F:ありがとうございます。ムリを言って申しわけございません。手前勝手な理由なのですが、これから日経ビジネスオンラインでSUBARUの大特集を始めるに際し、どうしても新社長のお言葉を聞いておきたかったのです。米国(以下アメリカ)の有力ディーラーやSUBARUアンバサダーのユーザーの方々を、とても興味深く取材させていただいて、さあこれから面白い記事を……という矢先に、新たな不正が発覚したものですから、どうしてもトップの方から直接、現状と今後のお話をお伺いしたくて。

:事情は分かりました。できる限りのことはお話します。

なぜ社内ではなく、国交省のチェックで発覚したのか

F:時間が限られているので単刀直入に。今回の不祥事発覚。どうしてこのようなことになったのでしょう。延べ49人への聞き取り調査を、社外の弁護士も同席して実施した社内調査では見付けられずにいた不正が、後に行われた国交省の調査でサクッと発覚した。社内の人間同士では明かせない、何か大きな問題があるからではないでしょうか。その点をどのようにお考えですか。

:去年の12月に不正疑惑(完成検査工程に属する燃費の抜き取り検査で、データの書き換えが行われていた疑い)が浮上し、すぐに調査を始めてこの4月に国交省に報告をいたしました。その後に国交省の調査で指摘を受けて、新たな不正が発覚した。私としても忸怩たる思いでいます。昨年10月に明らかになった完成検査(※)の不適切事案以降の一連の事態はとても重大なことで、根本的にはSUBARUという企業の風土に関わることだと思っています。

(※:型式指定を申請する際に、国交省へ提出している上位規定=完成検査要領では、完成検査員が完成検査を行うこととしていたが、業務規定では異なる運用になっていた。同社のリリースはこちら

F:企業風土の問題、ですか。

:はい。

F:それは会見でもおっしゃっていましたが、善いことも悪いことも含めて伝承されてきた。先輩もそうしてきたからと「当たり前」にやってきた。

:そういう面があることは否定できません。規範意識に乏しいのではないかと言われてしまえばその通りです。しかし、現場は「代々先輩に言われたことを忠実に守ってやってきた。その通りに仕事をやってきた」という意識があったのではないかと思います。

労使共に「膿を出す」と誓ったはずが

F:真面目であることが、悪い方向に作用してしまった。

:今年の春闘では、組合も一緒に膿を出そう。一緒になってキチンと問題を解決していこうじゃないかということがテーマとして挙がっていたんです。

F:一緒とおっしゃるのは労使ですね。労使が一緒になって膿を出していこうと。

:そうです。労使の協議の中でも、一緒に解決していこうという話になっていた。

F:会社が傾いてしまったら、組合も何もないですものね。

マイトのY:フェルさん。お願いですから今だけは脱線しないで!

:そうやって労使共に頑張って膿を出し切ろうとやっていた最中の話なのです。SUBARUのどこに問題があるのかを、これからの調査でえぐり出していただこうと思っています。僕はそこが一番大事なところだと思っている。

F:社内調査が身内の間のおざなり調査になっていて、国交省の調査はうんと厳しかった。「正直に吐かないとタダじゃおかないぞコラ!」と厳しく詰められたとか、そのようなことはありませんか。

:それはないと思います。

F:普通は逆の結果になるのではありませんか。身内の人間になら正直に話すことでも、管轄省庁の知らない役人が乗り込んできたって、腹を割って話すことなどないのではないかと。でも結果は逆になってしまった。ということは、例えば何か会社に大きな不満があるからではないですか。だから役所の調査に対して、ここぞとばかりに「僕らこんなズルをしてました」と話をした。そんなことはないですか。

:それは今の段階では何とも言いようがありません。それを含めて、しっかりと調べていきたい。恐らく理由は一つではなく、様々な要素が複雑に絡み合ってのことだと思います。それらの要素を、ひとつひとつ丁寧にひもといて、「真因は何か」ということを明らかにしていきたいと思っています。

F:吉永現社長は「膿を出し切る」とおっしゃっていました。その膿とは何ですか? 人なのか、風土なのか。具体的に何を指すのでしょう。

悪いところがある、それだけはハッキリしている

:風土ですね。悪しき企業風土と言うべき部分です。

F:その風土に地域性は含まれますか? SUBARUの工場がある群馬県の県民性は、「細かいことを気にしない大らかな気質」と言われています。

マイトのY:あああ……。本当にスミマセン。

:……コンプライアンスに沿ったチェックをもう一度万全に行って、完全に膿を出し切ります。残念ながら今のSUBARUには「風土」として悪い部分が実際にあるのだと思う。それを明確にして、キチンと捉まえて、根絶します。

F:膿を明確化し、根絶するという荒療治を行うプロセスの中で、会社を去らざるを得ない人も出てきますか? 本当に諸悪の根源的な人がいたらどうしますか。

:それは社内の規定に則って清々と進めていくことになると思います。

広報氏:フェルさん。そろそろ……。

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