。蒔かれていて、そしてそれが大炎上していた。
F:大炎上……。
豊:新しいプリウスには、TNGAという新しいプラットフォームが採用されました。これは剛性を上げ、操縦性能を高め、衝突安全性も向上するという、これからのトヨタのクルマの基礎となる、まったく新しいタイプの、完全に新設計のプラットフォームです。
F:TNGA。名前はビミョー過ぎますが、社運を賭した、大変な力作であると聞いています。
豊:新しいプリウスは、あれもやりたい、これも入れよう、と期待とともに、どんどん膨らんでいってしまった。だけどその一方で、それにかかわるお金、質量がありますよね。乗り心地を良くしたい、操縦性能を上げたい。でもそれらを全部飲み込んでいくと、クルマの質量、つまり重さは、どんどん増えていってしまう。
クルマの質量は軽くしなければいけません。でも燃費は、もっともっと良くしなければならない。クルマを良くしたい、すると重くなる。燃費を良くしたい、それじゃ軽くしよう。さらにコストの問題もある。基本的に重くなればコストは上がります。
F:あちらを立てればこちらが立たず……まさしく炎上寸前。
豊:炎上寸前じゃなくて、もう既に炎上していました。いろんな意味で、このクルマもう成り立たないよねと。そんな時に僕に話が来て……。だから最初は火消し役です。こいつなら炎上の現場に突っ込んでも倒れないだろう、みたいな(笑)
「最初の3カ月間は、ずっと頭を下げに行くだけの仕事でした」
F:なるほど、こうなるとデストロイヤー豊島の面目躍如だ(笑)。つまりプリウスの開発責任者拝命は、豊島さんのタフさを買われたと。
豊:たぶんそうですね。ネガティブ、ポジティブで言うと、自分はポジティブですから。血液型がB型なので。B型って基本的には臆病ですが、イヤなことが有っても、すぐにスッと忘れるでしょう。
F:私もB型なんですけど……。
担当編集Y田:えぇ!フェルさん、あんたB型!
ADフジノ:どうりで……
F:B型牡牛座二黒土星。誕生石はダイヤモンドです。それが何か。
豊:やっぱりフェルさんもB型ですか。B型は忘れますよ。忘れるので、たぶんこの炎上もこいつならなんとか収められるんじゃないかと思われたのかな、という気がします。リセットボタンを押すということは、今までの企画を一回ゼロにさせてね、ということですから……。
F:そりゃ今までやっていた人たちとは軋轢が生まれますよね。何を今さら言うてんねん、と。
豊:その通りです。僕、だから最初の3カ月間は、ずっと頭を下げに行くだけの仕事でした。
F:いったんやめるのでよろしくね、と。
豊:いや、やめるのでよろしくじゃ通りません。だって今までそれで仕事をしてきて、掛けたお金も時間もある訳ですから。特にパワトレに関してが厳しい。なぜなら開発要件に車両重量が有るからです。
F:パワートレイン。プリウスの心臓部分。
豊:そう、まさしくプリウスの心臓部分。パワトレは、これくらいの重さのクルマだから、これくらいの性能が必要ですよねと言って彼らは開発している訳です。そこに「重さを変えます」と言うのだから……。
F:パワトレの開発陣からすれば、「はぁ?」という話ですね。
プリウスは、TNGA採用の第一号車
豊:そう、正しく「はぁ?」という話です。「豊島呼んでこい!」って話ですよ(苦笑)。もうあちこちの部署から呼び出されて、そこへ行っては謝るわけです。着任早々、毎日が謝罪です。
「トヨタのクルマが大きく変わる、その象徴がプリウスだったんです」
F:着任早々謝罪って、なんか韓国の黄教安首相のような。あの方も着任したばかりでMERS(中東呼吸器症候群)のことで対応が悪いと謝罪させられましたよね。
豊:でも僕はこう考えました。これは焼畑農法だと。畑が燃えて、火が消えた後には豊饒な土地になる訳じゃないですか。
F:確かに豊島さんはポジティブです(笑)。しかしその大役拝命前はどうだったのですか。なんか4代目プリウスは炎上して相当ヤバいことになっている、という噂は聞かれなかったのですか?
豊:噂もなにも。前にお話ししたEVのスタディは、プリウスの隣の部署でやっていましたから。炎上丸見えです。あぁ、あれはどうするんだろうなーと思って横から見ていました。
F:どうするんだろうなーと思っていたら、イキナリ自分が当事者になってしまった(笑)
豊:そう(苦笑)。そこでリセットボタンを押すことから始めたんです。リセットボタンを押してからキチンと謝りますと。でも謝るだけではだめなので、「ここまでやります」という約束をしました。
その一つがプラットフォームのカバーレンジ。例えば、衝突安全性を含め、車両重量が1トンから1.5トンのクルマを同じプラットフォームで造ることができるように設計しておけば、そのままで、いろいろな車に流用できるんです。プラットフォームが流用できれば、コスト的にも助かるし、何より性能的に良いモノがどんどん増えていく。これがTNGAの基本的な考え方です。
F:なるほど。しかし1トンから1.5トンが同じプラットフォームとなると、1トンの方はオーバースペックに、そして1.5トンの方は性能ギリギリに、ということになりませんか。
豊:なりません。そこはキチンと枠を分けています。プラットフォームには上限と下限がやっぱりあるのですが、その下限までを1つのプラットフォームで極力造りましょう、部品を共用化していきましょう、というのがTNGAです。つまり、上限に合わせていいものを造って、それを広く使うということでメリットを出す訳です。
F:TNGAはCセグ専用なのですか?もっと大きいクルマにも使えるのですか?
豊:使えます。カムリにもプラットフォームを展開しています。またCセグで言うと、カローラから現行のレクサスCTまで同じ「群」の中に在ります。ウチとしては、同じ群の中にいるものを、基本同じプラットフォームで造っていきたい。
アッパーボディーにしても、今度出てくるC-HRみたいなクロスオーバーだったり、普通のセダンだったり。またハッチバック、2ボックス、ワゴン。これらのクルマも、この中でちゃんと造れるようにしましょうと。だからまず車体を整理しています。その初っ端がプリウスなんです。トヨタのクルマが大きく変わる、TNGA採用の第一号車がプリウスなんですよ。
F:なるほど。「燃費世界一」のタイトルもさることながら、プリウスにはそうした象徴的な意味も込められていた訳ですね。
「燃費性能世界一」の金看板を提げて、華々しく登場したプリウスは、これからのトヨタを担う新型プラットフォーム、「TNGA」採用の第一号車でもある。
着任早々謝罪の日々が続いた4代目プリウス開発主査の豊島さん。イイ感じに盛り上がって参りました。
しかしこちらはまだ地獄の一丁目。苦難が始まるのはこれからだ。打たれ強く、イヤな事はすぐに忘れてしまうB型開発主査のお話は、次号へ続きます。
お楽しみに!
愛車のエンブレムのデザインの由来、知っていますか?
みなさんこんにちは。編集担当のY田です。
今号のプリウスCE豊島さんのインタビュー第2弾、いかがでしたでしょうか?世界のトヨタの役員を「トイレ専務」、豊島さんを「ミソ付け」呼ばわりしてしまい…本当に申し訳ありません。本人いわく「B型牡牛座二黒土星。誕生石はダイヤモンド」らしいので、それに免じて(?)、何卒お許しを。
今回のインタビューも、またまた長くなりそうです。何しろ、プリウスの具体的な開発着手の手前、まだ“焼畑”の段階までしか話が到達していませんので…。豊島さんの本当の棘の道が始まるのは、これからとのこと。ぜひご期待ください。
さて、申し訳ありませんが、ここからは、プリウスとはそれほど関係ない話を。
みなさん、クルマの購入を検討する際に、エンブレムについてはどのくらい気にされますか?「エンブレムが気に入らないから買わない」という方はほとんどいらっしゃらないかとは思いますが、結構重要だったりしますよね。私は以前、買い替えを検討している際に、エンブレムを理由に自分イチオシのクルマの購入を家族に反対されたことがあります。アクセルとブレーキの区別もつかないようなクルマ音痴の家族に…。
で、以前から思っていたのですが、日本の自動車メーカーに関しては、社名由来のアルファベットをデザインベースにしたエンブレムが多いのはなぜなんでしょうか?例えば、トヨタは「T」、ホンダは「H」、マツダは「M」、スズキは「S」をモチーフにしています。
もちろん海外でも、フォルクスワーゲンの「VW」みたいな例はありますが、モチーフが馬であったりライオンであったり、またはもっと抽象化されていたり、おおざっぱに言えば「凝った」デザインのものが多いように思えます(あくまで個人的な主観ですが)。
この違いは、どこから来ているんでしょうか? メーカーとしての歴史? 立ち位置? もしくはその国の国民性や嗜好?…。どなたか、ご存じの方がいらっしゃったらご教授ください。
ちなみに、私はマツダ・デミオのユーザーです。マツダのエンブレムには、「未来に向けて羽ばたくMAZDAの『M』」という意味が込められているそうです。たしかに、「M」の中心部の「V」は、羽のようなフォルムです。
3つの楕円を左右対称に組み合わせて「T」を表現しているトヨタの場合、内側の2つの楕円が「お客の心」と「トヨタの心」、外側の大きな楕円の輪郭が、2つの心をつなぐ世界を表現しているとのこと。
エンブレムの人気投票をするとしたら、皆さんはどのメーカーに一票を投じますか?ちなみに、私は、蛇が巻き付いているラテン系のメーカーです。
マツダの皆さん、ごめんなさい。あくまで「エンブレム」だけの話ですので、ご容赦を。
この記事はシリーズ「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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