テールゲートは上下にパカっと開くようになっている。これはどうなのだろう。下側のゲートは頼りない線で吊られているだけだから腰掛けることも出来ないし(アウトドアではここに座れると助かるシーンが多いのだ)、別に上だけに跳ね上げればよいのではないか。

それにしてもここまで完成度の上がった3代目スマートを見るにつけしみじみと思うのは、「ダイムラーはよく頑張ったなぁ」ということだ。スウォッチからの呼びかけで、ダイムラーとの合弁会社MCCを設立したのが1994年。4年後の98年に初代スマートが発売されるも、販売は今ひとつパッとしなかった。以来ズルズルと赤字経営が続き、黒字転換したのは実に会社設立から13年も経過した2007年のことなのだ(この間にスウォッチは完全撤退してしまった)。
それが今や飛ぶ鳥を落とす勢いだ。新型スマート・フォーツーと4人乗りのフォーフォーの世界販売台数は、2015年で11万9398台にも及んでいる。この数字は前年比32.9%増である。この躍進をスウォッチはどんな気持ちで見ているのだろう。まあ向こうも買収に買収を重ね、今や世界一の時計メーカーの領主となってはおられますが。
この安定性。このハンドリング。楽しく気持ち良い!
さて、次に印象深かったのはメルセデス・ベンツのVクラス、V 220 dである。
世界に冠たるミニバン大国の我が日本でVクラスは果たして善戦出来るのか。

先代のビアノ改めVクラスはお尻が跳ねまくって何というか非常にアレなクルマだったが、これは大変良くなった。エンジンは超ワリキリの2.2リットルディーゼルターボのみの設定。ドイツ本国では複数のエンジンが用意されているが、それらもやはりすべてディーゼルである。
何しろ重く大きなクルマである。しかもクルマの性格上、ピュンピュンした加速は求められない。ディーゼルのみの設定は大正解である。なお、この2.2リットルは「日本市場専用」のクリーンディーゼルだそうだ。
ちなみに標準ボディは全長が4905mm。エクストラロングなる仕様は全長が5380mmとなる。
ドイツ車贔屓だから言うのではないが、やはり運転すると良い。世界に冠たるミニバン大国のクルマでも、高速に入るとおベンツ様には太刀打ちが出来ない。
ホイールベースの長いクルマだから、直進安定性に優れているのは当たり前だが、強い横風を受けた時の”いなし”が素晴らしい。テスト走行をしたのは海沿いの西湘バイパスで、ときおり強い海風が吹き付けていた。和製ミニバンがフラつきながら走る中、ピシっと安定して走るV220dには、やはりメルセデスの「一日の長」を感じざるを得ない。
Vクラスには「クロスウインドアシスト」なる横風の影響を最小限に抑えるデバイスが備わっているのだが、それ以前に、クルマとしての「素性の良さ」が感じられる。ミニバンなのにFRレイアウトなのも良い。こんなに大きいクルマなのに、コーナリングの際にグッとアウト側の前輪に荷重が掛かって行くのが感覚として分かる。ハンドルと前輪に「繋がっている感」があるのだ。これは日本のミニバンからは得られない感覚だ。
この安定性。このハンドリング。ミニバンなのに運転が楽しく気持ち良い。
だがしかし。荒れた路面でのドタバタ感はどうだ。盛大に跳ねるし、何しろバタンバタンと騒音がやかましい。カメラマンさんとの2名乗車で、しかも荷物はゼロなのだから、クルマ本来の“あるべき”状態とは異なるが、それにしてもこれは頂けない。日本のミニバンに乗り慣れていると、少なからずショックを受けると思う。
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