前号のコメント欄は大いに盛り上がりまして、読者諸兄のMIRAIに対する興味のほどが分かります。

 常連の曲げオタク氏をはじめ、たくさんの方からコメントを頂戴いたしました。他の方の投稿を批判する方、そのまた投稿に疑問を投げかける方とバトルロワイヤルの様相を呈しておりまして実に結構な展開であります。気の済むまでハデに殴り合って頂きたく存じます。

 日経BP社の掲載基準は詳しく知りませんが、著者といたしましては公序良俗に反しない限り、「なんでも載せちゃう」今の方針が健全だと思っています。個人的には文字数制限など設ける気はありませんし、二重投稿・三重投稿も大歓迎。「吐いた唾は飲み込めない」ことだけを認識頂ければ、何でもアリでしょう。ヤジも拍手も、どちらも大歓迎です。

 有毒な排気ガスを発生しない夢のクルマFCV(燃料電池自動車)。FCVの開発は、世界的に見てもトヨタとホンダが先行しており、2002年には両社からリース販売が始められている。その後、2013年にFCVの開発に向けて日米欧各社が技術提携を発表。「トヨタ&BMW」「日産&ダイムラー&フォード」「ホンダ&GM」と、FCVの世界は大きく3つにグループ分けされる。

 このときトヨタは、2015年に量産型を発売すると公言しており、それがMIRAIというわけだ。ちなみにホンダは、昨年の東京モーターショ―で発表した「CLARITY FUEL CELL」を、日本では2016年3月よりリース販売を開始し、その後一般販売も始める予定という。

 何事にも慎重姿勢のイメージがあるトヨタが、なぜ世界に先駆けてFCVを発売したのか。FCVの開発にはどのような苦労があったのか。開発チーフエンジニアの田中義和さんからじっくりとお話を伺おう。

F:はじめまして。フェルディナント・ヤマグチと申します。よろしくお願いします。

 まずはMIRAIに至るまでの田中さんの経歴からお聞かせ下さい。田中さんは今までどのようなクルマの開発に携わっていらしたのでしょう。

トヨタ 製品企画本部ZF チーフエンジニアの田中義和さん
トヨタ 製品企画本部ZF チーフエンジニアの田中義和さん

田中さん(以下、田):私はちょっと老けて見られるのですが、今54歳でして、87年に大学院を卒業してトヨタに入社しました。最初はオートマチック関係の開発部署に配属されました。その時の部署名は「駆動技術部」という名前です。そこで5年ほどオートマチックの制御とか、油圧制御系の開発をハードとソフトの両面からやっていました。

F:大学院でのご専攻は機械だったのですか。

:ダイレクトな機械学ではなく、卒論では流体や電熱関係をやっていました。鉄板を水で冷やす、冷却をするような関係の論文です。卒論が流体だから……という訳ではないのでしょうが、配属されたのは油圧制御系の開発でした。

F:すると学校で研究された学問の延長線上にお仕事が。それはまたずいぶんとラッキーですね。専攻とは全く関係ない仕事に配属される人が多い中で。

「これは話してもいいのかなぁ……」

:うん。確かに学校の勉強とは関係のない部署に行く人も多いですね。それでね、実はその後にちょっと変な経歴がありまして……これは話してもいいのかなぁ……。

F:話しましょう、話しましょう(笑)。

:実は私、4年間ほど専従で労働組合にいまして。

F:おぉ!出世の王道、労働組合!(笑)。確か有田くんも組合だったよね。

広報:有田:僕は一番の下っ端で、会社の仕事をしながらの組合員です。専従とはぜんぜん意味が違うんですよ。

F:組合専従となると、その間クルマはまったく触らない?

:ええ。もう期間中はまったく触りません。組合の仕事にのみ専念します。

F:「給料上げろ!」とかそういうことを赤旗振ってやるわけですか(笑)。

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