虫谷氏は異色の経歴の持ち主だ。高校時代にはフットボールでユース日本代表に選ばれ、まだJリーグが開幕する前、実業団だった日本サッカーリーグ(JSL)の名門、東洋工業サッカー部(現・サンフレッチェ広島F.C)に入団。数々の実業団チームがスカウトに来る中、クルマが好きで引退後には自動車の実験をやりたいと東洋工業を選んだという。オフの時間には、あのランドローバー・ディフェンダーでオフロードを走っている。

F:その方……千葉さんも虫谷さんと同じようにアスリートなのですか? 

虫谷:ボルダリングをやっています。

F:ボルダリングを! バランス系じゃないですか。

虫谷:ですね。私は競技としてのボルダリングはやったことがありませんが、ボルダリングってこういうものだよと遊びでは挑戦したことがありまして。あれは人間のバランスにおいて究極のスポーツじゃないですか。

F:確かにそうですよね。

虫谷:次は右手をあの石に引っかけたい。あそこに行きたいと思ってもなかなかできるものではありませんよね。

F:気持ちはあってもすぐに落ちちゃいますからね。

虫谷:自分は「行きたい」と思っても、体が出ないというのは、抑制の制御がかかっているんですよ。

F:抑制の制御というのは……。

え、虫谷さんがモトクロス?!

虫谷:本当に自分が感じているバランスがあって、でもそこにリミット、抑制がかかってしまう。「落ちてもいいや」と思って恐怖心を振り払って手を離すことはできますが、その前に必ず抑制がかかって自分の体を制御してしまうんです。

F:つまり、怖いからということですか? 右手を離したら下に落ちちゃうという、恐怖によって制御されている?

虫谷:理由は恐怖であったり、バランスであったりします。これは体の“軸”の話に繋がるものです。このような話を理解してもらえる千葉さんに出会いまして、「ああ、この人だ」と。私からいろいろな話をすると、「それはこういうことだ」と教えてもらえるわけです。

F:前回お話を伺ったときは、まだ千葉さんと出会ってなかったのですか。

虫谷:千葉さんのことは知ってはいましたが、まだこういう話をするまでの接点はありませんでした。今日は千葉さんの話になるだろうと思って資料を持ってきたんです。

 そう言うと、虫谷氏は古いムックを取り出した。

虫谷:もともと私はサッカーをやっていましたが、趣味でバイクにも乗るんですよ。

F:ディフェンダーで野山を走っていることは伺いましたが、バイクは初耳です。

虫谷:モトクロスのエンデューロレースをやっているんです。そしてこの本は私のバイブルです。

マイトのY:なんかすごいものが出てきましたね。相当古いものですよ。