お寒うございます。
フェルディナント・ヤマグチでございます。
体の芯から冷えるようです。
こんな寒い日は、ヨタ話で温まっていただければと思います。
最近は「インスタ疲れ」なんて言葉も聞こえてきますが、やはりSNSには良いところがたくさんありまして、Facebookの「共通の友人」なんて機能はその最たるものです。
Facebookが取り持つ不思議な縁。楽しゅうございました。左から井出光裕、千倉真理、竹中三佳(美人)、私。
同級生の千倉真理と飲んでいる写真を上げたら、彼女の番組「ミスDJリクエストパレード」(こちら)でアシスタントを務めている竹中三佳嬢(美人)が、「真理さんとお知り合いなんですか?」と食い付いてきた。「知り合いもなにも、俺たちは40数年来の友達よ」、と返したら、今度は後輩の井出光裕が「ヤマグチ先輩、どうして竹中さんを知ってるんですか? 彼女に何をしたんですか!」と食い付いてきた。お前こそどうして三佳嬢を……という話なのですが、ともかく4人で飲もうということになった。こんな飲み会は、Facebookナシでは絶対に開かれることはありません。
東京は寒い。寒すぎます。ということで週末は沖縄に行ってきました。
沖縄も寒波の影響を受けていますが、それでも気温15度はある。現地の人は寒がりが多く、ダウンを着込んでいたりもしますが、極寒の地から来た私は、短パンに薄いパーカーでも羽織っていれば十分です。
キンと冷えたオリオンビール。最高です。沖縄楽しいです。
こちらでは巨人軍が冬季キャンプを張っておりまして、セルラースタジアムを覗いたら公開練習をしていました。まだあどけない表情の残る若い選手が、延々とバッティング練習をしていました。高校時代はそれぞれ名のある選手だったのでしょう。大勢いる選手の中から、いったい何人が“生き残って”いけるのか。
自分の息子よりもさらに若い選手が、こうして上を目指して頑張っている姿を見ると、わけもなく涙が出てきます。年を取りました。
寒波に加えてこの大雪。関東圏における葉物野菜の高騰ぶりは凄まじいものがあり、拙宅の近所の高級スーパーではレタス1個が500円ナリ、と完全に贅沢品の領域に入っています。
しかし暖かい沖縄では、レタスがこんな値段で売っています。
ご覧くださいこのお値段。レタスが1個147円です。100個くらい持って帰って転売したら、往復のエアフィーくらい楽勝で出てしまいます。担ぎ屋でもやりましょうか(笑)。
ブラっと入ったカフェで注文したハンバーガーが異常なほどに美味しかったのでご紹介。
那覇のバスターミナルから少し歩いた場所にある、オハコルテベーカリー(こちら)です。スモーキーに仕上げられたパテに、鉄板でカリッと香ばしく焼かれたバンズがよく合っています。ドミグラスソースも上品で出しゃばらない。
ここ数年で食べたハンバーガーの中でも、間違いなく5本の指に入るものです。那覇に行かれる機会のある方はぜひ!
さてさて、それでは本編へと参りましょう。
8回に渡ってお送りした藤原清志マツダ取締役専務執行役員(研究開発・MDI統括、コスト革新担当)こと、藤原大明神降臨祭。いよいよ最終回であります。
F:中国市場に於ける欧州車のEV展開。またテスラの巨大なバッテリーを搭載する“賢明な”クルマ造り。EVに関する興味深いお話をたくさん伺いました。ところで当のマツダはどうされるのでしょう。マツダからハイブリッドではない、完全なEVはいつ頃発売されるのですか?
藤:2019年には出そうと言っています。
F:それは、新しい車種として出すのですか。アクセラEVとか、e-CX-5とかいうのではなく、まったく新しい車種名を作って売り出すのですか?
広報小林嬢:あの、そこまではちょっと……。
藤:それは言えませんね。今はね。
F:出しますね。これは(笑)。
藤:いやいやいやいや、何も言うてませんよ、私は(苦笑)。
F:「藤原氏は満更でもない、といった様子で笑みを浮かべ、“今はそれを申し上げる時期ではありません”と、含みを持つ発言をした」。こう書こう(笑)。
広報小林嬢:ちょっと! やめてください! 変なふうに書かないでください!
藤:先程お話ししたテスラは、カリフォルニアやニューヨークの富裕層に支持されて、高額でもキチンと売れています。我々マツダの辛いところは、今の段階で「高い値段でクルマが売れるブランドではない」、ということです。テスラが1000万円超で売れているからと言って、マツダが1000万円のEVを出したところで、いったいどこの誰が買うの?……という話になるじゃないですか。
F:そうでしょうか。結構売れるような気がしますが。
マイトのY:私も意外と売れるのではないかと思います。
藤:いや、現実問題それはなかなか難しいですよ。EVというのは、自動車会社のブランドとして、一番難しい部分に踏み込んでいかざるを得ないんです。我々だけでなく、日系のメーカーは皆さんとても辛いところだと思います。
F:なるほど。日系のメーカーは、どのような位置付けでEVを出すか、ブランディングについてみんな悩んでいる。
藤:私の個人的な推測ですけれど、日本の自動車メーカーでも、ブランドが立っているメーカーは(EVを)やりたいはずなんです。本当なら。
F:あー、なるほど。例えばレクサスなら既にブランドが立っているから、ある程度の値段でフルのEVを出しても許容される。この前出たLCなんか、EVで出したら面白いかもしれませんね。EVなら加速もスゴいし、クルマのイメージにもピッタリ適合する。値段も元から1000万を軽く超えているし(笑)。
藤:確かにイメージ的には良いかもしれません。ですが、スポーツカーとしてEVを出すとなると、技術的な課題はまだいろいろとありますよね。
F:課題の多くは電池ですね。熱の問題、耐久性の問題、重量の問題、どこにどう積めばいいかという大きさの問題、そしてあまり報道されない電池の筒の膨張問題。これら数々の問題も、全固体電池が実現すれば相当部分が解決するのではないかと思うのですが、いかがでしょう。
藤:固体電池にしたって、まあそう簡単に一発でバシッと解決はできんですよ。
F:確かトヨタとデンソーとマツダで作った新会社は、全固体電池のEVを作るんですよね。その研究開発のための会社設立と聞いています。
藤:私は知りません。
F:既に報道されていませんか? 何かの記事でそう読みました。
藤:知らん知らん。正確な話は聞いていないです。これは本当に知らんです。
F:さっきのEVの新車種と違って、今回は完全否定ですね。こちらは本当に決まっていないようだ。だんだんパターンが分かってきたぞ(笑)。
藤:こりゃアカン。まずいなー(苦笑)。
広報小林嬢:あの、フェルさん。この辺はあのですね……。
F:知らん知らん(笑)。
広報小林嬢:他社さんとの兼ね合いもありますし、ひとつお手柔らかにですね……。
F:本当に知らんです(笑)。
さて、それではそろそろクロージングにかかろう。
新春特別企画として始めた大明神降臨祭。既に2月の中旬に突入である。
「新春」を謳うには無理がある時期になってきた。
F:今回は衝撃の資本提携の話もあり、どうしてもトヨタの話が多くなってしまいました。ですので最後に「マツダのこれから」をたっぷりと語ってください。マツダはこれからどういう感じでクルマを造っていかれるのでしょう。
藤:オーナーズカーとして、“みんなが欲しいと思えるクルマ”を造ろうと思っています。だからやはりデザインは一番重要です。
F:端的に「カッコいい」クルマ。欲しくなるクルマ。
藤:もうそれしかないと思いますね。まずは。
F:デザイン力の向上、ブランド力の向上。それに伴って価格は上げていかないのですか?
藤:それはあれです。お客様が上げてもいいよ、とおっしゃってくださるなら喜んで上げます。お客様からの賛同が得られなければ、我々が勝手に価格を上げることはできません。
F:客の方から、どうぞ上げてくださいな、と言うことはないと思います。でもここまでカッコいいなら、ここまでよくできているなら、多少高くなってもまあ仕方ないよね……こうはなると思います。外から見ていると、価格に関してはマツダも変な遠慮があって、例えばロードスターなんて最初から「アフォーダブル」と言って売っているじゃないですか。あんなにいいクルマなのに。もう少し高くたって、買う人は絶対に買うでしょう。自分が思っていたよりも5万円も高いから、買うのをやーめた、なんて人は一人もいないのではないですか。
藤:いえ。ロードスターは、今のあの価格でも高いんです。多くの人から「高すぎる」とお叱りを受けているんです。
F:ロードスターが高い? いったい誰がそんなこと言っているんですか?
藤:昔からのファンの方々です。
F:昔のロードスターと比べれば、それはねぇ……。私はNDロードスターは非常にお買い得感の高いクルマだと思いますけれども。
藤:そこはバランスですね。どうプライシングしていくか、実は現在のマツダは一番難しい局面にあるのではないかと思います。そしてもうひとつ。例えば2012年に出した初代CX-5。あのクルマのリセールバリューは相当上がってきています。
F:そうですね。Yさんの海外赴任したご友人は、相当高く売れたと聞いています。
マイトのY:ええ、中古の業者さんが満面の笑みでめっちゃ高く買ってくれたそうです。相当前の話ですけどね。そういう意味では、マツダのリセールバリューは、もうかなり前から良くなっているはずですよね。もう「マツダ地獄」という言葉も聞かなくなりましたし。
F:本来の意味でのマツダ地獄ね(笑)。「当欄で延々とマツダの記事が続く怪奇現象」ではなく、「下取り価格が安いから、次もマツダ車を選ばざるを得ない負のスパイラル」、という……。
藤:本当に聞かなくなったでしょう。マツダ地獄。もうフェルさんだけですよ。そんなことを言うのは(笑)。
F:マツダとして、「マツダ地獄はもうなくなった。過去のものだ」と認識されたのは、時期としてはいつ頃のことですか。
藤:初代CX-5を発売した、2012年からですね。
F:企業としては最悪の言われ方ですものね。なんとかしなくちゃイカンと。
藤:これはたぶん日本のお客様にキチンと伝わっていないように思うのですが、最初に正しいお金、正しい価格で買うと、価値が維持されるんですよ。最初に値引きをすると、どんどん自分の持っているクルマって落ちていくんですよ。先程(「えっ、2019年に欧州で、アレが大復活?!」)お話しした、EVを補助金を貰って買うのと全く同じことです。
F:以前のインタビューで伺った、ご自宅の郵便受けに「デミオ30万円引き!」なんていう屈辱のチラシが入っていたという話もその昔にはあった……。
藤:そうそう。起きて新聞を取りに行ったら、郵便受けに「デミオ88万8000円から」なんて書いたチラシが入っている。もう破り捨てようと思いましたけど(苦笑)。
マイトのY:あの回の藤原さんのお話はとても印象に残っています(「安売りチラシをブルブル握りしめた朝」)。
藤:ああいうムチャな値引きは、自ら残存価値を落とす行為に他ならないんです。あれをやめようというのが2012年からやり始めたことです。しばらくは苦しいけれど、とにかく頑張ってずっと続けていこうと。そうすれば、いつか必ず良い循環になると。良い価格で回り始めたら、きっとお客様も分かってくださると。そういう思いで続けてきたので。
フェルさんがさっき言ったCX-5。あれは確かに値段が落ちなかった。多くのお客さんが、3年も経たないうちに買い替えてくださった。下取り価格がポーンと高かったので……。
F:下取りが高いから、次のクルマも気持ちよく買えちゃう。
藤:そうそう。ポーンと高く売れるから、次のもポーンと買えちゃう(笑)。
マンちゃん:CX-5は、特にディーゼルが高く売れました。あれは本当に価格が落ちなかったですね。
藤:あれだけのトルクがある、2.2Lで最大トルク420ニュートンなんていうSUVは他になかったですからね。それはもう中古も引っ張りだこでした。中古車買い取りの会社に持っていったら、もう右から左にポーンと(笑)。店頭でも、すぐに「売約済み」が貼られていましたもの。
F:あ、中古車の流れもウォッチされているんですね。
藤:はい。中古車店の店員さんが自分で買っちゃったとか、そんな話も聞きました(笑)。「おいおい買うなよ、ちゃんと店に並べろよ」みたいな(笑)。
「ガハハハハ」。長丁場のインタビュー、私も水を飲もうかな、と大明神。
F:するとマツダ地獄という負のスパイラルを止めたのは、CX-5と見ることもできる。
藤:そうですね。時期的にはそうです。そして今で言うなら、アテンザが非常にいい値段で買い取って貰えています。そういう流れが見えているお客さんは、早めに手放して次の新しいクルマを買うんです。すると、1個上のグレードに上がることができる。
F:早めというと、どれくらいのタイミングでしょう。クルマを売るのに「良い時期」というのはあるのですか?
藤:30カ月ぐらいがベストだと言われています。あくまで一般論ですが。
F:30カ月。初回車検の満期が36カ月だから、最初の車検の半年前に売れば良いんだ。
マンちゃん:そうでしょうね。とくに初期型は車検の時期になるとイッキに売り物が増えてくるので、どうしても玉(タマ)がダブついてきますから。車検より前に売っちゃうか、あとはずっと乗っているかのどっちかです。中古の落ち方って、こう一直線じゃないんですよ。ある時期にガクッと落ちて、またスッと安定するんです。そのガクッの時期が、1回目の車検なんですよね。
F:マズいじゃん。本当にそろそろ売らないと、大損しちゃうじゃん俺。
藤:実はいま、海外ブランドよりも、マツダの方が残存価値が高いんですよ。これは肌感覚ではなく、数字で表わすことができる事実です。残クレの残っているパーセンテージを見てもらえれば分かると思います。
F:残クレってなんですか?
マンちゃん:残価設定クレジットです。略して残クレ。
F:半グレみたいだな(笑)。
マイトのY:くだらん茶々を入れないでください。すごくセンシティブなことをお話しいただいているんですよ!
F:その半グレ……じゃなくて残クレの数値は、信販会社が設定するのですか?
藤:いえ、基本的に我々の側で決めます。これはものすごく微妙で、リスクを取りながら高く設定するのがとても難しいんですよ。あまり気前よくやりすぎて、分岐点を越えてしまうと、こっちが損をしてしまうので。ですから残クレの比率を見れば、下取り価値がどれくらいのものか、目安が分かるんですよ。
何やらまたまたキナ臭い話になってまいりました。
今回で最終回にしようと思っていたのですが、大明神のお話しが面白すぎて、中断することができません。次の次のクルマまで試乗は終えているのですが……。
ということで来週も大明神“新春”降臨祭は続きます。誰か私を止めてください。
ごきげんよう。さようなら。
こんにちは。AD高橋です。
藤原さんへのインタビューが決まったとき、フェルさんとの対談の本筋から外れる話になったとしてもぜひ聞いてみたいことがありました。
それは今回出てきた「マツダ地獄」についてです。
説明しよう、マツダ地獄とは
本編でもフェルさんが話していますし、クルマ好きの方々ならこの言葉をご存じだと思いますが、初耳という方のためにもう少し説明しておきますと……。
かつてマツダ車は他メーカーに比べて中古車の人気が低く、しかも新車を大幅値引きしていたため、買取(下取り)価格が驚くほど安かったのです。そのため無理して高い値を付けてくれるマツダディーラーに売るしかないという人が多数いました。これは次のクルマもマツダ車を選ばざるを得ないことを意味します。つまり一度マツダ車に乗るとアリ地獄のようにマツダ車から抜け出せなくなることから、いつしか「マツダ地獄」という言葉が生まれたのです。
ところが、近年は「マツダ地獄」という言葉が死語になりつつあります。「マツダ地獄」を断ち切ったのはSKYACTIV技術フル搭載で魂動デザインを取り入れた新型車、CX-5でした。中でもディーゼルエンジン搭載モデルは、初回車検を迎えて中古車の流通量が増える2015年時点でも、中古車価格が軽く200万円を超えていたのを覚えています。
CX-5は2017年にフルモデルチェンジを行ったため、初代の初期モデルである2012年式はさすがに値落ちが進んでいるものの、それでもXDの4WDは走行距離が5万km未満のものだと車両本体価格で150万~220万円。なかなかのお値段です。
その後登場したアクセラやアクセラスポーツ、CX-3なども、中古車相場は比較的高値で推移しています。相場が高値ということは前オーナーの下取り額が高値だったと推測できますし、今中古車を買っても数年後に高値で売却できる可能性があります(相場はいつどんなふうに動くかわからないので、あくまで「期待」ですが)。
「マツダ地獄」から脱却できた理由のひとつは健全な販売方法。そして何より、SKYACTIVや魂動による商品力のアップがあることは疑いようのない事実でしょう。
商品力が高まったから値引きがなくても新車が売れる。そして中古車価格が高くても「欲しい」と思う人がたくさんいる。とくに定価がない中古車は市場での需要と供給のバランス=人気で相場が決まるため、人気がなければ一発で相場が下がります。中古車相場が高値で推移しているということは、それだけ多くの人が「マツダ車に乗りたい」と考えていることを証明しています。
もちろん未来のことは誰にも分からないので現在の相場の動きはあくまで未来の期待値ですが、愛車を手放すときに健全な価格が付く可能性が高ければ、安心してクルマを買えます。マツダにはこれからも魅力的なクルマを造り続けてほしいですね。
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