それにしても何と間の悪い……。例の完成車不正検査事件である。

 3月末にニューヨーク国際オートショー2018を見学に行き、そこでたっぷり仕込んだSUBARUネタ。SUBARUの屋台骨を支える新型フォレスターのアンヴェールの瞬間を目撃し、開発者にお話を伺い、ディーラーにも訪問し、「SUBARUが好きすぎて……」とSUBARUのロゴマークをTatooにした女性にも会って来た。

 今週水曜日には新型フォレスターの国内お披露目会が開催される。そのタイミングに合わせてSUBARUの記事を連発すれば、さぞかし盛り上がることだろう……こう目論んでいたのだが、そんな時にまたぞろの不正発覚である。思惑は完全に裏目に出てしまった。

 昨年10月にこの不始末が発覚した際は、同時に発覚した某社との差が取り上げられ、その「誠意ある対応」が評価され、SUBARUの潔いインシデント対応能力に感心させられたものだ。しかしこうなると話が違ってくる。なぜこうした不正が続くのか。これで本当に終わるのか。SUBARUという会社が、そもそも「分かっちゃいるけどやめられねぇ」のスーダラ体質であるのか。6月22日の株主総会後に正式に就任される予定の新社長は、所謂「ブタを引かされた」ことになるのか……。

 ノリと気分で文章を書く私としては、この辺をスッキリさせなければ記事にすることはできない。

 SUBARUの広報部に相談したところ、「それなら」と、新社長となる中村知美氏の直撃インタビューをセットしてくださることになった。ムリを言って本当にスミマセン。ご尽力感謝いたします。あぁ、これで気持ち良く記事を書くことができる。

 ということで、今号はアメリカ合衆国(以下アメリカ)で八面六臂の大活躍をされた、日月(たちもり)丈志専務のインタビュー in ニューヨークである。場所はセントラルパークの緑も眩しい豪奢なダイニングルーム……ではなく、モーターショー会場の地下会議室。間違って知らない人が何度も入って来る不思議な部屋だった。

 SUBARUは製造するクルマの大半、販売台数106万7000台の約6割、67万900台(18年3月期)をアメリカで売っている。利益の大半もここで上げている。当然新車の発表は「一番大事な」アメリカで行うことになる。

 このたびめでたくアンヴェールされるクルマは新型フォレスター。アメリカでも「特定の地域」で人気の高いクルマである。

「LOVEキャンペーン」とは何なのか

F:ショーの真っ最中にお時間をいただきありがとうございます。お忙しいところ恐縮です。

SUBARU広報:フェルさんスミマセン。短い時間で申しわけないのですが、3時を目処にお願いします。ホント、ウチの日月もスケジュールがビッシリなので……。

F:了解です。それでは早速。今回一番お話を伺いたいのは、「なぜSUBARUはアメリカで愛されるのか」ということです。SUBARUはアメリカでも特に雪が降る「スノーベルト」と呼ばれる地帯での人気が高い。しかも医者や弁護士など、インテリジェンスが高く所得も高い人たちに選ばれている、と聞いています。

お話を伺ったSUBARUの日月専務(左)。新型フォレスターのアンヴェール会場にて

日月専務(以下、日):そうですね。そういう傾向は確かにあります。

F:ある自動車会社の偉い方は、いまのSUBARUの状況をして、「正直、涙が出るほど羨ましい」とまでおっしゃいました。そして「SUBARUさんに会うのなら、その秘訣を聞いてきてよ」とも言われました(笑)。

:それは、◯◯さんですか?

F:ずばり。その通りです(笑)。

:やはりね(笑)。でも別に秘訣というものはなくて、企業秘密でも何でもないので、全て普通にお話できますよ。

F:ドカンとアメリカで数字が伸びたのは、やはり「LOVEキャンペーン」以降のことですか?


 SUBARUはここ9年間で、アメリカでの販売台数を3倍以上に拡張させた。その結果が現在、60万台超という数字だ。今やSUBARUは、アメリカで8位(※)の自動車ブランドなのである。そしてその「大躍進」の原動力のひとつが、LOVEキャンペーンと言われている(※2017年、米調査会社オートデータ調べ)。

:そうですね。2008年から始めたLOVEキャンペーン。ここから数字が飛躍的に良くなりました。ですがその前からベースになる客層はありました。2006年に「LOVE」ではなく、「It's What Makes a Subaru a Subaru」というものを言い始めています。「a Subaru」ですから1台のSUBARU車をSUBARU車たらしめているものはこれです、というタグラインといいますか、コマーシャルのフレーズで使いました。

F:SUBARU車をSUBARU車たらしめていること。つまりそれは四駆であるとか、水平対向エンジンである、ということですね。

:やはりフェルさんもそう思いますか。我々も、やっぱり買っているお客様はAWDとか、そういう「機能の部分」でSUBARUを選んでくださっているんじゃないかと考えていた。ですが2007年にあらためてお客様の調査をしたら、「別に理由はないけどSUBARUを愛しているんだ、アイ・ラブ・SUBARUだ」と言われたんですよ。「アイ・ラブ・マイ・SUBARU」と。

アンヴェールの会場は大変な混雑で、なかなかクルマに近寄れない。

F:へえ? AWDとか水平対向とかではなく。

:ではなく。ほかにない機能が付いているからSUBARUに乗ってくださっているのではなく、マイ・SUBARU、俺のSUBARU車が好きなんだと。クルマというのはトータルパッケージなので、SUBARUのクルマが自分に合っていて、ともかく好きなんだと。だからこのクルマに乗っているんだという言い方をされて。

F:うーん。なんだか漠然としていますね。