:そう。国連であちらに派遣されている方たちから「絶対にメカ式が必要だ」と言われているんです。道なき道を走っていて、万が一故障してしまったら、今のコモンレール式のディーゼルだと精密すぎて手が入れられないからお手上げになってしまうと。さらに、ああいう場所は燃料性状(燃料の性質、状態)があまり良くないので、コモンレールみたいな精密機器を載せていると、どんなに優れたフィルターを付けたところで、やっぱりある程度の率で故障は出てしまう。普通なら故障発生率なんてほとんどゼロですよ。そうしたことから、「メンテナンスのしやすいメカポンプのディーゼルを残してください」と言われるんですね。我々は「5L」と呼んでいるのですが、もう何年前の設計になるのだろう……30年ぐらいになるんですかね。そんな大昔の設計のディーゼルを、このクルマは残しているんです。

F:ひょえー! 30年前! そんな古い設計のエンジンで排気ガスをキレイにしろと言われても……。

:ちょっと厳しいです。もちろんある程度の排気システムは用意していますが、今の最新のディーゼルと同じだけの排気レベルにはできないです。とてもじゃないけど無理ですね。

F:排気系統をどんなにいじってもダメということですか。燃やす段階からキレイになっていないとダメだと。

:うん。まず燃料がきれいじゃないとダメですね。

F:むこうの燃料はサルファー(硫黄)がタップリとか。

:ご名答。サルファーが入っていると、排気をキレイにするための浄化システムが全部やられちゃうんです。

F:尿素とか使ってもダメですか。

:ダメですダメです全然ダメ。その前の段階として、もうサルファーが入っている時点でダメなんです。普通ディーゼルの場合って、規制に合わせて燃料中の硫黄分を何ppm以下にしてください、ということを国と一緒に約束して決めていくんです。なぜ海外のディーゼル規制が進みにくいかというと、サルファーを除去するには、まず製油所の脱硫装置から投資して造らなきゃいけないからなんです。そもそも精油所を持っていない国は、他の国から高質な燃料を買って来なければなりません。燃料代はますます高くなる。

F:なるほど。それぞれにお国の事情がある。

:そうです。でも発展途上の国は、場合によっては政府が燃料に補助金を出しています。国の財政が厳しくなって、政治家が「補助金を減らします」というと、ワッとデモが起きたりする。次の選挙にも影響してしまう。

メカポンプ搭載の8代目もあります

F:政治家は怖くて補助金を下げるとは言い出せない。どこの国も同じなんですね。

:そうなんです。だからローサルファーの燃料とセットでディーゼルの排ガス規制を入れるのは難しいんです。財政負担を少しでも減らしたいという経済的側面と、でもやっぱり政治家なので自分の国の排ガスはクリーンにしたいという政治的側面とが対立してしまう。葛藤していますよ。だから規制を入れますと言ったのに、後になってやっぱり延期します……みたいなことが起こってしまうんですね。

F:日本の福祉問題と一緒ですね。削減しますと言ったら次の選挙で落選しちゃう。落ちたらただの無職のオッサンですからね。

マイトのY:あぁ、コラ!

F:現在の新しいデザインのハイラックスで、メカポンプ式の古い設計のディーゼルを載せている仕様もあるのですか?

:あります。今でもあります。あのデザインで。

F:あの先進的な格好の中で、ポンプがカチカチカチカチ回っている。

:回っています。あの中でカチカチやっています。

F:それはどこで作っているのですか。

:南アフリカですね。

F:そのクルマを日本に持ってきて、日本のサルファーフリーの燃料を入れても普通に走るのですか。

:走ります。普通に走りますよ。たたターボも付いていないですから、日本で売っているものと比べたらだいぶ落ちますが。

F:燃料にサルファーが入っていることに、なにかメリットはあるのですか。