走り込めば走り込むほど、車体が小さく軽く感じられる

 スタートボタンを押すと、野太い排気音が飛び込んでくる。かなりの迫力だ。

 それもそのはず、搭載されるエンジンは4.0Lの直噴V8DOHCツインターボで、最高出力605馬力、最大トルク700Nmを叩き出すのである。605馬力ですよ奥様。大人しい典型的なアウディ顔のハッチバックが700Nmですよダンナ。いったいどうなっているのでしょう。

 試乗会場は恒例の大磯ロングビーチ。今の姿からは想像も出来ないが、ここのホテルはその昔、大変な賑わいだったのだ。私も不適切な異性関係を構築するために往時は有効利用したものだ。大磯プリンスは西武グループの中でも“特別”な位置付けにある面白いホテルで、西武鉄道、国土計画、西武不動産、プリンスホテル……と経営母体がコロコロと変わっている。

 とまれ、このスーパーカーでホテル近くの道をトロトロ走っても仕方がない。箱根の山に持ち込んでみよう。目指すは箱根ターンパイクである。いまはマツダがネーミングライツを持っている。対向車に気を付けて、安全運転を心がけましょう。

 さあさあ、ターンパイクでのRS7。

 全長5メートル超え、重量2トン超えの巨体が、ヒラリヒラリとコーナーを抜けていく。これは気持ちが良い。走り込めば走り込むほど、車体が小さく軽く感じられる。

 ターンパイクを上から下まで往復した頃には(ここ片道料金なんですね。出る時に下でもう一度料金を取られたので泣きました)、A4くらいの大きさのイメージになっている。実際は大きなクルマであるのに、クルマの四隅に神経が行き渡り、しっかり把握できるような感覚がある。

 アクセルをガツンと踏めば、瞬時にドカンと応えてくれる。

 重量級ボディを受け止めるブレーキも強力で、安心して踏み込める。

 ややオーバースピードかな……と不安な速度でコーナーに侵入しても、すべてクルマが「何とかしてくれる」。電子制御の介入はかなり早めで、腕に覚えの有るドライバーには些か物足りない部分があるかも知れない。私のように“下手なくせに飛ばす”人種には持って来いである。RS7は、言うなれば「うちのごはん」的なクルマである。

 しかしアウディも凄いクルマを作ったなぁ……決してゴツゴツしていないから、「スポーツカーなんて乗りにくいからイヤ!」と言う奥様のいるご主人は、黙って買ってしまってもバレないかも知れない。お金さえあれば。

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