正月一発目から続きに続いた藤原清志マツダ取締役専務執行役員(研究開発・MDI統括、コスト革新担当)へのインタビュー企画、「藤原大明神降臨祭」。

 今号で何と9号連続である。インタビュー時にお話しいただいた内容は、“ほぼ”余すところなくお伝えしている。

 “ほぼ”に含まれない部分にはまた、興味深いエピソードがたっぷり含まれているのだが、その辺はさすがの私も書くことができない。書いてもマイトのYが通すはずがない(実は毎回コソッと紛れ込ませているのだが、ものの見事に検出され、「フェルさんこれはダメ!」と摘発されてしまうのだ)。

 前号では「残価設定クレジット」という、かなりセンシティブな問題に踏み込んだ。
 (今度こそ本当の)降臨祭最終回は、その続きからお届けしよう。

F:残価設定クレジット。略して残クレ。言わば、何年後かの下取り価格を先に決めておくようなものですよね。クルマに人気があるほど残存価値は高くなり、残クレの価格も高くなる。しかし気前よくやり過ぎて、引き取った時点で中古車の市場価格より高くなっちゃうと、お客さんはいいけれど自分が損を被ることになる。その塩梅が非常に難しい。

:そう。その通りです。そして今のマツダ車は、その残存価値が日本車の中ではとても高いんです。

F:残クレの残存価値が高まったのと、いわゆる“マツダ地獄”が終わったのは同じ時期ですか?

:そうです。イコールです。今はウチの下取り価格がとても高いから、逆に、他に逃げられてしまうことすらあるんです(苦笑)。

F:なるほど。こんなに高く買ってくれるなら、この際思い切って輸入車を買っちゃえ、とか(笑)。

:そうそう。

F:で、1回ヨソのを買って、次の下取りでひどい目に遭って、またマツダに戻ってくると(笑)。最近の一部の輸入車は、買い取り価格が悲惨なことになっていますからね。昔のデミオじゃないけれど、よくウチにチラシが入っています。「走行50キロ」なんていう新車同然のクルマが、定価の100万円引きで売られていたりする。定価400万円のクルマが100万円引きって、25%オフじゃないですか。家電じゃないんだから(笑)。

マンちゃん:ディーラーが自社登録したクルマですね。「登録済み未使用車」と言われるものです。

F:あれはビミョーだよねぇ。典型的なタコ足食い。

マンちゃん:下取りや中古車市場での価格は、新車とは別のロジックがありますから、近いうちにあとがきで書きましょうか。

マイトのY:ぜひお願いします。

下取りに出した同期から初めて褒められました

:まあ他社さんのことはさておき、さっきの車両価格の話に戻ると、前モデルのCX-5を出した2012年以降、ウチのクルマは残価も良いので、少しずつ値段を上げていってもいいかな、という気にはなっています。

F:そうですよね。そりゃ売る方とすればそう思いますよね。

:逆にその方が残存価値も維持できると思うので。

F:最近のマツダ車はデザインに優れている。何となくカッコいい。これはもう一般的に十分認識されていることだと思います。一方でリセールバリューが高い、中古も結構なお値段、ということは、まだまだ認知されていないのではないかと。それこそマツダの関係者とか中古車屋さんしか分かっていないのではありませんか。

:ええ。一度マツダ車を買って、何年かしたら下取りに出して、次のクルマを買おうとしたときに初めて皆さんお気付きになるんです。「え? ウソー」と思われるんです(笑)。

 私も長年マツダで仕事をしてきて、この前初めて同期の人間に褒められました。彼が定年退職をする直前に、クルマを売りにいったんですね。ええ、もちろんマツダのクルマ。そうしたら、「え? こんな値段で買い取ってくれるの?」と驚いて、買い換えるマツダ車を、思わず最高級のグレードで契約してきちゃった。あれ、お前がやったクルマだよな、と。

F:いいお話です。

マイトのY:象徴的ですよね。社員の方が、自社のクルマのバリューが上がったということを、自分のクルマで実感したわけですから。

:そうです。こりゃエエわ、ウチのクルマは高く売れるわ、とマツダの社員自身が実感しているんです。ですから、そういう意味では少し、売り方も含めてね……。

F:見直す時期に来ていると。前のEVの話に戻りますが、今の文脈からすれば、テスラ並みの価格帯のEVをマツダから出したって十分に勝負できるのではありませんか?

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