F:日本で売られているハイラックスは、全てタイの工場で生産されています。造っているのはタイですが、開発は日本でおこなったのですか?

:基本は日本です。

F:日本で開発してタイで造る。その技術的なやりとりはどのようにするのですか。

:まず図面のやりとりという形です。試作金型、本金型、と、金型は日本で起こします。そして「これで完成したな」となったものを、今度は現地の工場側に移していくという作業をおこないます。

F:これはトヨタだけでなく、全ての自動車メーカーで起こっていることだと思うのですが、開発側と生産側の衝突……と言ったら言い過ぎかな。「こんな造形は難しくて量産に向かないよ、あんたら現場を分かってないよ」、というようなやりとりはないのですか。

:ありますね。アルゼンチンからも南アフリカからも工場の代表者がやってきます。

F:みなさん日本人なのですか。

:違います。だから会議では会話がめちゃくちゃになるんです。英語でぐしゃぐしゃになってモメているところに、スペイン語で怒鳴るアルゼンチン人が出て来たり、ネーティブの南アフリカの人間が来たりして(苦笑)。

F:いいですねぇいいですねぇ。そのカオスが堪らないですね。

マイトのY:また変なところで喜ぶ……。

F:工場からの要望は、基本もっと簡単に組み立てられるようにしてよ、ということですよね。

:まぁ基本はそうです。ただそれは設計者も初めから分かっていることなので、どちらかというと、それぞれの国のラインの“事情”みたいなものがあるので、それを調整していく感じですね。「ウチの工場ではこの部品を先に組むからこうしてくれ」とか、「いやウチは違うぞ、こうした方が合理的だ」とか、「ウチの工場設備じゃそのやり方じゃできないよ」とか、みんながギャンギャン主張し合うんです。

F:しかも違う言語で。見てみたいなぁ。これは面白いぞ(笑)。

マイトのY:すみませんねえ、趣味が悪い男でして。

F:最終的に、これがみんなの共通意見、という形ではまとまらないのですか。

:まとまらない部分が少し残るんですね。基本的なラインはみんな同じように造るんですが、それでも世界中「せーの」で同じタイミングで工場を建てたわけではありませんから、それぞれの工場で少しずつ設備が違う。やっぱり最終的にはなるたけ投資額も抑えたい。となると、もともとあった設備をどれだけ上手に使い回すか、という話になるわけで。世界中全ての工場が、全て同じ、最新の設備を備えている……とはいきませんから。

F:世界中全てが最新設備ではない。それはそうですよね。でもトヨタって中央が「こうします」と言ったら、号令一下、世界中の工場がビシッとその通りに動く会社かと思っていました。そういう意味では、少しトヨタらしくないな、と感じました。

:いやそんな、設備も違う世界13カ国の工場全部を、イッキにビシッとなんてムリですよ。世界中の工場を、全てを同じタイミングで最新設備に入れ替える投資なんて絶対にできませんし。いま保有している資産を上手に使って、コアとなる部分は共通にしていく。ここがポイントです。だから組み付けのラインの中の順番も、一部その国のレイアウトに合わせて変更することだってままあるのです。

F:世界中同じ手順でハイラックスを造っているのではない、ということですか。

:ええ、国によって少しずつ変えています。そういう意見を現場から吸い上げて、多少のアレンジを加えながら調整していくんです。設計を抜本的に変えるようなことは僕らもできないので、できないものは「それはできないよ」とハッキリ伝えます。でもちょっと配慮してあげれば何とかなること、向こうがうんとやりやすくなるようなことならば、やっぱり僕らも注意して拾っていくべきだよね、と思っています。

 トヨタは何事も「イッキに」決めて「ビシッと」進めていく会社なのかと思いきや、さにあらず。

 今や常務に出世されたトヨタの雲上人は、「イッキにビシッとなんてムリですよ」と確かにおっしゃった。最近のトヨタは何かが違う。何となくこう、オモロイ会社になってきているのだ。
 オモロイ前田さんのインタビューはさらに次号へ続きます。

 そうそう。広報西川さんのご高配で、連休中にタイの工場でハイラックスの組立工程を見学させていただくことも決まりました。こちらもリポートしますのでお楽しみに!

 それではみなさまごきげんよう。