時間との戦いとなった本インタビュー。

 多田さんのご厚意で20分の延長となったが、話は章男社長からレースまで横道に逸れまくる。ロングインタビューの(とりあえず)最終回は、86GRMNとレースからのフィードバックなどについてお届けする。

トヨタの辞書に不可能の文字はない

多田さん(以下、多):フェルさんにも日経ビジネスオンラインの読者の方にも本当に分かって頂きたいのは、トヨタ生産方式の精神の部分です。確かに生産性を上げ、無駄を省き、効率化を突き詰めるということはやりますよ。ウチは徹底してやります。さっきフェルさんが言った、作業時の歩数管理というのも間違いじゃありません。

 でもあれは、究極的な効率を求めて行った道中で出てきたノウハウの集合体の中の一つ。たった一つの要素でしか無いんです。トヨタの生産方式は、そんな歩き方をいちいち細かく指図するためにやっている訳じゃない。それが目的じゃ無いんです。

F:ではその根底に流れる精神というのは何でしょう。

:何事にも不可能は無い、ということです。いろいろな観点から考えて行けば、必ず答えは見つかるということです。

F:不可能はない。それはまたナポレオンのような。「予の辞書に不可能の文字はない」ならぬ「トヨタの辞書に不可能の文字はない」。

:僕らトヨタの人間は、簡単にあきらめるなということを、新入社員の頃から徹底して叩き込まれています。その精神の伝道師たる人間が、ここの工場長の二之夕です。

F:なるほど。だからこそ二之夕さんはGRMNの組み立て、しかも限定生産僅か100台というヤヤコシイ案件を受けて下さった。いくら章男社長が熱望されたって、スバルが「そんなものは出せない」と言ったらオシマイだし、また肝心のトヨタの生産工場が「そんな非効率な仕事は受けられない」と言い始めたらどうにもならない訳で。

:そうなんです。だから元町工場でやってみるか?と言われた時は逆にびっくりしてしまって。こっちはもうバカ言ってんじゃ無ぇよと怒鳴られるかと思ってビクビクしながら聞いたわけで(苦笑)

 もしスバルさんからホワイトボディを出すことを断られ、ウチの工場がどこも受けてくれなかったら、今までのGRMN同様に、完成車をバラバラにバラして上で、イチから組み立て直すということをしなければならなかった訳ですから。

次ページ 「多田さん。もう本当に時間いっぱいです」