日:意識的にクルマ選びをする人たちです。自分のライフスタイルに対する意識が高く、またリテラシーが高い人。そういう人たちは、「俺にはSUBARUが一番いい」と言い切って、乗り継いでくれる。それで90年代の半ばから徐々に復活してきて、初代のアウトバックを出して、それからフォレスターを出して、というのを少しずつやってきた。
F:アメリカでアウトバックとフォレスターの比率はどれくらいになりますか。
日:アメリカではちょうど半々ですね。アメリカ以外のマーケットだと、アウトバックは、少し上級で値段も高くなりますから、圧倒的にフォレスターの比率が高くなります。
F:アメリカでは高いクルマが平気で売れる。
日:平気というか、アウトバックの価格帯が、アメリカ市場ではそんなに高いということじゃないんですよね。例えばヨーロッパでは、基本的にクルマのセグメントがアメリカよりもワンサイズ下の方が中心になります。

F:アメリカはデカくて高いクルマが売れる。日本とアメリカでは、乗用車の平均購買価格が100万円違うと聞いたことがあります。
日:そうですね。やっぱりそれは生活の中で欠かせないし、大きさの感覚も違っているし。当然値段も違ってくる。
F:軽自動車の存在が、全ての数字を引き下げているのでしょうね。
日:そうかもしれません。
F:SUBARU全社的に見て、アメリカの比率はどれくらいなのですか?
日:6割以上です。
F:そんなものですか。もっともっと高いと思っていたのですが、収益ベースだとどうなりますか。8割くらいになるでしょうか。
日:いや、もっと高い。もちろん為替にもよりますが。特にウチの場合は、米国の生産比率が……一昨年にインディアナの工場を拡張しましたが、その前は米国の生産比率が3割ぐらいしかいっていませんでしたから。今やっと半々まで持ってこれたので。
F:インディアナ工場の拡張で日本からの輸入と現地生産で半々くらい。これからさらに現地生産を増やすのですか? トランプさんも「もっとアメリカで作れ。課税するぞオラ」とか言っていますし。

日:今のところは我々としては対応できないですね。ここ数年で大幅に増やしてきましたから。我々なりに努力はしてきていますので。
日本市場はどうするの?
F:なるほど。しかしトランプ支持層はSUBARUを買わなそうなイメージですね(笑)。
日:言われますね。SUBARUのお客さんは、どちらかというとリベラルと言われます。ですがこれ、イデオロギーというよりも地理的な理由です。SUBARUがよく売れるスノーベルトは、「北東部の民主党」みたいな感覚があるんです。
F:地理的な。なるほど。確かにこの国では地理がニアリーイコールで政治になってしまいますものね。南部の共和党、みたいな。
日:今はニューイングランドエリアと北西部のワシントン州シアトル周辺みたいなところが一番強い。西海岸の中でも特にスノースポーツをやるような北西部というのが非常に強いです。シアトルは海岸からロッキー山脈まで近いし、坂のある町が多い。雪が降るとAWDじゃないと厳しいですから。
F:なるほど。一方で、SUBARUにとっては台数も少ないし利益もそれほど見込めない国内市場ですが、どのようにご覧になりますか。それを最後に教えてください。
日:SUBARUは軽自動車の開発、生産から撤退してしまいました。登録車も、小型車と普通車と分けているところの所謂5ナンバーと言っている小型車のところも商品を持っていません。
F:軽は知っていましたが、小型車も……そうか……。
日:トヨタさんからのOEMがありますが、実際に我々が開発、生産している商品は、完全に普通車3ナンバー以上のマーケットなんですね。それが市場の3分の1ぐらいですからSUBARUという会社は、「3分の1のマーケットで商売をしている」と。
F:3分の1のマーケットで……。
日:一方で、(OEM供給を受けている)軽とか小型車というのは、やっぱり数を売らなきゃいけません。我々のようにマスパワーが弱い会社は、非常にそこが弱い、辛い。
F:うーむ。販売店の数も少ないですしね。
日:販売店のネットワークもそうですし、パーチェシングパワーにおける原価の問題も非常に厳しい。だから我々は、普通車マーケットで、いかに「SUBARU」というブランドをこれからもきちんと買っていただくか。そこが重要です。国内マーケットは、やっぱり人口減少も含めてトータルでシュリンクすることは見えている。現在SUBARUは国内で年間に約16万台(2018年3月期で16万3400台)を売っていますが、そこをどうやってキープしていくかが大きい課題だと思っています。

スバル360から始まったSUBARUは、今や軽自動車だけでなく小型車の製造もやめていた。これからSUBARUはどうなるのか。「日本で一番利益率の高い自動車メーカー」も、悩みは多い。
さてさて、SUBARUの大特集。来週は新社長にご登場いただく予定だ。
どんなお話が伺えるのか。お楽しみに!
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