S600の開発責任者、椋本陵氏。
本田宗一郎氏の著作に感銘を受けたクルマ好きの少年時代。
高卒でホンダに入社し、社内コンペで提案したクルマが評価され、開発に至る。
そして史上最年少のLPLに就任する。
S660の発売は1年以上も前のことであり、椋本氏の言葉もエピソードも既に出尽くした感がある。
それではなぜ“今ごろ”S660なのか。
単純な話だ。私がマツダにハマりっ放しで、他の会社のクルマに手が付けられなかったからだ。S660については前から書きたいと思っていたのだが、タイミングが合わなかった、それだけのことだ。本を出し一息ついたので、椋本氏の話をジックリ伺おう。
そうそう。先に言っておくが、椋本氏の話はメチャクチャ面白い。このシリーズは長くなります。
「市販なんか考えなくてもいい、面白い企画を出せ」
F:先日はお世話になりました。改めまして、今日はよろしくお願いします。(我々は1月に開催されたリードエグジビション社主催の“オートモーティブワールド”でご一緒している)

椋本(以下、椋):よろしくお願いします。フェルさんの記事はたまに読むことがありますよ。
F:たまにって……毎週読んでください(苦笑)。毎週月曜日に更新です。
椋:やっぱり有名人が出るときとか面白いので。
F:有名人……?藤原大明神とかですか。
椋:藤原さんもそうですが、86の多田さんとか、マツダのムッシーさんとか。後で実際にお会いした時に、あ、この人がフェルさんの記事に出ていた人か、と(笑)。
F:虫谷さんは記事が出て以来、「イベントなんかで何か知らない人からムッシーさんと呼ばれる」、と困惑されていました。と……そろそろS660の話をしましょうか(笑)。
椋:ですね(笑)。それじゃ開発経緯から。
本田技術研究所が50周年を迎えるとき、記念に何かイベントをやろうということになったんです。そのうちの1つに、昔やっていたアイデアコンテストじゃないですが、所員から何かアイデアを募って、新商品の企画提案を出させようと。
F:新商品の企画提案。それはもちろんクルマ限定ですよね。昔のアイコンみたいに何でもアリではなく。
椋:いえ、基本は何でもアリです。4輪、2輪、汎用というふうに、誰が何を提案してもいい。
F:誰が何をと言うと、4輪の人が新型芝刈り機を提案しても良い?
椋:もちろん良いです。部門も部署も関係ありません。誰が誰と組んでもいいし、部署単位で出してもいいし個人でもいい。僕は個人で出しました。
F:椋本さんは個人で提案した。そのコンテスト、最終的にはもちろん製品化を見据えての提案ということですよね。
椋:いえ。それはまったくないです。市販なんか考えなくてもいいから、ともかく面白い企画を出せと。
Powered by リゾーム?