:メリットですか。うーん。あまり考えられませんね。

F:硫黄のお陰でパワーが出るとか。

:ないですないです。それはない。メリットと言って良いかどうか分かりませんが、脱硫にお金がかからないから、供給側にとっては良いかもしれません。ですが、使い手側と地球環境的に良いことは何ひとつありません。

F:それでも質の低い燃料が残っているというのは……。

:やはり質の高い燃料を作るのにはコストがかかるからです。軽油を手に入れるにもいろいろなルートがあって、ひどい国になると、自分の国で取れる原油がもともと低サルファーで質が良いと、それを輸出して自分の国には安くて低い質のものを輸入してくる、なんて話も聞いたことがあります。

F:ひどい……でも昔は日本と中国で同じことを石炭でやっていたと聞きます。

どんな環境でも、どんな粗悪な燃料でも壊れない

:そういうことが今でもやっぱり起きているんです。それでも我々は、どんな環境でも、どんな粗悪な燃料でも、壊れないでちゃんと走る、みなさんの生活を支えるクルマを作らなければいけません。だから「ハイラックスというクルマはどんなクルマ?」と聞かれたら、僕らは「ライフ」と答えます。このライフというのは、“命”と“生活”の両方です。これを支えているクルマがハイラックスなんだと、そう答えます。日本だとファッションみたいなイメージがあるんですけど。ハイラックスはライフです。

ナミビアの砂漠を征くハイラックス(2016年) ハイラックス50周年特設サイトより(こちら

F:なるほど、ライフ。ええカッコの「ライフスタイル」とかではなく。

:ではなく。生活そのもの、命そのもの。万一クルマが止まってしまったら、本当に危ない環境で毎日乗ってもらっているわけですから。

 ハイラックスの仕事で現地に行くと、なぜかいつも「ありがとう」と言われるんですよ。最初はすごく不思議でした。だって僕ら、買っていただいて、乗っていただいてありがとうございますじゃないですか。それなのにお客さんの方からありがとうと。えー何でですか、と聞くと、我々はこのクルマがあるから生きていけると。要は彼らは朝に出かけていって、途中でクルマが壊れると、本当に、その……。

F:死んじゃうわけですね。

:そうなんです。あんまりこうしたインタビューで死ぬ死ぬ言っちゃいけないんですけど。特にフェルさんは言ったらそのまま書かれるから気をつけろと広報からも言われているんですけど、要はそういうことなんです。

 売った側からでなく、お客さんから「ありがとう」と言われる商品が他にあるだろうか。
 取材先の広報から「あの男には気をつけろ」と言われるインタビュアーが他にいるだろうか。

 前田さんのインタビューは次号へ続きます。
 それではみなさまごきげんよう。