みなさまごきげんよう。
フェルディナント・ヤマグチでございます。
今週も明るく楽しくヨタから参りましょう。
トライアスロン仲間である持田君の会社「9GATES」が、福岡は大名に「Co-work & Share. H」なるものを開いたので、お祝いがてらトークライブに出てきました。
スタートアップの企業や、支店を構える程の規模が必要でない会社の地方拠点、或いは個人事業主やクリエイター等、コストは抑えたいけれどもダサいのはイヤ。しかもオフィス環境は整っていて欲しい、というワガママな需要を満たしてしまおう、というのがコンセプトです。基本的にエッジの利いた方々の利用が多いのでしょうから、新たなるコミュニティの発生も期待できそうです。
なるほど確かにカッコ良い。こんな所で働けたら、そりゃクリエイティブな仕事が出来るというものです。しかし凄いの作ったねぇ。
トークショーは、司会者やコメンテーターとして活躍する福岡では知らぬ人のいない大御所、華世姐こと山本華世さんとの対談でした。華世姐さんは大変に迫力のある方で、ほとばしるオーラに気圧されながらの対談となりました。まだまだ修行が足りんと痛感いたしました。
華世姐さんは地元でカラオケ店も経営されているとのこと。こんど歌いに行ってみよう。
当日は当然のように二次会、三次会と流れ、宴は延々4時過ぎまで続きました。それでも翌朝は7時半に起き出し、キッチリ朝食もとって、博多の仲間と合流して大濠公園を軽く走って来ました。こうなると体に良いのか悪いのかよく分かりません。
殆ど寝ないで走ったので、妙にハイになっています。ボカシの中の目は完全にイッています。
こちらは六本木をジャックして行われたホリエモン祭。娘が彼のファンで、どうしても行きたいとグズるので(教育上どうなのかと一抹の不安を覚えながら)、一緒に行ってきました。しかしいざ出かけてみると、これがまた実に面白い。幻冬舎の見城さんとの対談などは、非常に刺激的で勉強になりました。グズってくれた娘に感謝です。
15分刻みで次々とゲストが入れ替わる怒涛の対談ラッシュ。やっぱり外に出て、実際にいろんなものを見聞きしなくちゃダメですね。
今週は南へ北に慌ただしいですが、北海道は旭川に行ってきました。小、中と9年間も同じクラスだった同級生の田中富郎君が、脱サラして美瑛町で農家になったのです。
見渡す限りの雪原。雪に覆われていますが、これ、全て彼の田畑です。
農業研修生なる制度を使って農業を基礎から学び、更に地元の“親方”に地域のしきたりを叩き込まれて3年間。いまでは立派なお百姓さんです。
北海道には来る筈のない台風に見舞われたり、時期外れの降雪でハウスが倒壊したり、次々と”想定外“が襲いかかる厳しい仕事ですが、地域に溶け込み、家族と共に収穫の喜びを分かち合い、その上で利益もキチンと上げている。50を過ぎてからの大いなる決断は、並大抵の覚悟では無かったでしょう。
こちらはトマト用のハウス。昨年秋に降った季節外れの雪で倒壊したものの、地元の方々の協力で、その日の夕方には資材を調達して再建したのだとか。良い意味での「ムラ社会」が生きているんですな。
雪が溶けたらまた遊びに来ましょう。富郎!頑張れよ!
という訳でボチボチ本編へと参りましょう。
今回お届けするのは、毎年恒例JAIA主催の輸入車イッキ乗り大会リポートです。
「毎年タダで外車に乗せてくれる親切な団体」としてその名も高いJAIAですが、正式名称は「日本自動車輸入組合」と言いまして、その目的は「輸入取引の秩序を確立し、かつ組合員の共通の利益を増進するための事業を行い、もって自動車の輸入貿易の健全な発展を図る」、と何やら厳しいものであります。
“組合員の利益を増進する”んですね。組合員とは即ちインポーター各社のことであります。こうしたイベントはもちろんですが、よりガイシャが売れるよう、関係省庁への働き掛け、英語で言うと「lobbying」ってヤツも行っておられるのです。
我が国は自動車輸入関税こそゼロですが、独自の燃費基準であるJC08など、アチラからすれば、「非関税障壁じゃんそれ!」と目されてしまう微妙なファクターが結構多いですからね。軽自動車の規格そのものが「不公平だ」と騒がれたりもしています。
日本からすれば、「お前らの努力不足だろバーカ」という話なのですが、それを言ってしまうと身も蓋もない。不毛な水掛け論に終始してしまいます。その辺りを(ガイアツなども適度に利用しつつ)、目立たぬように調整しておられるのです。決して単なる親切団体では無い、ということです。
で、今回試乗したのは、ジャガーにポルシェにアウディにコルベット。シメにはランボルギーニという、障壁など殆ど関係ない乱暴者にまで乗せて頂いて、国産車では決して味わえない「ガイシャの魅力」を堪能して参りました。
これは「羊の皮を被った狼」
まずはアウディのRS 7 Sportback performanceから。
RS7は、2010年に登場した、A6をベースにした5ドアハッチバックモデルであるA7のハイパフォーマンス版である。開発及び製造は、アウディの100%子会社である「Audi Sport GmbH」により行われている。
Audi Sport GmbHは、アウディのモータースポーツを仕切り、またRSシリーズやR8などの特別なハイパフォーマンスモデルを担当する、立ち位置としては、ベンツのMercedes-AMGや、BMWのBMW Mと同様の会社である。同社は昨年末、30年来使用してきたquattro GmbHから現在のAudi Sport GmbHに「ブランド力の向上を目指して」社名変更されたばかりである。
さて、アウディ RS 7 Sportback performanceだ。
まずは外見から。昔はよく、「羊の皮を被った狼」などと言ったものだが、このクルマは現在世界一その表現にマッチするクルマと言える。大きな羽が生えているわけでもなく、これ見よがしなエラが切られているわけでもない。フロントグリルとテール部分に、控え目にエンブレムが取り付けられているだけで、特段クルマに興味のない人からすれば、「ちょっと大きめのアウディのセダン」くらいにしか見えないだろう。
ドアを開ける。印象的なデザインのバルコナレザーで仕立てられたRS専用のシートは、横Gに耐えるため脇部分のサポートが大きくせり出している。このクルマが「タダモノではない」と感じる瞬間だ。
シートに座る。
下側がフラットになった異型のステアリングホイールと、カーボンを強調したパネルが“らしさ”を演出している。だが、とりわけスーパーカー然としている訳ではない。“アウディらしい”上質で控え目なデザインだ。RSでもやっぱりアウディはアウディなのだ。
走り込めば走り込むほど、車体が小さく軽く感じられる
スタートボタンを押すと、野太い排気音が飛び込んでくる。かなりの迫力だ。
それもそのはず、搭載されるエンジンは4.0Lの直噴V8DOHCツインターボで、最高出力605馬力、最大トルク700Nmを叩き出すのである。605馬力ですよ奥様。大人しい典型的なアウディ顔のハッチバックが700Nmですよダンナ。いったいどうなっているのでしょう。
試乗会場は恒例の大磯ロングビーチ。今の姿からは想像も出来ないが、ここのホテルはその昔、大変な賑わいだったのだ。私も不適切な異性関係を構築するために往時は有効利用したものだ。大磯プリンスは西武グループの中でも“特別”な位置付けにある面白いホテルで、西武鉄道、国土計画、西武不動産、プリンスホテル……と経営母体がコロコロと変わっている。
とまれ、このスーパーカーでホテル近くの道をトロトロ走っても仕方がない。箱根の山に持ち込んでみよう。目指すは箱根ターンパイクである。いまはマツダがネーミングライツを持っている。対向車に気を付けて、安全運転を心がけましょう。
さあさあ、ターンパイクでのRS7。
全長5メートル超え、重量2トン超えの巨体が、ヒラリヒラリとコーナーを抜けていく。これは気持ちが良い。走り込めば走り込むほど、車体が小さく軽く感じられる。
ターンパイクを上から下まで往復した頃には(ここ片道料金なんですね。出る時に下でもう一度料金を取られたので泣きました)、A4くらいの大きさのイメージになっている。実際は大きなクルマであるのに、クルマの四隅に神経が行き渡り、しっかり把握できるような感覚がある。
アクセルをガツンと踏めば、瞬時にドカンと応えてくれる。
重量級ボディを受け止めるブレーキも強力で、安心して踏み込める。
ややオーバースピードかな……と不安な速度でコーナーに侵入しても、すべてクルマが「何とかしてくれる」。電子制御の介入はかなり早めで、腕に覚えの有るドライバーには些か物足りない部分があるかも知れない。私のように“下手なくせに飛ばす”人種には持って来いである。RS7は、言うなれば「うちのごはん」的なクルマである。
しかしアウディも凄いクルマを作ったなぁ……決してゴツゴツしていないから、「スポーツカーなんて乗りにくいからイヤ!」と言う奥様のいるご主人は、黙って買ってしまってもバレないかも知れない。お金さえあれば。
「そこのけそこのけ コルベットが通る」
お次はRS7とは真逆のクルマ。羽は立っているわエラはそこかしこに切ってあるわ、威力十分迫力満点。トランプ大統領の国からやってきた、シボレーのコルベット グランスポーツ クーペである。
ご覧くださいこの外見。もう何も言うことはありません。
「雀の子 そこのけそこのけ コルベットが通る」
現代に一茶が生きていれば、そう詠んだであろう(詠んでいないかも知れない)世界屈指の押し出しグルマ。見る者を圧倒し、周囲のクルマを威圧し、乗る者の自尊心をブーストする魔性のアメリカン。
直線番長に決まっていると、大した期待もせずにこちらもターンパイクに持ち込んでみたのだが、さにあらん。最新のコルベットは、細やかな神経をも持ち合わせた“現代のアメリカン”なのである。
エンジンこそ6.2リットル(!)と巨大だが、アルミを多用して重量は僅か1.6トンと軽量である。前後重量配分はほぼ50:50と理想の数値を実現しており、ドロドロドロと爆音を撒き散らして街道を流すのは昔の話。最新のコルベットは峠も十二分に楽しめるのだ。
コーナリングスピードは非常に速い。アメ車というとグニャグニャに柔らかい足回りを想像しがちだが、このクルマは異様に硬い。「アメ車をナメるな!」と言わんばかりに法外に硬い。硬くて低いからロールしない。ペタンと路面に張り付いたまま、カートのような姿勢でコーナーを抜けていくのだ。
速くて気持ちは良いのだが、あまりに硬いので長時間飛ばすと辛くなってくる。ダイヤルを回してコンフォートモードにしてみたのだが、残念ながら硬さは大して変わらない。ゴツゴツと突き上げ感があるし、跳ねて欲しくない場所で跳ねることもある。しかしそれらを全て笑って許せるような魅力がコルベットにはある。
あらゆる欠点を、「だってほら、コルベットだから(笑)」と言って済ませてしまうようなチャーミングな部分が、このクルマには備わっているのだ。
もちろんメイド・イン・アメリカで、車両は全てケンタッキー州にあるボウリンググリーンの最先端工場で組み立てられている。「熟練のスタッフが最高水準の素材と工程を駆使して作り上げています」とのことだが、全員が“合法滞在”のアメリカ人なのだろうか。
トランプ大統領が突然ブチ切れてくれないだろうか
走っている姿もさることながら、停止しているときの居住まいがまた良い。
特に前にガバッと開くエンジンフードを開けた時の姿がたまらなくカッコイイ。
巨大な排気量のエンジンだが、覗いて見るとそれほどデカくはなく、OHVのV8は、重量配分に気を使い極限まで後ろに追いやられている。
リアのハッチを開けると、意外なほど広い空間が広がっている。ゴルフに出かけるのはもちろんのこと、前後輪を外せばロードバイクを乗せることもできそうだ。こんなクルマでトライアスロンの大会に出かけたら、それはバカみたいに目立つだろう(笑)
全高はわずか123センチ。グワッと広く、ペタンと低い。
重いようでいて、実は軽い。
トランプ大統領が突然ブチ切れて、「アメリカのクルマは自動車税をゼロにしろ!」とか「一台あたり100万円の補助金を出せ!」とか言い出さないだろうか。6リッター超えのクルマの自動車税額は、年間11万1000円ですからね。まあこの手のクルマを買う方は、そんな小銭を気にしたりはしないのだろうが。
と、思ったよりも長くなってしまったので以下次号。
ATもいいけど、両手足を駆使して操作するMTもまた楽しい
こんにちは、ADフジノです
数週前のあとがき(「我々はそんなに性格悪くないですよ」)でトヨタCH-Rの開発者にうかがった話を少し書いたのですが、その際に、マニュアル仕様があると「運転が楽しいだけでなく、脳トレよろしく高齢者のアクセルとブレーキの踏み間違え予防にも効果があると思うのですが」と書いたところ、読者の方から以下のようなコメントが寄せられていました。
「フジノさん。車メーカーで開発を担当している者です。踏み間違い事故の報道が盛んになった事もあり、(高齢者が)MTなら踏み間違いしないと言う声が大きくなっているように感じますが、実際はMTでも同じように踏み間違い事故は起きます。事故件数を調べて頂ければわかると思いますが、販売数の比率以上にMTでも踏み間違い事故は起きていると言う数字があります。その他にも、実際は若年者の事故数も多い事も、多くの方には正しく知られていない点ですが、思い込みで語りあってもポイントを外しかねません。世論が誤ってしまうと正しい対策に繋がらない危惧も生じます。ご一考ください」
私としては、ATが危険でMTが安全などというつもりはまったくなかったのですが、「脳トレよろしく~」と書いたことからそのような誤解を生んでしまったのかもしれません。いずれにせよ、せっかくの機会ですから、少しペダルの踏み間違い事故について調べてみました。
公益財団法人「交通事故総合分析センター(ITARDA)」の運転操作の誤りに関する交通事故統計データ(平成16年~25年の10年間)によると、24歳以下の若年層と、75歳以上の高齢者に操作不適事故が多いのだそうです。若年層の場合は、まだ運転に不慣れであることも要因として考えられるかもしれません。またペダルの踏み間違い事故というのは走っているときというよりは、高速道路のサービスエリアや店舗の駐車場など「道路以外の場所」で「発進時」に起きる可能性が高いのだそうです。さらに、高齢者の場合は「後退時」の事故割合も高くなっています。詳細なデータは、ITARDAのホームページに公開されていますので、興味のある方はこちらをご覧ください。
ところで、懸案のMTとATの比率に関するデータですが、ITARDAの担当者によると近年はAT比率が圧倒的に高く、警察からもトランスミッション別の事故データは公表されておらず、おそらくデータ収集もしていないのではないかとのことでした。ものは試しに国産乗用車の新車登録台数などを集計している日本自動車販売協会連合会(自販連)に、最新のAT:MTの販売比率について問い合わせをしてみたところ、最新の2015年のデータを教えてくれました。約10年前と比較してみると…。
平成18年 96.8%:3.2%
平成27年 98.4%:1.6%
まあ、半分になっていますから激減しているとも言えますが、そもそも数が圧倒的に少ない…。MT車はもはや絶滅危惧種といって差し支えないでしょう。
そんなわけで私の本意としては、ATとMTのどちらが安全なのかをつきつめたいわけではなく、右手右足だけでリラックスして運転できるATもいいのですが、両手足を駆使して操作するMTにはまた別の楽しさがありますよと。そしてこれだけATが主流の日本において、自動車メーカーにはいまも1つの選択肢としてMTを設定したいと考えている方もいらっしゃる、ということをお伝えできればと思った次第なのでした。
ちなみに今回のJAIA試乗会では、当連載の試乗車はフェルさんの希望により2人乗りのスポーツカーが多かったこともあり、そちらの助手席はY田さんにお譲りすることにして、私は以下のようなモデルをメインに試乗してました。いまやハイパワースポーツカー界でも、人間が操れる限界を超えた変速スピードが求められるためMTは絶滅危惧種。フェルさんが試乗したモデルにも1台もマニュアルは登場しません。そんな中、わざわざ日本市場に追加モデルとしてMTモデルを導入するルノー・ジャポンって、洒落ているなと思うのです。
ルノートゥインゴに追加されたマニュアル仕様。1リッターエンジンと5速MTの組み合わせ。ポルシェ911と同じRR駆動で、お値段なんと171万円! いつもの道が少し楽しくなります
この記事はシリーズ「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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