試乗記こそ書かなかったが、鳥居さんのインタビュー(「三菱自の技術者は今何を考えているのか」)をおこなう際、「さすがに最新のクルマに乗っていないのはマズかろう……」ということで、慌てて1週間ほどアウトランダーPHEVに試乗する機会を得た。

 何しろ“例の事件”直後のことである。私としてはケチを付ける気満々で(水に落ちた犬は叩け、というヤツだ)、いっぱしの評論家ふうにアレコレと文句を並べて、「だから三菱自ってダメなんですよねー(笑)」と勝ち誇ったように結論づける気持ちでいたのだ。

 しかし、試乗したアウトランダーPHEVの仕上がりは、(意に反し)極上のものだった。

 どっしりとした巌の高速安定性。モーターとエンジンが補完し合い、力強くグイグイ進む怒涛の加速。そして安心安定のコーナリング。何ともケチの付けようがない、唸るしかない仕上がりだったのだ。スピードを出したときの安定感は、強靭なシャシーや正確なセッティングから生み出されるものなのだが、三菱自の確かなAWD技術に拠るところも大きい。鳥居さんからは、インタビューの終わりしなに、「雪の季節になったら、ウチのAWDはもう最強ですよ」と耳打ちもされていた。

 そんな三菱自のAWDを、極寒の北海道で好き放題乗り倒せるというありがたい雪上試乗の機会に恵まれた。

 以下、北の大地で体験した同社のAWDの実力の程をお届けする。

皆既月食の日に試乗

 用意されたクルマは3月に発売が予定されている新型のエクリプスクロスである。
 ECLIPSEは「日食・月食」を意味する英単語で、試乗日の夜はちょうど皆既月食の日であった。三菱自の広報は、敢えてこの日を選んだのだろう。広報って大変ですね(あんた、そういう言い方しかできないんですか!:担当編集Y)。

 クーペのようなデザインと、SUVの機動性を融合させたフォルムは、皆既日食の際に発生するダイヤモンドリングをイメージしているという。

 エクリプスは、もともと1989年から三菱自の米国法人であるDSMが生産していたスポーツクーペで、日本にも3代目までは輸入されていた(クーペのときは何と何の融合だったのだろう……)。2012年に4代目の生産が終了し、クーペのエクリプスはそのまま廃版となってしまった。エクリプスクロスは、その看板を引き継ぎ、SUVとして蘇らせた、三菱自として特段に気持ちの籠もったクルマである。

 「特段に気持ちの籠もった」と思えるのには、もう一つ理由がある。

 エクリプスクロスは、三菱自が日産に買収される前から開発を続けていたクルマであり、「三菱」の名のもとに単独で開発した、「最後のクルマ」となるのだ。開発陣は、どのような気持ちでこのクルマを仕上げていったのだろう。エクリプスクロスは、最後の「純血三菱車」なのである。

 全長×全幅×全高は、それぞれ4405×1805×1685mm。現代のSUVとしては、もはやコンパクトと言えるサイズである。ターボで武装された新型の1.5リットル直噴エンジンは、150馬力を発生する。駆動方式は当然AWD(2WDも設定される)。ドア及びテールゲート開口部、リアホイールハウス周辺には構造用接着剤が使用され、ボディ部品同士の結合剛性を高めている。これが、高速でもビシっとぶれない操縦性に寄与している。

 早速クルマに乗り込む。エンジンは……複数の乗り手が、かわりばんこに運転する試乗会なので、すでに始動されている。「クーペとの融合」を謳っているが、運転席からの見晴らしは非常に良い。後方視界も満点と言える。昨今のシャレオツ系SUVは、視界をスッパリ諦めてデザインに走っているきらいがあるが、このエクリプスクロスにはそのようなところが一切ない。当日は快晴だったこともあるが、室内にはさんさんと光が差し込んでくる。

 アクセルを踏むと、クルマは意外なほど軽い出足で、ポンと飛び出した。非常に車重が軽く感じられるセッティングである。

(注:写真は三菱自動車提供、フェルさんの運転ではありません)

 1周目は様子見でゆっくりとコースを巡る。2周目に入る。何しろクローズドなコースである。多少のムチャは容認されよう。思い切りアクセルを踏み込んでみる。クルマは一切姿勢を乱すことなく、グイグイと前に進んでいく。コーナーの前で(敢えて滑らせるつもりで)フルブレーキング。少し左右にブレながらも、まずまずの安定姿勢で減速する。右コーナー。ハンドルを切った方に、正確に曲がっていく。続いて左コーナー。ややオーバースピードで進入するが、やはり安定して曲がってくれる。急坂を駆け下り、バンクが付き大きくエスケープゾーンが設けられた右カーブ。スピン上等で、完全なオーバースピードで突っ込んでみる。しかしクルマは相変わらず、ハンドルを切った方向にスルスルと曲がってくれる。

 要するにクルマが「全部やってくれる」のだ。これが三菱自慢の車両運動統合制御システム「S-AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロールシステム)」の効果ってヤツなのだろうか。考えても分かるわけがないので、チーフ・テクノロジー・エンジニアである澤瀬薫さんにお話しを伺ってみよう。

何も考えなくても「クルマが助けてくれる」ワケ

:どうですか? 乗っていただけましたか? ご感想は?

F:いやもうスゴいです。何も考えず、行きたい方向にハンドルを切るだけで、すべてクルマがやってくれるという印象です。他の会社の四駆とは明らかに違います。この差はどこから来るものなのでしょう?