みなさまごきげんよう。
フェルディナント・ヤマグチでございます。
「経済界の文春砲」としてその名も高い日経ビジネスが、久々に特大スクープをカマして下さいました。「日本郵政、巨額損失処理へ」の記事であります。オンラインではサラッと表面しかなぜておりませんので、詳しくは本誌の方をお読み頂くとして、ともかくこれ本当に凄いスクープです。富士フイルムが直後に不可解な決算発表の延期を発表したのも、この記事を受けてのことに違いありません。海外で大きな投資をされている国際企業のみなさんは、上を下への大騒ぎでござんすよマジで。
日本郵政と言えば西室泰三さん。西室さんは東芝の元社長。東京証券取引所の会長もやっておられた”名経営者”です。粉飾決算を起こした東芝のトップ経験者が、後に東証やら日本郵政・ゆうちょ銀行のアタマを張ってしまうのですから、世の中メチャクチャです。いやー、どんな展開になるのでしょうね。杉原記者の続報を待ちましょう。マジ楽しみです。
で、激動の経済界を傍目に、週末はトライアスロンの大会で石垣島へ行って参りました。
こんなことをやっているからいつまだたっても速くならないのです。後の観客にも笑われております。
この大会に出るのは、不幸な死亡事故が起きた2013年以来4年ぶりのことです。事故が起きたスイム会場は橋の向こうの砂浜に移され、バイクコースは従来と逆回りに、ランのコースも街中を2周回と大きく変更されておりました。
終わってみれば2時間42分のクソタイム。今度こそ本当に練習します。
せっかく石垣島まで来たのですから、大会後は竹富島まで遊びに行ってきました。しかしまあインバウンド客の何と多いことよ。牛車に乗っているのなんてほとんどが外人さんです。
大会後は高速船でサッと渡れる竹富島へ。インバウンド客多し。
で、夜は石垣に戻って素敵なテラスレストランの庭でグランピングと洒落込みました。いや、ここは本当に素晴らしかったな。「PUFFPUFF」というお店です。石垣島へ行かれた際は是非!
今回一緒にレースに参加した混成チームのみなさんと。たくさん飲んでたくさん食べました。
そうそう。レストランの屋上で別グループがパーティーをやっていたので乱入したのですが、そこにはマガジンハウスの池田さんや、ペンギン食堂の辺銀社長がいらっしゃいました。ゴーゴー宮森氏はいつものゴーゴーシャツで(笑)。
庭で飲んで屋上で飲んで、今日は本当によく飲みました。もう当分お酒は見たくありません。ういー。
さてさて、それではボチボチ本編へと参りましょう。
今週からお届けするのは、レクサスの稼ぎ頭、RXであります。
レクサスが、さりげで絶好調である。
ドイツのプレミアム御三家に真っ向勝負を挑んだ1300万円超の高額クーペであるLCは、月間目標販売台数の実に36倍の1800台を受注した。納車は最短でも半年待ちの大人気である。開幕したばかりのスーパーGTでは上位を独占し、ミラノのデザインウィークでは、展示したインスタレーションが話題を攫ったという。もちろん国内販売台数も順調に推移している。
売れるのは北米ばかりで、日本では大コケだった……なる認識は今や過去の話である。日本にもいよいよレクサスの時代がやってきた……のかどうかは分からない。が、ここ最近、レクサスに勢いがついてきたことだけは間違いない。
今回試乗したのは、当代取って4代目となるレクサスRXである。RXは、レクサスブランドの稼ぎ頭。北米におけるRXの販売台数は、実に全レクサス車の3割を超えている。この3月から専売店を構えて本格参入したインド市場でも、“厳選された”3車種であるRX、ES、LXの内の1車種に入っている。
「世界で最も売れているレクサス」であるRXとは、果たしてどのようなクルマなのか。じっくりと試乗してきた。
SUVの乗り味を確かめるには、荷物を満載してスキーに出かけるのが一番である。いささか季節外れではあるが、3月にドカドカ降った大雪のお陰で、スキー場には雪が溢れている。しかもこの時期、往復の道はほとんどドライの状態である。
スキーに出かける前の日に、いつもの駅前でマンちゃんこと高橋満氏からクルマを受け取った。
満:それじゃフェルさん、クルマをお預けします。くれぐれも安全運転でお願いしますよ。スキーに行くんですって?まさか今の時期に雪は降らないと思いますが、タイヤはノーマルですからね。気を付けて運転してください。
こうして高橋氏とやりとりをするのは実に10年ぶりのことだ。過日、私は中古車雑誌のカーセンサーで、なぜか新車の試乗記を書いていた。高橋氏は、当時の私の担当編集者だったのだ。
F:それなら心配要りません。フリーサイズのプラスチックチェーンを用意してあるんです。どんな大きさのタイヤにも取り付けられる、タイラップ型のチェーンです。
3月末に実施された今回の試乗。万一のことも有るのでスタッドレスタイヤが装着された車両を所望したのだが、あいにくレクサスからの回答は「倉庫の奥にしまってしまった」とつれないもので、やむなくノーマルタイヤ装着車の試乗とあいなったのである。なに、イザとなったら緊急用のチェーンも有る。安心して出かけよう。
これが用意した簡易チェーン。Amazonで2000円程度で売っている。
RXの荷室は広大である。板をルーフに載せなくても、後部座席を倒せば楽勝で積むことが出来る。貴重な試乗車を傷付けては大変なので、養生シートで荷室を保護して、4人分の板と荷物を積み込んだ。目指すは苗場スキー場である。
大きなレクサスマークが印象的なステアリングホイール。
大人4人にスキー用具と荷物を満載してのドライブ。金曜日の夜。関越道はガラガラに空いている。スキーに行くクルマはいないのだろうか。日本で発売される現行RXには、二種類のパワーユニットが用意されている。ひとつは2L直列4気筒の直噴ターボ。もう一つは3.5L V型6気筒エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドである。
今回試乗したのは、ハイブリッドのモデルであるRX450hである。この450hのパワーユニットは、3.5L V型6気筒のエンジンで型番は2GR-FXS型である。2GR-FXS型は直噴と吸気ポート噴射を併用する燃料噴射システムであるD-4Sを搭載しており、エンジン単体での出力は前モデルの249馬力から262馬力に向上している。エンジンをサポートするモーターの出力は前モデルと同等である。そうそう。肝心の燃費は、JC08モードでリッター16.4キロから18.8キロへと15%ほど向上している。
こちらが直噴と吸気ポート噴射を併用するシステムの「D-4S」を装着したV型6気筒の2GR-FXS型エンジンである。である、と言ったところでカバーに覆われて何も見えませんが…..。
走った印象は、ともかく“静か”ということだ。優雅に、上品に、和服を着た女性が静々と歩んでいくようなイメージだ。アクセルを床までガンと踏みつけるとイッキに豹変し……とは行かず、残念ながら。懸命にムチを入れても加速はモッサリとしたものだ。前モデルより格段にパワーアップしているはずなのだが、加速においてはその力を十分に活かしきれていない印象だ。
また、急加速時のエンジン音がひどい。せっかくの優雅な佇まいが台無しになる、「ギュアー」っと唸るCVT特有の安っぽい音が車内に侵入して来て、せっかくの高級気分が台無しになってしまう。この辺は要改善だ。このクルマに乗る人は、ムチャな加速などしないという前提なのだろうか。いやいやレクサスに乗る人は結構トバしますものね。
とはいえ基本的に高速走行は快適だ。荷物満載、人員満載であるにも係わらず、実に力強くトルクフルに走ってくれる。遮音性も良い。(急加速でもしない限りは)余計なノイズは一切侵入して来ず、不快なビビリ音やインテリア類のキシミ音も感じられない。“高級”“上質””優雅”、ということばが似合う、しっかりとしたクルマに仕上がっている。
ガラガラに空いた関越道を月夜野インターで降りて、三国峠を目指して走る。ワインディングのRが徐々に厳しくなってくる。2トン超の車重に、大人四人と満載のスキー用具に大きな荷物。恐らく積載量は400キロを超えていよう。それでもRXは実に軽やかにコーナーをひらりひらりとクリアしていく。実に気持ちがいい。回頭性が非常に良いのだ。先代より確実に大きくなっているのに、クルマの四隅がしっかり感じられるスポーティーな仕上がりだ。これは気持ちが良い。繰り返すが人も荷物も満載なのだ、これが二人きりのドライブデートだったら、また味わいは大きく変わって来るのだろう。
2トン超える車重に大きなボディ、それなのにヒラリヒラリとコーナーを抜けていくスポーティーな足回りと堅牢なボディ。
関越でパラパラと降っていた雪は、高度を上げるに従い、“本降り”になってきた。エンジンを吹かして走る上りの車線は、クルマの温度が高いため未だアスファルトが露出しているが、下りの車線は完全に着雪している。このままノーマルで走り続けて良いものだろうか。試しに少し強めにブレーキを踏んでみたのだが、RXは何の違和感もなく普通にピタリと停止する。
峠を超えるトンネル手前の最後のコンビニエンスストアに寄る。気の早いドライバーはここでチェーンを装着している。ここで履いていくんですか?と尋ねると、「ツレのクルマが先を走っているんだ。峠はマッシロって話だよ」と教えてくれた。そして「チェーンがあるなら、兄さんもここで履いていった方が良いよ。えらく立派なクルマだけど、滑り出したら四駆もクソも無いんだからさ」と忠告してくれた。
仰る通り、一度ツルッと行ってしまえば、四駆もクソも無いのである。しかし携帯しているのは得体の知れない中国製の安物プラスチックチェーンだ。柔らかい雪の上ならいざ知らず、トンネル内の長い舗装路を無事に走り抜けることが出来るのだろうか。何しろこのチェーンは使い捨てで、一旦装着してしまったら、後は切断して取り外すしか道が無いのである。ここではチェーンを履かず、トンネルを超えてから考えることにした。
国境の長いトンネルを抜けると雪国であつた。川端康成先生の「雪国」ではないが、三国トンネルを抜けると、そこはバリバリの雪景色なのであった。ここから長い下りが続く。クルマを寄せてチェーンを履ける場所はここしかない。左側のチェーン脱着所にクルマを寄せて、例の怪しいチェーンを装着する。「片輪5分で装着OK!」の看板は偽りアリも良い所で、左右でタップリ30分はかかってしまった。
トンネルを抜けたら、イキナリこれですものね。今年の雪は凄いです。頼りないオレンジのチェーンが見えますでしょうか。
しかし、この見てくれは頼りないチェーンが非常に有効で、「ゴッゴッゴッ」と力強い音とともに、ガッチリと雪を噛んで走ってくれる。これで2,000円は激安である。長い雪道を難なく下り切り、我々は無事に宿泊先に到着したのである。
翌日は早めにスキーを切り上げて、一人宿を抜け出してスノードライブを堪能した。幹線道路の雪は一日で溶けてしまうので、脇道に残された雪を求めての変則ドライブである。適切にトルク配分された4つのタイヤが、確実に雪を捉えて走る感覚が実に心地良い。
RXは雪道にも強い。しかも燃費がソコソコに良い。長距離ドライブの多いスキーヤーには最適のクルマである。しっかりしたボディと、賢く躾けられた足回り。そしてここへ来て漸く国内でも開花してきた感のあるレクサスのブランドイメージ。欧州車を乗り継いできた人にも十分にアリだと思う。
それでは最後にレクサスRXの○と☓を。
レクサスRXのここがイイ!(・∀・)
1:驚くほどの静寂性:高剛性ボディとハイブリッドが織りなす魅惑の静寂性。「LSがSUVになった」と言ったら言い過ぎだろうか。つまりはそれくらい静々と走るのだ。
2:実はとってもスポーティー:ひとたび峠に入れば、ヒラヒラと気持ちよく走るスポーティーさも併せ持っている。重くて大きいクルマであるのに、飛ばすと一回り小さいクルマに感じられる。
3:疲れないシート:機能的なコックピットと相俟って、長距離でも疲れない。運転するとアイポイントが高く、しかもフラフラしないクルマはこんなにラクなのか、と実感すると思う。
レクサスRXの、ここはちょっとどうもなぁ…(´・ω・`)
1:残念なCVT:ともかく急加速時の音がひどく安っぽい。軽自動車がそのまま大きくなった感じ。ここは何とかして欲しい。200tの方はATなので、この不快感は無いと思う。
2:事務機器のような乗り心地:上の文と矛盾するようですが、どちらも正直な意見です。静かで速くて峠に行ってもそれなりに楽しめるのだけれども、乗った後の「余韻」という物が感じられない。何というか、優れた事務機器のような乗り心地。とても優れたクルマなんですけどね。モンブランとパイロットの差とでも言いましょうか。
ということで次週はRXの開発者インタビューをお送りいたします。お楽しみに!
はじめまして、よろしくお願いします
読者のみなさま、はじめまして。これまで本連載を担当してきたY田を引き継いで、新編集担当となりましたY崎です。フェルさんには、前回の記事で「あまりの仕打ちに茫然自失のY崎氏」と書かれ、前任のY田からも「金曜日の夜は眠れなくなる」などと脅され、震えながら、この文章を書いています。
フェルさんの記事はこれまでは一読者として楽しく拝読してきました。ですが、編集担当となる話は別です。これまで私が記者やデスクとして主に担当してきたのは経済誌や新聞などお堅い紙媒体の記事ばかり。
勉強がてら、本コラムの過去記事を見直したところ、見出しに出てくるのは「謝罪後は“切腹交渉”」「デストロイヤー登場」「ボコられたのは実は私です」「いいからお前らやっちまえ!」といった言葉ばかり。普通の人ならびびりますよね。
そうか、フェルさんの編集担当は「走りながら」ではなく、「震えながら」考えるのか。そう思われた読者の方もいらっしゃるかもしませんが、本コラムは日経ビジネスオンラインの看板ともいえる栄えある連載。記事が面白いなら編集担当が楽しくないわけがありません。覚悟を決めて任務を全うしようと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
さて新担当として初めてのフェルさんの記事で取り上げたのは「レクサスRX」。トヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」の看板車種の大型SUV(スポーツ多目的車)です。RXの初期モデルは日本では「ハリアー」として販売されてヒットしました。
北米でRXの人気が爆発的に盛り上がった2000年代前半、私は米国に駐在していました。現地の高給取りのビジネスパーソンが自慢げに乗り回していたクルマというイメージが今でも鮮明に残っています。どこの大都市に行っても本当によく目にしました。
RXはアウトドアではなく街乗りに適した洒落たSUVという新ジャンルを切り開き、欧米メーカーの開発戦略にも多大な影響を与えました。いろいろな意味で歴史に残るクルマだと思います。
そのRXがどのような進化を遂げているのかは個人的にも興味深いものです。初めて同行したフェルさんの開発者インタビューは、ハラハラ、ドキドキ、記者も驚くツッコミ力をいかんなく発揮されて、大変エキサイティングなものになりました。掲載は次回以降になりますが、こちらもお楽しみに。
また今回からはおなじみのADフジノ氏に代わり高橋満氏がADとして参戦しています。読者のみなさまへのごあいさつは次回以降になるかと思いますが、新生チームとなった本連載を引き続き、どうぞよろしくお願いします。
この記事はシリーズ「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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