「日本人のデファクトを注入したい」

F:要は塩梅の問題ですね。

:そうそう。要は塩梅。さじ加減。イタリアだとこれぐらいやらないと彼らのデファクトにはならないとか、イギリス車のスポーティープレミアムはこうだよねとか、それぞれにさじ加減が違う。そこを理解した上で、「日本だとこうだよね」というデファクトを、日本人の感覚でビシっと注入しておきたい。

F:日本人のデファクトを注入する。なるほど。いまデファクトの例としてドイツが挙がりませんでしたが、ポルシェとの競争にはもう興味が有りませんか。

:いや、興味はあるに決まっているじゃない。だけど……。

F:だけど?

:正直それを目標にしてない、という所もあるよね。たぶん同じぐらい(のタイム)でいくはずだよ、みたいな。さっきも言ったけど、例えばちょっと条件が変わればタイムなんて簡単に変わるし、サーキットの条件でも違うし、そもそもサーキットによっても、向き不向きで速さは違ってくるだろうし。

F:なるほど。

:このサーキットでは勝ったけど、あっちでは負けたとか。お互いにもうそういう領域に入ってしまっているので。

F:とてもよく分かりました。うわ、もうこんな時間。かなりオーバーしてしまいました。長時間ありがとうございました。

:こちらこそありがとう。やっぱり楽しいよね、フェルちゃんの取材はね。

 かくして長い長いインタビューは終わりました。

 インタビューの後、長い廊下を田村さんと並んで歩いていたら、「今日はクルマの話を殆どしなかったな。こんな取材は初めてだよ」とポツリ。そして「何なら別室を取って、いまから話そうか」と有り難いご提案まで頂きました。いえいえセンセ。お越しになる前に部下の方からタップリと伺っておりますので……とご辞退申し上げて退散したのでした。

 前任者の水野さんもそうでしたが、やはり世界と戦うスーパースポーツを開発するには、一種「狂気」のようなものが必要なのかもしれません。その狂気が研磨剤となり、クルマを磨き上げていくのではないか、取材を通して、そんな印象を持ちました。

 敷居が高いクルマではありますが、GT-Rの取扱がある店舗に予約をすれば試乗は可能です。

 水野、田村と二人の鬼才が、慈しみ育み狂気の研磨剤で磨き上げてきた日本の至宝を、ぜひ一度味わってみてください。桃屋のイカの塩辛ではありませんが、「日本に生まれてヨカッタ」と思うこと請け合いです。

 それではみなさままた来週!ごきげんよう。さようなら。

「皆さん、お世話になりました」

読者の皆さん、こんにちは。担当編集のY田です。

ヨタでも触れられていましたように、今回で(晴れて?)、担当を卒業させていただくことになりました。1年半という短い期間でしたが、どうもありがとうございました。

編集部内では、多くのメンバーから「“お務め”ご苦労さまです」と慰労の言葉をかけられましたが、次いで必ず、探るような視線で「次はだれが担当するの?」と尋ねられました。「まさか、自分では…」との不安が見え隠れするこの言葉の中に、この連載の担当編集者となる辛苦を、いささかなりともお感じいただけるかと思います。

また、連載当初から、フェルさん…とではなく、担当編集と苦労を共にしてきたADフジノさんも今回、卒業いたします。フジノさんこそ、本当に「“お務め”ご苦労さまでした」。

フジノさんは、当連載以外でも、日経ビジネスオンラインで記事を書いていただいています(最新記事:「EV版“スマート”に見るダイムラーの近未来戦略」)。晴れて“出所”したことで、別企画でご活躍いただく機会も増えそうですので、ファンの皆さんはぜひご期待を。

で、卒業する私たち2人の後任として白羽の矢が立ったのは、高橋満さん(通称マンさん)とY崎副編集長。

締め切りギリギリに、まったく反省の色のうかがえない、「おまた!」の明るい一言が添えられたメールが届いたかと思ったら原稿が添付されていなかったりしますが、通常、生命の危機を感じるような出来事はありません(フェルさんがステアリングを握るクルマの助手席に座っていない限り…)。

なので心配無用です。ただひたすら、頑張って(耐えて)ください。

ということで、新たなメンバーでスタートする「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」。引き続き、ご愛顧のほどよろしくお願いいたします!