みなさまごきげんよう。
フェルディナント・ヤマグチでございます。
最近はお座敷に声がかかることが非常に多ございまして、連日連夜ご馳走を頂いております。
こちらは自然派イタリアンの雄、EFFEのステーキ。シンプルに焼いてもらいましたが、最後にトリュフをドバっとかけて頂きました。これがまた旨いのなんの。
福田シェフはますます腕を上げられましたね。美人ソムリエの奥様との掛け合いも良く。実に気持ちよく食事ができる店です。
こちらは知る人ぞ知る蒲田の名店、初音鮨。え?蒲田?と訝しがる声も聞こえてきそうですが、高度成長期、この街は好景気に沸く京浜工業地帯の工場のオヤジさんたちで賑わっていたのです。
往時は気軽な立ち食いの「10円寿司」もあれば、超高級な鮨を供する店もあった。何しろ製品を「作れば売れる」時代でしたから、所謂町工場も潤っていて、その近くにある飲食店もバラエティに富んでいた、という訳です。多くの工場が閉鎖され、次々とマンションに建て替わって行く昨今からは想像すらできませんが。
それにしてもこの店は凄い。ご主人の食に対する拘りもさることながら、軽妙洒脱な江戸前の語り口は、エンターテインメントと呼ぶに相応しいものです。いや、実に楽しかった。
所用で福井まで出張りまして、この時期だけしか食べられない「ズボ蟹」を頂いて来ました。要はズワイガニなのですが、脱皮直後のソフトシェル状態のズワイを「水蟹」とか「ズボ蟹」とか呼ぶそうです。簡単に実がズボッと抜けるからズボ蟹です。
ズボ蟹を美味しく頂ける期間は僅か二週間。この時期を過ぎると、徐々に殻が固くなり、身も詰まって普通のズワイになってしまうのです。一人丸々一杯を頂くと、結構なボリュームです。
こんな具合に調子に乗ってご馳走ばかり食べていたら痛風になってしまいました。尿酸値は7.2とそれほど高いわけでは無いのですが……。最近は高プリン体の食事よりも、ストレスのほうが大きな原因との学説が有るそうです。気楽に暮らしているように見えますが、実は結構ストレスがあるのです。日経BPのみなさんは、もっと私を大切に扱うべきだと思います。
真っ赤に腫れた左親指関節。痛くて革靴も履けません。スーツにスニーカーという妙な格好で会社に行きました。
こんな薬が出ましたが、何を飲んでも痛いものは痛いです。お爺さんのお医者さんには、「まあ最近はいろいろ言われているけど、結局は贅沢病だからね(笑)」と冷たく突き放されました。ストレスじゃないのか……。
痛風で痛む足を引きずりながら、名古屋の仲間とお伊勢参りランに行ってきました。これがまた霊験あらたか。お参りの直後から痛みも腫れも引いていくではありませんか。
さすがはお伊勢様。お参りをしたら足の腫れが見る見る引いていきました。ありがたや。
足も治ったので、お参りの帰りにはおかげ横丁でスキヤキを食べました。天照大御神のご加護がありますから、もう何を食べても大丈夫です。
おかげ横丁の豚捨で極上のスキヤキを。おいしかったです。
来週は東京マラソンに出場するのですが、こんなことで大丈夫なのでしょうか……。
とまれ、心配していても始まらない。ボチボチ本編へと参りましょう。
親切団体JAIA(日本自動車輸入組合)の試乗会リポート後編です。
今回お届けするのは、ジャガー初のSUVであるF-PACE R-SPORT、ランボルギーニのウラカン LP580-2、ポルシェ911ターボカブリオレの3台である。いずれもなかなか乗る機会の無いスーパースポーツ。1台約1時間半の試乗枠を一杯に使い、大磯ロングビーチを起点にバンバン走り回ってきた。
SUVの皮を被った狼
まずはジャガーのF-PACE R-SPORTから。
15年前にポルシェがカイエンという名のSUVを出した時も驚いたが(ポルシェ社はカイエンをSUVとは認めておらず、あくまで“スポーツカーの一形態”と称しているが)、このF-PACEの登場にも大いに驚かされた。”あの“ジャガーがSUVを?マジで?
レクサスはRXが発売から1カ月で当初予測の18倍も売れ、カイエンの好調に気を良くしたポルシェはマカンを投入し、果てはマセラティやベントレー(!)までSUVを作り始めた。
SUVはよく売れるのだ。そしてSUVは利益率が高く儲かるのだ。ジャガーとしても、もはやこの分野のクルマは無視できなくなってきた、ということだ。
例によって車両の周囲をグルっとひと回り。一見してそれと分かるジャガー顔。正真正銘のSUVであるのに、佇まいはちゃんとスポーツカー然としている。
ジャガー社は「F-TYPEからインスピレーションを得た」と謳っているが、顔付きはXEやXFの系統である。少し離れて眺めると車高を上げたスポーツカーに見え、近づくと徐々にSUVに見えてくる。そんな印象だ。
全長、全幅、全高は、それぞれ4740mm、1935mm、1665mmとかなりデカい。試乗会場である大磯近辺の広い道を試乗するには快適この上ないサイズだが、都内の住宅地などでは取り回しに神経を使いそうだ。
搭載されるエンジンは三種類。2.0リッター 直列4気筒 180馬力のターボチャージドディーゼルエンジンと、3.0リッター V6 スーパーチャージドガソリンエンジンの340馬力仕様と380馬力仕様。今回試乗したモデルは340馬力のモデルで、重量は2トンちょうどである。2トンと聞くと相当な重量級というイメージだが、何しろこの立派な体躯である。むしろ「大変軽く出来ました」と評価して良いと思う。
ドアを開け運転席に座る。外見の立派さから比べると、かなり絞り込まれた印象である。デロンと広いのではなく、ドライバーをタイトに包み込むような感覚だ。この辺りはジャガーの面目躍如というところだろう。
エンジンを始動し、ゆっくりと走り出す。左右にハンドルを切る。電動パワーアシストのステアリングは意外なほどに重い。速度を上げてハンドルを切ると、車速に応じていよいよ重くなってくる。この“味付け”も、スポーツカーらしさを演出する一つなのだろう。
西湘バイパスに入る。江ノ島方面に向かいグッとアクセルペダルを踏み込んでみる。胸のすくような……とまでは言わないが、必要にして十分な加速。これは気持ちが良い。
驚いたのはそのコーナリングの姿勢である。かなりの速度でコーナーに飛び込んでも、車体がほとんどロールしないのだ。足回りがキツく締め上げられているからだ。
ジャガーのHPに記されたF-PACEの謳い文句は「実用性と効率性を兼ね備えた、ジャガーの最も実用的なスポーツカー」。そう。このクルマはSUVの格好をしたスポーツカーなのだ。先週書いたアウディのRS7が「羊の皮を被った狼」なら、こちらは「SUVの皮を被った狼」とでも言えようか。道で「鈍重なSUVめが」と不用意にチョッカイを出すと、返り討ちに遭うこと必定である。
ただし、この硬さで荒れた道を走るとどうなるのだろう。今回は悪路走行する機会がなかったのだが、ポンポン跳ねて怖い思いをするのではあるまいか。まあこのクルマでオフロードを走る人は殆ど居ないだろうから、余計な心配なのかも知れないが、F-PACE R-SPORTは、「荷物をたくさん載せられるスポーツカー」と割り切ってお買い求めになられるのが吉である。
「『地を這う』とは、こういうことか」
お次は宇宙戦艦ウラカンである。
この特異なデザイン。なんですかこれは。ドアこそ素人さん向けに横に開くようになったが、それでもこのクルマから発せられるオーラは尋常なものではない。何というか、普通の人が乗るクルマでは無い。
そもそもランボは常人が乗るクルマでは無いのだ。私の知り合いでも、ランボルギーニを所有する人は、某IT系(と称する出会い系)企業の経営者と、都下にビルを5本も所有し、そこにある意味は全く無いのに無駄に西麻布に事務所を構える道楽息子と、ヤマグチ家の菩提寺であるお寺の住職さんの3名だけである(彼は寺から5キロも離れた場所に車庫を借り、檀家衆にはランボ所有をひた隠しにしている)。
ウラカンLP580-2の低く広く短いボディは獲物に襲いかかる野獣のようである。太い太いサイドシルをよっこらせと跨いでシートに座る。低い。バカみたいに低い。
画面下に見えるのが、スタートボタンの赤いガードバー。カッコいいが、面倒である。
よく「地を這う」なる表現を目にするが、こういうことだったのか。路上を走るリュージュ。エンジンを始動するスタートボタンは、赤いガードバーに覆われている。エンジンをスタートさせるには、いちいちこれを跳ね上げてからボタンを押さねばならないのだ。面倒じゃないか。早く出かけたいのだ私は。このガード、走行中の誤作動を防ぐためとのことだが、別に誰も間違えやしませんから。
エンジンを回す。フォワン!と景気のいい音が辺りにこだまする。広い大磯ロングビーチのパーキングでも、他社のみなさまが振り返るほどの咆哮だ。これ、家に乗って帰ったら近所迷惑だろうなぁ。右隣の婆様は耳が遠いから良いが、お向かいのゲージツ家のお宅からは文句が出るかもしれない。
パドルを操作して走り出す。意外や意外。これが結構ソフトな乗り心地なのだ。公道に出るためウインカーを……と、あれ?“有るべき場所”からウインカーの棒が生えていない。改めてハンドル周りを眺めてみると、シフト用のパドル以外は何も生えていない。全てはステアリングホイール内のボタンで操作するようになっているのだ。
写真ではわかりにくいが、ウインカーの操作はステアリングにある左のボタンで行う。ちなみにワイパーは右のボタン。
F1っぽくてカッコイイのだが不便だ。普通にしてほしい。いや、この普通で無いところ自体がランボなのだ。交差点を曲がる度に“特別な俺様”感に浸れる心憎い演出。さすがは3000万円近いスーパーカーである。走りもお値段も操作性もスーパーなのである。
「法定速度でも、前を行くクルマが次々と道を開けてくれる」
近所をチンタラ走っても仕方がないので、早速、マツダ ターンパイク箱根に持ち込もう。
西湘バイパスを法定速度でノンビリ流しても、尋常ならざるオーラに気圧されてか、前を行くクルマが次々と道を開けてくれる。いやホント飛ばしたワケじゃないんです。みなさん勝手に避けてくれたのです。そのお気持ち、よーく分かります。怖い人が乗っていたらイヤですものね。
笑ったのはターンパイクの料金所で停車したときのことだ。いまのランボにはアイドリングストップ機能が備わっているのだ。信号待ちの度に息を潜める5.2リッターV10 DOHC 40バルブ580馬力。いや俺らも環境の事とか考えてるんスよ、という事か。強面のコワイ方々のボランティア活動を思い出した。
今回試乗した車両は後輪駆動のモデルである。今やヨンクがスタンダードとなったランボルギーニは、はじめに四輪駆動を出しておいて、一周りしてから後続として後輪駆動を出すようにしているのだ。当然ヨンクの方が速く安全に走ることが出来る。でもまあ私レベルの腕前で、しかも公道では、その差異を云々することは難しい。デンデンではなくウンヌンです総理。
西湘バイパスでも「快適」に飛ばせたが、それはここターンパイクでも同じだった。低く広いボディは安心感のカタマリで、一切の不安なくコーナーに飛び込んでいける。堅牢なボディはキシリともミシリとも言わず、すべてを優しく受け止めてくれる。
外見は強面のクルマだが、どっこい中味は安心安定安全の、素っカタギのスーパーカー。現代のランボは、かくも進化していたのだった。
硬すぎず柔らかすぎず、良い塩梅の乗り心地
さあさあ、殿はポルシェの911ターボカブリオレである。
ウラカンから乗り換えるとグッと控え目に見えるが、このクルマだって街に出れば十分に目立つスーパーカーだ。スリーサイズは4507×1880×1294mmと、ウラカンと比べればグッと小ぶりで常識的な大きさだ。
ドアを開け運転席に座る。まだ外の気温は低く、些か肌寒いが、せっかくのカブリオレだ、幌を開け放とう。幌開閉のスイッチを入れると、複雑なギミックとともに幌が後部座席の後ろに収納された。そう、911カブリオレには狭いながらもちゃんと後部座席が用意されているのだ。
とはいえRRレイアウトのクルマである。後ろに人間が座るためには、前の座席を窮屈な位置にまで押しやらなければならない。後部座席はあくまでも緊急時用で、日常使いができるものではない。
ギアをドライブにシフトしてゆっくりと走り出す。極上の安定感。硬すぎず柔らかすぎず、良い塩梅の乗り心地。例によって西湘バイパスから箱根のターンパイクに向かう。
「男子たるもの、やはりポルシェに乗らねばイカンのだ」
料金所を過ぎてからの長い直線の上り道。アクセルペダルを強く踏み込むと、車体は弾かれたように突き進んでいく。一発目の左カーブ。ハンドルを当てると実に素直に曲がっていく。無論電子制御はバンバンに効いているのだが、“乗せられている感”は一切ない。四つのタイヤは全て吾が手中に在る。
オープンボディなのにこの異様なまでに高い剛性感はどうだ。一切の妥協が無い。1ミリのスキもない。世界中のすべてのスポーツカーエンジニアが手本にするスポーツカーの頂点。
ああ、世界最高峰のスポーツカーの頂点よ。男子たるもの、やはりポルシェに乗らねばイカンのだ。例え長大なローンを抱えてでも、嫁を質に入れてでも、ポルシェのハンドルを握らねばならんのである。
何事にも代え難いこの快感。そしてこの高揚感。どのクルマとも違う極上のドライバビリティ。3.8リッター水平対向6 DOHC 24バルブのターボエンジンが絞り出すパワーは、今やその数字を聞いても驚かない540馬力である。最新のNISSAN GT-Rより30馬力も低いのだ。
数字だけでは語れないこの魅力。
媚びず衒わず我が道を行く、質実剛健を極めたドイツの良心。
不肖フェル、この試乗で決めました。次のクルマはやっぱりポルシェにします。
ということで特別編の高級外車イッキ乗り大会はこれでおしまいです。
来週からは日本が誇る魔性のスーパーカー。NISSAN GT-Rの大特集をお届けします。
R35もついに今年で満10歳。水野GT-Rから田村GT-Rへ。最新のGT-Rはどのように進化したのか。お楽しみに!
■変更履歴
1ページ本文中
タラバガニとあったのは
ズワイガニ
の誤りでした。お詫びして訂正いたします。
本文は既に修正済みです。 [2017/2/20 9:45]
ランボと僕と「スーパーカー消しゴム」
先週・今週と連続でお伝えした「2017 JAIA試乗会」のリポート、お楽しみいただけましたでしょうか? みなさんこんにちは。編集担当のY田です。
今回、これまで眺める対象でしかなかったクルマたちに試乗させていただいたわけですが、個人的に一番印象に残ったのはランボルギーニ・ウラカンLP580-2でした。
エンジンは、5.2リッターV10 DOHC 40バルブ580馬力。もちろん、爆音。
「フツーのクルマのつもりでアクセルを踏んだらリアタイヤから思いっきり白煙が上がり、はたまた、突如としてロケットのようにかっ飛んだかと思うと、調子に乗ってステアリングを切ったらオーバーステアでコマのように回っちゃって…」
ステアリングを握る前の、私の脳内未来映像です。で、実際はどうだったかと言うと…。
「えぇ~、こんなに運転しやすいの…」
いやいや。本当に驚きました。フェルさんの言うとおり、「安心安定安全の、素っカタギのスーパーカー」です。私、当欄の編集担当ではありますが基本的にドシロウトですので、以下、“お上りさん”的なインプレッションであることをご容赦いただきながらお読みください。
まず、カーブを走り抜けるのが楽しい。路面に吸い付くような感覚で、もっとアクセルを踏み込んでも優しく深く受け止めてくれそうな安心感。この手のクルマは足回りが硬く、下からの突き上げがキツイのでは…と思っていたのですが、とっても“しっとり”。ちなみに、私はストラーダモード(市街地走行向け)で運転しましたので、スポーツモード(スポーツ走行向け)やコルサモード(サーキット走行向け)だとまた違ってくるのでしょうが。
自動的にシフトアップ&ダウンしてくれるオートモードも、また楽しい。比較的低回転域でシフトアップするのは意外でしたが、ギクシャク感は全くなく、ブレーキを踏んだ際に勝手にやってくれる、ブリッピングも結構な快感。もう完全なマニュアル感覚です。ちなみに、ステアリングに備えられているパドルを使って自分でシフトチェンジもできるのですが、ちょっと使っただけでやめました。オートモードの方がよっぽどお上手ですので。
蛇足ですが、カーナビのガイダンスの女性の声が、これまた上品(笑)。まぁ、音声については、ランボルギーニ仕様なのかどうかはわかりませんが。
最後にもう一つ、蛇足話を。試乗後、つい思い出してしまったのが、小学生時代に流行ったスーパーカー消しゴム。私と同じような年代の方は、スーパーカー消しゴムのレースに熱中したことがあるのではないでしょうか。
ボールペンのノック機能を使ってスーパーカー消しゴムを弾き、競うレースです。(摩擦を減らして)走行距離を伸ばすため、タイヤに速乾性のボンドを塗ったり、はたまたホチキスの針を埋め込んだり、ボディー下部をカッターで削って軽量化を図ったり…。ボールペンのノック部分のバネを取り出し、弾力強化のために伸ばしたりもしましたね。
で、当時、私の周りで一番人気だったのが、ランボルギーニ・カウンタックでした。
ちょっと気になってネットで検索してみたら、スーパーカー消しゴム、オークションサイトで結構扱っているようです。4ケタ万円の本物を買う財力は自分にはありませんので、消しゴムで我慢ですかね。
この記事はシリーズ「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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