ともかく「この場で決めろ」のプレッシャーが強い。最終的に、「他の店の値段が出たら必ず教える」ことを条件に解放していただいた。商談の印象は100点満点で60点というところだろうか。

 帰宅してGoogleで検索し、上位に出てきた「7社同時見積もり」のサイトに登録をする。A社の副店長氏が言ったとおり、翌日から大変な電話攻勢……は、しかし始まらなかった。

 7社の内、電話をかけてきた業者は4社だけで、そのうちの一社は既に見積もりの済んだ先のA社である。内部の連携はあまりよろしくないようだ。

 一番に連絡して来たのは最近とみに元気なB社で、2番目がA社の別部門、次いでC社、D社である。後半の2社は初めて聞く社名である。各社とも直接ケータイに連絡をしてきて、「他の会社と同じ時間に呼ぶのは止めてください」というのも共通している。

 どこも「すぐに売る予定」というキーワードに敏感に反応し、一概に「ぜひこのクルマを買わせていただきたい」と言う。

 ここで結論を先に言ってしまうと、最終的に決めたのは、失礼ながらあまり聞いたことがない社名のC社である。他の3社は「他社はいくらと言っていますか?」ということをシツコク聞いてきた。ところがC社だけは、「それはマナー違反なので伺いません。当社としてベストの価格を提示させていただきます。その代わり、ウチの値段も他社に伝えないでください」と言ってきた。

 その紳士的な対応に惚れた……わけでもなく、C社に決めた理由は単純に買取価格が一番高かったからだ。

B社脱落、D社は連絡をよこさずブッチ

 商談の順番は、一番初めにA社の実店舗、次いでC社、B社、D社の順である。A社の提示価格が700万、C社が買取保証価格728万、委託販売価格が745万、B社とD社は最初からギブアップであった。

 C社は、買い取ったクルマを自分の店に一定期間展示して販売を試みる仕組みになっている。3週間以内にそこで売れれば、私には745万円が振り込まれる。3週間経っても売れなければ、彼らはオークションに流し、私には保証価格である728万円が振り込まれるという仕組みである。「ウチの出した価格は他に言わないでください」と言われていたのだが、卑怯者の私は高く売りたい一心で他の業者にもC社の価格を躊躇なく伝えた。

 価格を聞いたB社は、「正直、ウチは輸入車が今ひとつ弱いんですよ。今後の課題なんですが……。いずれにしてもその価格にはかないません」、と言ってその場でギブアップした。商談は成立しなかったが、やりとりの印象は非常に良かった。

 最後に千葉から来たというD社。時間をかけて査定をしていき、「明日中に価格をご報告します」と言ったきり、音沙汰がない。電話もなければメールも来ない。ギブアップするのは勝手だが、連絡くらいはよこせないのか。なるほどA社の副店長が言うとおり、「いい加減な業者」は実存する。

 C社から聞いた話では、私が一括見積もりサイトに登録した情報は、一件当たり3500円で買取業者に販売される「メシの種」なのだそうだ。業者はさらに交通費をかけて客の自宅や勤務先にやってくる。「無料査定」の段階で、既に結構なコストが発生しているのだ。

 だから彼らは必死である。必死になり過ぎて、他の会社の悪口を言ったり、これ以上の価格は絶対に出ない、等という根拠のないこともつい口走ってしまうのだろう。
 売る側としては、業者の勢いに押されないよう、落ちついて交渉する冷静さが必要だ。

 今回買い取っていただいたC社の担当者は、トヨタのディーラーで定年まで勤め上げた“自動車販売のプロ”だった。「売る側」から「買う側」に180度方向転換を図った、ということになる。

 「クルマを売るのと買うのと、どちらが楽しいですか」と尋ねたら、「実はディーラーの営業担当って、クルマの仕入れ価格を知らされていないんですよ。だから日々の仕事で、自分がどれほど会社に貢献しているかが全く見えないんです。一方で買取業者は、仕入れ値も売値もすべて見えますから、断然こちらの方が楽しくやり甲斐がありますね」とのことだった。

 割り込んですみません、担当Yです。
 すべてが終わった後、フェルさんが電話してきて、こんな話をしました。

 「で、フェルさんの結論としてすべてはカネだ、ってことですか」
 「いや、原稿ではカネカネ書いたし、実際に金額がC社に決めた一番の理由だけどさ、担当者の方の人柄が良かったことも大きかったのは間違いないんだよね」
 「へえ、人柄。紳士的、って書いていたところですか」
 「それもあるけれど、うわべの態度が丁寧だ、ってことじゃなくて、委託と買取の値段を明確に出してくれたり、ロジックをちゃんと説明してくれたのが嬉しかった。紳士的と言うより、公正、フェアであろうとする態度、ってことかな。つまりは、自分の仕事が好きだし、プライドを持ってやっていらっしゃるんだろうと思えた」
 「ああ、なんかわかります。仕事でもそういう人に会えると嬉しいですよね」
 「これからクルマを売る友達には、この方を紹介しよう、と思ったくらいだよ。Yさん、あの太古ベンツそろそろ売らないの。紹介してあげようか」

 「売る気はありません、結構です!」
 と、思わずガチャンと電話を切ってしまいました……。

C社に引き渡す直前の写真です。なんか車がさびしそう……。

 今回は中古車買い取りというセンシティブな話題に素人目線で切り込んだので、カーセンサーの出身で、中古車のプロである高橋満氏にキッチリとフォローしていただこう。

 それではマンちゃん、あとよろしくー!