非常に有意義な工場見学会を終え、これにて86GRMNの記事はいったん終了いたします。
次週から始まるのは、これまたガラッと趣が変わりまして、燃費重視のあのクルマ。往復1600キロのロングドライブでその実力をジックリと味わって参りました。
お楽しみに!
テクノクラフト工場で見た「トヨタのやる気!」
こんにちは、ADフジノです
最終回を迎えた86GRMN編ですが、いかがでしたでしょうか。これでいったん終わりますが、インタビュー編が消化不良だというフェルさんのために続きのネタも仕込中です。ご期待ください。
さて、今回はめったに公開されることがないトヨタテクノクラフトの工場見学編でしたが、そもそもなぜトヨタテクノクラフトでエンジンの組み付けを行うのか? 組み付けだけなら自社のエンジン工場でもできそうなものです。
それに対して86GRMN開発責任者の野々村さんは「トヨタのモータースポーツにとってエンジンは重要なファクターであり、トヨタとトヨタテクノクラフト・TRDとのエンジンに関する技術的なつながりは非常に強いのです」と言います。

たしかに、TRDと言えばToyota Racing Developmentの略であり、これまでにもル・マン24時間レースに参戦したグループCカーや全日本GT選手権などのレース車両を開発してきたことでも知られています。現在のスーパーGTのGT500用車両、レクサスRC Fもここで開発、製造されています。
ちなみに現在のスーパーGT GT500用のエンジンは、ダウンサイジングの流れを受け2リッター直4ターボに制限されています(出力は550馬力以上とか)。GT500クラスは日産、ホンダ、そしてトヨタの3社がしのぎを削っているわけですが、トヨタのエンジンはまさにこの工場で開発されているようで、実は撮影NGのゾーンがたくさんありました。
フェルさんが紹介しているエンジンベンチも部屋には数基が備えられており、86GRMNのエンジンを検査するベンチがもっとも旧式なものでした。背後には最新のベンチがあり、内部の照明は落とされているものの、何やら凄そうなエンジンが載せられていることはわかります。「あっ、そちらは見ないでください」って、言われてもねえ(笑)

86GRMNのエンジンの改良点は主に以下の4つだそうです
(1)軽量ピストン/低張力ピストンリング/低フリクションクランクベアリング 低回転からの優れたレスポンスを追求し、ピストン内部の肉抜きとショートピストンピンにより軽量化。さらにピストンリングがシリンダーを押さえつける力を低減し、低フリクション化しながらも、背反するオイル消費はピストンリングのランド部の形状を変更することで、従来と同等の消費量に抑制している。
(2 )可変インテークマニホールド/完全等長エキゾーストマニホールド 2つのインテークポートを備え、ロングポートは低・中速回転でのトルクアップ、ショートポートは高回転での高いレスポンスを実現。また、エキゾーストマニホールドを完全等長化、さらに大径化することで排気干渉をなくし、出力向上に寄与している。
(3 )抵抗低減エアクリーナーフィルター/可変バルブ付エアクリーナーダクト エアクリーナーは吸塵性能を確保した上で、高回転での吸入抵抗を低減。また、エアクリーナーダクトに可変吸気バルブを採用し、高回転時の吸入空気量を増加させ、レスポンスを向上している。
(4)可変バルブ付きセンターマフラー 周波数解析と官能評価を繰り返し、等長エキゾーストマニホールドとの相乗効果による気持ちのいいサウンドを追求。4000回転付近で切り替わる可変バルブを採用し、低回転での静粛性とスポーツ走行時の躍動感を両立する。
これらによって、最高出力は219PS/7300rpm、最大トルクは217Nm/5200rpmへと高められています。ベースのエンジンが200PS/7000rpm、205Nm/6400-6600rpmですから、より扱いやすい特性になっていることがわかります。高出力化のためにターボ化したほうが簡単じゃないの? という声ももちろんあったようですが、そこは気持ちよさのためにあえてNAにこだわったそうです。

そしていまトヨタテクノクラフト横浜本社にあるレーシングカーのレストア工房兼保管庫には、グループCカーをはじめ、WRC時代のマシンが集められているそうです。今年のル・マンはとても残念な結果でしたが、しかし素晴らしいレースでした。そして来年にはWRCへと復帰予定です。トヨタのやる気がここにも詰まっていました。

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