F:炭鉱の入り口までがハイラックスで、そこで乗り換えて中に入るのはランクル70。なるほどこれは分かりやすい(笑)。

:なんでも炭鉱の中というのが、自動車の使用環境の中で最も過酷な条件らしいんです。足回りが前後ともリーフリジットで、本当にベーシックな構造で、さらにメンテナンスパーツも昔からの物が使えるとなると、やっぱり70じゃないとやれないよね、という世界があるんですね。だからお日様を見ないで生涯を炭鉱の中で終えるというランクルもあるんです。

F:はー。一生炭鉱の中で……。

:そこまで(の耐久性)は要らないけれども、それなりのタフさが欲しいお客さんがハイラックスを買うんですね。どちらかと言うと日常的なオフロードを想定もしたタフな使用シーン。さっき言った鹿撃ちの人(前回参照、こちら)だったり、農家だったり漁業だったり。また森林管理局や林業の方だったり、リファイナリー(製油所)や炭鉱でのお仕事だったり、という。

F:なるほどなるほど。

:だから棲み分けとしては、荒れた路面を走りながら、人を運んだり、荷台に物を積んで運んだりというのがハイラックス。炭鉱の中にまで入って人や物を運ぶのが70。お金持ちの人が砂漠で遊ぶこともできるのが200で、プラドは位置付けとしては乗用車です。

F:ひぇー。プラドは乗用車扱い。あれだってそれなりにオフロードを走れますよね。走ろうと思えば。

:もちろん能力的には非常に高いものを持っています。何しろランドクルーザーのブランドで売っているのですから。いま言った一連の例はイメージとして、位置付けとしての話です。

F:それにしてもランクルの70は、どうして日本でディーゼルを出さなかったのでしょう。

:さっきフェルさんが「日本でこういうクルマは台数が見込めないよね」と言った話に繋がります。日本の排ガス規制にミートできる70のディーゼルが、いまのトヨタにはないんです。とはいえ、日本専用のディーゼルを開発するまでの台数を70では見込めない。小鑓(※)も含め、ディーゼルで出したかった人はトヨタの中にもいっぱいいたと思います。厳しいところです。

(※編注:ランドクルーザーの開発責任者をつとめた「トヨタのトラック野郎」小鑓貞嘉さん。現在はハイラックスの開発責任者)

F:うーむ……。

:これまでは日本の排ガス規制が世界中でもっとも厳しかった。でも、いまはヨーロッパの排気システムを持ってくれば、そのまま日本の規制にミートできるぐらいにヨーロッパの規制が厳しくなったんです。だからこのハイラックスも13年ぶりに日本で出すことができるようになったわけで。



 これは「ハイラックス日本復活秘話」と呼んで差し支えないだろう。
 ディーゼルゲート事件でヨーロッパの排ガス規制がより厳しくなり、それがディーゼルを積んだハイラックスの国内市場復活の一助となったのだ。

 さて、ハイラックスとランクルの関係についてお教えていただいたところで、今度は開発経緯について伺おう。ご存じの通り、日本で売られているハイラックスはタイの工場で造られている。

 タイの工場を基準とし、世界各地の工場で生産されている。
 文化も言語も違う各国の工場で、果たして同じものが同じように造れるのだろうか。
 「世界一厳しい」と言われる、トヨタの基準を満たすことができるのだろうか。