みなさまごきげんよう。
フェルディナント・ヤマグチでございます。
今週もみなさまの大好きなヨタ話から参りましょう。
週末は残り少ない残雪を求めて山形県は月山に行って参りました。
ええ、ハワイの次はスキーです。ブラブラ遊び回りやがってこの野郎とお怒りの貴兄。大変申し訳ございません。心よりお悔やみ…いえお詫び申し上げます。
毎日本当に楽しいです。
姥ヶ岳の頂上付近も、度重なる降雨に洗われてご覧のとおり雪の「核」が露出してしまい黒く変色しています。
今シーズンはどこのゲレンデも絶望的に積雪量が少なくて、一ヶ月ほど前倒ししてクローズしてしまったスキー場がたくさんあります。月山はまだ雪が残っていますが、それでも積雪量は例年の半分程度。お社のある頂も、完全に下の岩が出ていました。
こちらは駐車場からリフト乗り場まで無料で板を運んでくれる雪上車。いいサービスです。
この時期に滑れるのは、ここ月山のほか、八甲田山か大雪山系くらいしかありません。当然雪を求めてたくさんの人が集中します。雪上車は客の板を運ぶために何往復もするのですが、それでも9時前後の便はこのように板が満載になります。
バケツリレー方式に板を渡していきます。来期モデルのデモ板が紛れていたり、古いロシニョールのVAS板が紛れていたり、この作業も結構楽しいです。
どわー!なんだこの行列は!…..と、自分もその行列を構成する一員な訳ですが……。
若い方には俄に信じられないような光景でしょうが、私が学生のころのスキー場って、どこもこうだったんです。週末はリフト1時間待ちなんて当たり前でした。今は5分待たせたらブーイングが出ますからね。
と、話は東京に飛びまして、こちらは古くから通っている歌舞伎町の名店「味楽亭」。先に出場した廿日市トライアスロンの祝勝会であります。
実はこの大会で「負けたほうが焼肉を奢る」という、賭けをしていたのですが、私が39秒の僅差で逃げ切ったのでした。横で高らかにピースサインを掲げるお嬢さんは当日応援に来てくれていた千原暁子さん。どちらが勝つにせよ焼肉が食えるという絶妙のポジションを獲得しておられますが、その辺の仕組みがよく分かりません。
ドクター倉本は間もなく第三子が産まれるので、こんなところで散財している場合ではないと思うのですが、「次は必ず勝つ!」と全く懲りた様子がありません。ほほほ。また焼肉が食えるのかと思うと嬉しくて夜も眠れません。そういえばホノトラでも某自動車評論家の先生と同様の賭けをしておりました。現在海外にご出張中とのこと、帰国後にご連絡をお待ちしております。
それではボチボチ本編へと参りましょう。ホンダS660のユーザー編です。
S660は現在日産48台と超スローな生産体制である。
ディーラーで集計された注文がメーカーに送られるのは三ヶ月に一回のペースで、実にノンビリとした商売である。街で見かける機会は当然少ない筈なのだが、さにあらず。通勤の往復でも、最低一日一回は見かける。拙宅の近所にもオーナーさんは二人おり、イザとなったら日産リーフの時のように突撃訪問をしようと目論んでいた。
そんなとき、目黒通りと交差する環状7号線の側道に位置するコンビニ前で、お買い物中の白いS660のオーナーさんを見つけた。迷わずクルマの後に駐車し、持ち主が出てくるところを待った。
程無くして、コンビニ袋をブラブラさせた青年が現れた。
S660に乗っているとオジサンとの出会いが増える
クルマから降り、S660のドアに手を伸ばした青年にコンチハ、と声をかけた。青年の名前は片山芳雄さん(仮名)。28歳の会社員である。
F:コンニチワ。突然失礼致します。ちょっとおクルマの事でお話をうかがいたくて。私、日経ビジネスオンラインというメディアで自動車の記事を書いているヤマグチと申します。
片山(以下、片):あ……はいコンニチハ。クルマの話ですか。短い時間なら良いですよ。
今まで見かけてきたS660のドライバーは、100%中高年の方だった。こんなに若い方は初めてだ。若い人らしく、リア部分には立派な黒い羽が屹立している。片山さんが意外にアッサリとインタビューを承諾して下さったのには訳がある。このクルマに乗っていると、「やたらと知らないオジサンから声をかけられる」と言うのである。
F:はぁ。知らないオジサンから声を。それはどのような状況で。
片:一番多いのはS660に乗っているオジサンですね。信号でS660同士が偶然隣に並んだりすると、大抵は手を上げて挨拶されたり、直接声を掛けられたりします。天気が良くて気持ちが良いねぇ、という事も有りますし、君、若い人がこのクルマに乗るのはとても良いことだよ。君みたいな若者がもっと増えれば、日本はもっと良くなるんだ、なんて人もいます(笑)。
F:往年のドライバーは、若い方がこうしたスポーツカーに乗っているのが嬉しくて堪らないのでしょうね。それで思わず声をかける。
片:そうなのかも知れません。このクルマね、日本の宝だからうんと大事にしてあげてね、なんていう人が結構多いです。
信号でS660同士が偶然隣に並んだりすると、挨拶されたりすることが多いとのこと(写真は広報車)
ステップワゴン狙いが、ディーラーで一転衝動買い
F:どのような経緯でこのクルマを選ばれたのですか。それまではどんなクルマに乗っておられましたか?
片:今まではクルマナシの生活です。たまに家のクルマに乗ることは有りましたが、父親がゴルフに乗って行っちゃうので使えないことが多くて。あ、家のクルマはマークXのシルバーです。普通のオッサンセダンです(笑)。
S660を買った理由ですか。ディープなファンの方には叱られちゃうかも知れませんが、衝動買いです。ディーラーで一目見てコレダと閃いちゃって。
F:ははぁ。衝動買い。ディーラーに行かれたということは、何か他のクルマを探していたということですか。
片:はい。本当はステップワゴンを見に行ったんです。トヨタのノアにするか日産のセレナにするかステップワゴンにするか。まあ何となくホンダのクルマは走りが良いのかな、程度に考えていて。それにほら、ステップワゴンは後ろのドアが便利そうじゃないですか、横に開いて。
F:わくわくゲート、でしたっけ?(笑)。
片:そうそう、それです(笑)。あれはなんか便利そうでしょ。
ステップワゴンを見に行った片山さんは、たまたま停めてあった試乗車のS660に一目惚れをしてしまった。それまでは一切検討対象に入っていなかったのだと言う。
「なにコレ、カッコいい」vs「なにコレ、小っちゃ」
F:しかしまた随分と違うタイプのクルマを選ばれましたね。7人乗りのワンボックスと軽のスポーツカー。180度逆の立場に在るクルマです。
片:そうなんです。まったく逆なんですよね。つまり、それほど強い思い入れが有ってクルマを見に行った訳では無いということです。まあ友達も乗せられるし、荷物もたくさん入るし、そこそこ安いし、便利かな~的な。で、見に行ったディーラーの店頭にこれが停めてあって、もうビビビと(笑)
F:松田聖子の結婚みたいですね。ショールームでビビビと一目惚れ。
片:いや、ショールームではなく店の入口です。店頭に試乗車が停めてあったんです。うわー、なにコレ、カッコいいと。で、早速彼女と一緒に試乗させてもらって。
F:彼女と見に行かれたのですか。彼女の感想はどうでしたか。
片:なにコレ、小っちゃ、と(笑)
F:片山さんが「なにコレ、カッコいい」で、彼女さんが「なにコレ、小っちゃ」だったんだ(笑)
片:乗る時も文句ブーブーでしたね。狭いの低いの苦しいのと、あなたステップワゴン見るんじゃなかったの!と(笑)。多分ですけど、彼女とは結婚しそうな感じです。
でも結婚して子供とか出来ちゃたら、当分はこんなクルマに乗れないじゃないですか。現実を考えたら、それこそステップワゴンとかになるじゃないですか。だったら今買っちゃおうよと。当分乗れないよ、こんなクルマと。
F:なるほど。それは確かにそうですよね。まさか若いお二人がクルマの二台持ちも無いでしょうし。
片:そうなんです。それに当面はイザとなれば家のクルマを借りれば良いんだし。そう言ったら彼女もアッサリ納得してくれました。
片山さんは、このコンビニからほど近い場所にご両親と同居されている。敷地内にはクルマを置くスペースも有るという。都内在住としては非常に恵まれた環境にある。
「…ということは、買う方は50万の儲けだわ」
F:で、一目惚れですぐに注文してしまった。結局ステップワゴンには試乗もされなかったのですか。
片:はい。一応予約をして行ったのですが、結局試乗もしなかったですね。S660に乗った後だと、なんかモサッと見えてしまって。ああ、もうこっちはいいですわと(笑)
そうそう。彼女と試乗させてもらったのは特別だったそうです。本来はお店の人が隣に乗らなきゃいけないのだそうです。S660はふだん試乗の予約もパンパンに入っているし、お客さん、今日はたまた空いているんで、ラッキーですよと。
F:なるほど。
片:その営業の人は結構正直な人で、これ売ってもホンダは儲からないんですよねー。なんでも1台売る毎にホンダ本体は50万くらい損するらしいですよ、と言っていました。その話は本当ですかね。
F:どうなんでしょう。プリウスも初代が出た頃は1台売る毎にトヨタは20万円損するなんて噂が実しやかに流れていましたが。
片:そうか。ホンダは50万も損するのか。ということは買う方は50万の儲けだわ、とも思いました(笑)。それもモチベーションになりましたね。
最初、彼女からは「小さい」「狭い」と大不評だったそうで(写真は広報車)
「28歳にして、クルマの運転が楽しいと初めて感じました」
F:ははは。買う側の儲けにはなりませんが、その感覚は分かります。で、実際に乗られてみていかがですか。
片:衝撃を受けました。28歳にして、クルマの運転が楽しいと初めて感じました。自分のお尻を中心にクルッとクルマが曲がっていく感覚は、今までに経験したことの無いものです。
あとはあれ、MT免許を取っておくべきだったと後悔しました。自分、オートマ免許なんですよ。営業の人にもそれは言われました。あーお客さんAT限定ですか、このクルマは本当はMTじゃなきゃ意味ないんですよねっ、って。エンジンの出力もMTの方が高いんですよねと言われました。
F:本当に正直な営業の人だ……(笑)
片:追加の講習でMT免許も取れるらしいのですが、今から取り直すのは面倒だし、まあ実際にATの方が絶対に運転はラクだし、こっちで良いかなと。自分は特に走り屋という訳でもないので。
F:それじゃ電子制御の介入も余り気になさらない。過剰に干渉し過ぎだ、という声も有るのですが。
片:横滑り防止装置のことですか。そんなの全く気になりませんね。普通の人間はそうですよ。普通に気持ちよく走れたらそれで十分です。
「日本酒を入れておいたら、温燗くらいにはなります」
F:S660に乗って、何か人生が大きく変わったということは有りますか。
片:それは特にありませんね(笑)。たださっきも言いましたが、S660に乗っている方から本当によく声を掛けられます。あと、駐車していると「これどうですか?」と聞かれる事もよくあります。
F:その時は何とお答えするのですか?
片:メチャ楽しいですよと、でも荷物はまったく入りませんよと(笑)
F:やはり荷物は問題ですか。
片:大問題です。いくらなんでも酷すぎます。フロントのボンネットの中に幌をしまう箱が有って、屋根を閉めている時にはあそこに物を入れられるのですが、それも長方形の変な格好をしているので、カバン等は一切入らない。しかも温度がメチャ上がります。日本酒を入れておいたら、熱燗とは言いませんが、温燗くらいにはなります(笑)
F:ははは。フロントの箱は保温箱。
片:そうそう。冬なんか弁当とお茶を入れて出かけたら良いですよ、目的地に着く頃には食べごろの温度になっている(笑)
フロントのボックスは、カバンさえ入らないコンパクトサイズ(写真は広報車)
F:ところでこのウイングは……?
片:ああこれ、良いでしょう。無限のリアウイングです。オプションのアクティブスポイラーも考えたのですが、あれより断然こっちのほうがカッコいい。しかも安い。いまいろいろなメーカーからたくさんのパーツが出ていますが、これが一番カッコ良いと思いますね。
オーナーズクラブ? 正直ウザいです。
F:走り屋ではないけれど、この辺りはこだわりが有るのですね。
片:こだわりというほどのものでは有りませんが、ノーマルのままだとなんかヌメッとしていて味気がないので。実はこれも声をかけてきたオジサンに教わりました。君、アフターパーツを付けるなら、断然無限だよと。
F:なるほど。先達のご意見を尊重されたと。
片:ただ、何かの会に入れと言われるのには辟易とします。クルマを停めていて帰ってくると、ワイパーに会員になりませんか的な紙が挟まっていることが有るのですが、正直ウザいです。
ツルんで走ったりするんですかね。せっかく自由になれるクルマを買ったのに、群れても意味が無いでしょう。意味が無いって言うか、矛盾ですよ。
F:うーん、その辺は価値観の問題でしょうね。
片:何かバカっぽくないですか、ああいうの。
F:そ、それは分かりませんけど。
それまで穏やかに語っていた片山さんだが、オーナーズクラブの話になると、急に言葉が荒くなってきた。発言内容に少々過激な部分も有るので、今回は仮名&写真ナシでお届けした。
片:荷物の問題とか、音の問題とか、幌から風が入ってくることとか、文句をつけ始めたらキリが有りませんが、このクルマにはそれらを100倍くらい上回る魅力が有ります。これを買って本当に良かったと思っています。
もっと大きなエンジン?必要ないでしょう。これで十分ですよ。どこで飛ばすんですかそんな。それじゃそろそろ良いですか。これから彼女を迎えに行かなきゃならないので。
そう言うと片山さんはペコリと頭を下げてクルマに乗り込み走って行った。
ステップワゴンを見に行き、まったく異なるタイプのS660に一目惚れしたことも驚きだが、「群れたくない」というオーナーズクラブ全面否定の感覚も新鮮だった。
しかしS660を衝動買いするとは……クルマの選び方も様々だ。
来週は「特別なクルマ作り」の現場を取材してきたので、それをお届けする。
S660どころでは無い、桁外れに採算度外視のあのクルマ。片山さん流に言えば、恐らくは日本一のお買い得グルマである。お楽しみに!!
i-DM先生は厳しいっす
こんにちは。編集担当のY田です。
以前にもちょっとゲロりましたが、私、実はマツダ・デミオのオーナーです。で、購入から約1年経ったのですが、ちょっと悩みがございまして…。
「i-DM先生」が冷たいのです。とっても(以下、マツダオーナーでないと通じない話ですので、興味のない方はスルーでお願いします)。
写真をご覧いただければわかるように、いまだ「3rd STAGE」止まりで、昇格の気配がありません。前車で楽しんでいたような急発進・急ハンドルは避けるようにしているのですが、クセが抜けきれないのか、いまだによく、「急加速は燃費に悪いだろうが、オラ!(と聞こえる)」と注意されます。仕事同様につらいです。
で、一番悩んでいるのが、坂道発進の際の白ランプです。上り坂でも下り坂でも、ブレーキから足を離してアクセルに足を置いた途端に白ランプが点灯し、減点を食らいます。全然踏み込んでいないのに…。家の近所を近距離走る際などは、これ一発で☆が遠のきます。
先生、どうすればいいのですか?
今日は『仕事がうまくいく7つの鉄則 マツダのクルマはなぜ売れる?』を再度熟読し、白ランプ撲滅のヒントを探そうかと思っています。
この記事はシリーズ「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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