後でボコられたのは僕ですよ

:出来ない理由を100コ並べるヒマが有るのなら、どうやったらできるかを100コ考えて来い、と。量産車の常識が一切通用しないんです。

 レースって目の前ですぐに結果が出ちゃうでしょう。練習走行の時から時間との戦いですから。前にオートポリスを借りきって極秘のテストをやっている時に、ECB(エレクトリック・コントロール・ブレーキ)の担当をやっていたのですが。

F:ECB、ル・マンに出るレースカーにも採用されているハイブリッドのためのエネルギー回生装置ですね。ブレーキペダルを踏むと、ブレーキの代わりにモーターにトルクを掛けて減速する。

:そうです、そうです。モーターにトルクを掛けて減速するのですが、モーターのトルクって、低回転では高いのですが、高回転になるとトルクが落ちてくる。モーターの減速だけでは足らなくなるから、ディスクとパッドのブレーキと併用することになる。

 ドライバーがコーナーに進入する際に減速しようとブレーキを踏む。速度は刻々と変わりますから、ブレーキのトルクもそれに併せて刻々と変わる。その分を油圧制御で補わなければならない。モーター回生のトルクブレーキと、油圧ブレーキでうまく協調させる必要があるんです。

 その制御をやるわけですね。たくさんのセンサーで監視しながら、今モーターがこれだけ回生しているから、油圧をこれだけかけてあげようと。コンピューターが判断して、アクチュエータに指令を送って、ピピっとやる訳です。

F:なるほど。その塩梅が難しい。

:まさに塩梅です。で、そのオートポリスの実験の時、そこのパーツでトラブルが有って、貴重なテストがムダになってしまった。テストを一回やるのに1000万円とか軽くかかっているので…。

F:一回のテストで1000万!どわー!

:サーキットの使用料だけではなく、ロジスティクスやスタッフの人件費なども入っているので、すぐにそれくらいは行きます。そこで失敗すればもう針の筵です。みんなの冷たい視線がバシバシ突き刺さる(苦笑)

 翻って86のGRMNです。ベースとなるノーマルの86は5人で開発したのですが、今回のGRMNは殆ど全てを1人でやりました。性能とか製造も含めて、とりまとめていたのは自分一人です。だから今日も僕1人しかいないんです。

F:じゃあスバルと交渉して向こうに散々ボコられたのは……。

:最初のコンタクトは多田さんでしたが、後でボコられたのは僕ですよ。二回目以降、富士重さんに「はぁ?」と言われたのは僕だったんです(苦笑)

 尻切れトンボで本当に申し訳ありませんが、会場の都合もあり、インタビューはここで強制終了と相成った。続きはご両人とのスケジュールが調整され次第実施します。

 で、お詫びというわけではありませんが、先日、86GRMNのエンジン製造工程を探りにトヨタテクノクラフト横浜本社にある、通常は非公開のエンジン組み立て工場に潜入してきましたので、次号はそのリポートをお届けしたいと思います。

 そういえば、豊田章男社長のインタビュー交渉は進んでいるのでしょうか?原稿の催促ばかりが飛んできますが、こちらもお願いしますよホント。このままやっぱりダメでしたー」じゃ日経ビジネスオンラインの股間に関わりますよ。あ、估券ですか。そりゃ失礼。

 それではみなさままた来週―!

英国EU離脱と自動車メーカー

日本時間の6月24日、英国がEUからの離脱を決断しました。想定される影響については、当サイトを含めて多くのメディアでさまざまに言及されていますが、自動車メーカーも、大きな困難に直面することになりそうです。

短期的に最も懸念されるのは、円高株安のダメージです。輸出・国内販売の双方で、重い足かせになります。

皆さんもご存知の通り、クルマの国内販売はもともと低調な状態が続いています。乗用車8社が4月下旬にまとめた2015年度の国内生産台数は14年度比4.1%減。前年度実績を下回るのは2年連続で、900万台を割り込むのは東日本大震災の影響を受けた11年度以来です。ハイブリッド車などの国内販売は堅調だった一方で、軽自動車の増税が響いた格好です。

足元がおぼつかない中で、円高株安が基調となってしまえば、その影響は軽微にはとどまらないでしょう。

また、英国が実際にEUから離脱するのは2年後とされていますが、英国をEU市場進出の拠点としている自動車メーカーは、生産拠点の移転などを検討せざるを得ないかもしれません。関税引き上げなどにより、英国からの輸出条件が悪化する可能性が否定できないからです。

世界を舞台にした大混乱の中で、日本の自動車メーカーがどう動くか。しばらく、試練の時が続きそうです。

(編集担当:Y田)

この記事はシリーズ「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。

セミナー開催 フェルディナント・ヤマグチ流「部下育成」!

 本コラムの著者、フェルディナント・ヤマグチ氏が「日経ビジネス課長塾オンデマンド」主催のセミナーに登壇します。

 今回、課長塾オンデマンドではあえて、「企業人としてのヤマグチ氏として、登壇してください」とお願いしました。なぜならヤマグチ氏は、「コラムニストとの両立」という多忙な生活を、20年もの長きに渡り成立させてきた人だからです。本セミナーでは、そんなヤマグチ氏ならではの(仕事についての)方法論に迫ります。

 とはいえ講演時間は、わずか1時間。そこで今回は、「部下育成」にテーマを絞って話していただきます。部下やチームのマネジメントにお悩みの方は、ぜひご参加ください!






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