編注:以下のフェルさんの原稿は全部社名入りで書かれていましたが、事実にせよあくまでも一例であること、ご本人が自覚している以上に当コラムは(よくも悪くも)影響力があるらしいことに鑑み、社名はすべて伏せさせていただきます。ご了承ください。コメント欄での当てっこもお控えいただければ幸いです。小心者ですみません。(実はぜんぜんマイトじゃないY)
売る売ると言いながらも、なかなか行動に移らなかったのは、次のクルマが決まらなかったことと、業者さんにクルマを見てもらう時間の取れる週末に東京不在が続いていたからだ。次期フェル号が決定して納車時期が決まっても、「売ろうかな、面倒だな、2台持ちもありかな」などと呑気に考えていた。

そんなある日、イキナリ転機が訪れた。
なんと、走り慣れたいつもの通勤路を走行中、電信柱にミラーをヒットしてしまったのである。コードで繋がったミラーがだらしなくケースから垂れ下がり、フェンダーの先端も軽く擦っている。今までバンパーに小傷すら付けたことのないピカピカのクルマの変わり果てた姿を見て、イッキに心が「売りモード」に転換してしまった、というわけだ。
ヒットの翌日、早速会社の帰り道に幹線道路沿いの買取専門店に飛び込んだ。
気が動転していたこともあるのだろう。そこそこの値段が付いたら、1軒目で売ってしまおうと考えていた。飛び込んだのは最大手の一角、A社の大型店舗である。予約も入れず、ミラーが壊れたままのクルマで乗り付けた。
さすがは有名どころ。店内から店員さんが駆け出てきて、最敬礼で迎えてくれる。クルマを降りるとドーゾドーゾと店内に通されて、対面式のデスクに案内される。すかさずコーヒーが運ばれてくる。名刺をいただいて早速商談開始である。ご担当いただくのは、この店の副店長である。
アタマに血が上って駆け込んだA社
F:クルマを売ろうかと考えていた矢先に、ミラーを擦ってしまいました。これでもう私のクルマは「事故車」という扱いになってしまうのでしょうか。
副店長:まだおクルマを拝見していないので何とも言えませんが、その程度は事故車とは言いません。大きくブツけていなければ大丈夫です。ただし、Gクラスのミラーは20万くらいしますから、その分は通常の買取価格より低くなってしまうと思います。
そう言いながら、副店長さんは顧客シートを差し出した。その紙に、住所氏名電話番号等の個人情報を書き込み、「いつ売るか」「次のクルマは決まっているか」を記入する。次に購入するクルマは既に決まっている。納車は1週間後の予定である。同じタイミングでクルマも手放す。それらをすべて有り体に記入した。
副:次に買うクルマは決めておられるのですね。他のお店で買取価格は聞かれましたか?
F:いえ、ここが初めてです。
副店長さんはそうですかと言うと、往事のカーセンサーくらいの厚さの価格表を取り出した。
副:これが中古車買取価格の基準となる本です。クルマがどれくらいの価格で取引されているか、平均値が載っています。お客さまのおクルマは走行距離が少ないですし、とてもキレイに乗っておられるので、本当であればここに出ているよりもいい値段が付く筈なのですが、何しろミラーが壊れていますので……。
F:それよりも安くなってしまいますか。
副:基本的には安くなります。査定はすべて本部がおこなうので、何とも言えませんが。我々はチェック項目を埋めて、写真と一緒に本部に送って、本部が決めた値段をお伝えするだけなので。
鉄板のはずのGクラスが…!?
チェーン展開している買取店の多くは、このようにデータを本部に送って、専門の査定員が価格を決めるのだそうだ。副店長さんはパラパラと本をめくり、メルセデス・ベンツのページ探している。Gのページに行き着き、2016年式G350dの欄を指で追い始めた。
副:えーと……650万ですね。
650万! 車両価格1100万円のクルマが、僅か2年と少しでここまで下がってしまうものなのか。顔面からサッと血の気が引いていくのが自分でも分かる。
F:あ……あの……そんなに安くなってしまうものなのですか? Gクラスは鉄板車種で、ほとんど値が下がらないと聞いていたのですが……。
副:これはあくまでも基準値です。おクルマの状態により、これよりも下がることも、もちろん上がることもあります。おっしゃるとおり今までGクラスは鉄板だったのですが、右ハンのディーゼルが出て台数が増えてからイッキに値段が下がってしまいました。やはり台数が増えて一般的になると、それにつれて値段は下がってしまうものなのですね。
F:安い……。ショックです。もっと高く売れるものかと高を括っていました。
副:まあ、本部からの連絡を待ちましょう。
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