いい加減にしろ!と叱られそうですが先週末もスキーに行っていました。
今回は人工雪がメインの近場のスキー場へ。しかし折からのゲリラ大雪で、天然のパウダースノーも降り積もり、期せずしてバックカントリーまで楽しむことが出来ました。やはりスキーは楽しい。

驚いたのは今回一緒に滑りに行った若い衆が「マヨラー」だったことです。彼、あらゆる食べ物にマヨネーズをかけるのです。

お好み焼きはもとより、スパゲティやピザにマヨネーズをかけるのは当たり前で、白いご飯でも「マヨネーズだけで三杯はいけます」と。某有名ラーメン店で「マヨネーズ下さい」と言ったときにはさすがにフザケンナと怒鳴られたそうですが。

クボタの取材に行って来ました。
クボタと聞くとトラクターやコンバインなど農機のイメージが強いのですが、実は日本一の水道管メーカーでもあるんですな。そういや前社名は久保田鉄工でしたものね。今でも売り上げの4分の1は水と環境関連のビジネスなのだそうです。エンジンを外販していることも存じ上げませんでした。いや、勉強になります。


さてさて、ヨタはサッと切り上げて本編へと参りましょう。ホンダのコンパクトサイズミニバン、フリードの開発者インタビュー続編です。
ホンダの米国法人であるアメリカンホンダが絶好調である。
2016年の総販売台数は前年比3.2%増の163万7942台で、過去最高を2年連続で更新した。去年アメリカで一番売れたホンダ車は新車が投入されたシビックで、その数36万6927台である。ドル箱のアコードは34万5225台と、些か振るわなかった。
CR-Vもよく売れていて、こちらは3.4%増の35万7335台。やはりアメリカ人はライトトラックが好きなのだ。
で、今回取り上げているフリードは……残念ながらアメリカでは売っていない。彼の国に於いては、フリードはコンパクトに過ぎるのだろう。オデッセイも、アメリカではご当地仕様の大型版を売っているのだ。
小型のクルマでも要求事項は多い。アレも欲しいしコレも欲しい。さりとて重くなっては困るし、何しろ“ホンダのクルマ”だから走りに関して手を抜くわけにはいかない。そしてフリードの走りは、「ミニバンにしては」という言葉を抜きにしても評価できる程の仕上りである。今回はその辺りを伺って行こう。
お話を伺うのは、フリードの開発責任者、四輪R&Dセンター LPL 主任研究員の田辺 正さんである。
「あれ?シミュレーションと違うじゃん、ということはよくあります」
F:先日日産のセレナの取材に行って、最近はクルマを設計する際にコンピューターが大活躍で、例えば実車を作る前でも、かなりの部分をCAE( Computer Aided Engineering:コンピュータシミュレーションによる解析)で事前に知ることが出来ると伺いました。ホンダでも同じようにCAEを存分に活用しているのですか?
田辺さん(以下、田):使っていますね。我々もすごく活用しています。でもまだ、実際にクルマに落とし込んでみると、あれ?シミュレーションと違うじゃん、ということはよく有りますね。そこら辺は他社さんも同じじゃないですか。これはまあどこの自動車会社に聞いても同じ返事になると思いますけど(笑)
F:そうですか(笑)
田:「想定外だった」というのはよくありますよね。想定外をどう想定するかというのは、もう禅問答みたいなものなのですが、やっぱりやってみないと分からないんですよ。
経験上、ここまでやっておけば大丈夫だろう。まさかこれ以上は外から力はかからないだろう、と思って設計していても、実際走らせてみると、あれ、こんなふうに力が入ってくるんだというのはよくある話です。こればかりはね。作ってみて、実際に走らせてみないと分からない。
F:実際に走らせないと、なるほど。
田:もちろん、だいぶ予測は当たるようにはなってきてはいますけれども。
F:田辺さんはもともと何屋さんなんですか。ご専攻はメカですか?
田:私はインパネ設計からこの会社に入ったんです。中途入社です。
F:えー?田辺さんの所属は研究所ですよね。あそこは純血主義なのかと思っていました。中途の人もいるんですね。
田:いえいえいえいえ。研究所に中途組はたくさんいますよ。特に私が研究所に入ったときは、だいたい4割近くは社外の血が入っていましたね。
F:ホンダ本体はどうですか。技研工業の方は。
広報女性:何がですか?
F:中途入社です。こちらにはあまり居ない?
広報女性:技研工業も最近多いです。何割とはちょっとお答えできませんが、中途採用募集は結構かけています。広報部にもいますし、営業にも来ています。前職はもちろん自動車関係の方が多いですが、まったく違う業種から来る方もいらっしゃいます。
田:それ私のことね(笑)。私はもと鉄屋です。新日鉄(現在は新日鉄住金)。
一同:えー!シンニッテツ!
「いえいえ。そんなセコい真似はしませんよ」
F:するとやはり自動車用の鋼板を作っておられて、やり取りのある自動車会社に。
田:それがまた自動車とは全然違う部署で……。新日鉄ではプラント設計をやっていました。例えば圧力容器の設計とかですね。有限要素法(数値解析手法の一種)を使ってCAEで。その圧力容器も、普通の圧力容器とはちょっと違っていて、内径が200ミリで、肉厚が300ミリぐらいあるすごいやつなんです。
F:内径200の肉厚300ミリ。超高圧用のお釜ですね。凄いな。
広報女性:ちょっとあの……できれば当社のクルマの話を……。
F:はい分かりました。クルマの話ですね。
田:超高圧、超高温。2000度、2000気圧の圧力容器です。それも多層円筒といって、材料も違うものを組み合わせていくんです。焼きばめ、冷やしばめを繰り返して。
F:熱膨張を利用してはめ込んでいくわけですね。しかしそれ、どんな用途に使うんですか。人造ダイヤの生成とかですか。
田:セラミックスの焼結だとか、異金属同士の接着とかですね。
F:面白いなー。実にいい話です。ねえフジノさん。
ADフジノ:いい話なんですけど。クルマの話に戻して下さい。
F:あっそう……。それじゃまあ……。
今回は2列シート仕様のフリード+に試乗させて頂いたのですが、実に使い勝手が良いですね。リアゲートがあそこまで低いと、本当に使いやすい。でもその分ゲートそのものが大きくなっているから、開く際に気を使うことになります。
ホンダの地下駐車場では、見事にギリギリの位置で開きましたが(「ホンダらしい走りとは何か?」参照)、守衛さんが「35番に停めてください」と駐車位置をピンポイントで指定してきたので、こりゃフリードのために車停めの位置を変えたのかな、と疑ってしまいました(笑)
田:いえいえ。そんなセコい真似はしませんよ(笑)。あのような低いドア位置は、クルマを道具としてとらえている人にとってみれば、非常に使い勝手のいいユーティリティーの1つだと思います。我々は「テールゲートの見切り」と言っているのですが、2列仕様と3列仕様では深さが違うんですね。約150ミリの差があります。
F:見切りが150ミリも違う。するとその分、リアゲートの長さも変わってくるのですか。150ミリ短くなる?
田:その通りです。3列仕様の方が2列仕様に対して短くなっています。逆に言うと、約15センチ床が低いんですよ、2列の方が。ボディーの骨格自体は共通ですが。
F:高さが違ってボディーの骨格自体が共通ということは、リアゲートの直下に骨が通って居るわけでは無いということですか。
田:2列シートも3列シートも骨は通っています。ですが骨の位置が2列シートの方は約150ミリ低いんです。
「実は、3列仕様より2列仕様の方が重いんです」
F:ゲート部分の骨の位置が150ミリ、つまりリアゲートの低さ分だけ異なってくる。すると2列シートよりも3列シートの方が剛性が高いということになりますね。それだけ開口部が狭くなる訳ですから。
田:いえ。ほぼ同等と思って下さい。そのままだったら確かに開口部の小さい3列仕様が高剛性ということになりますが、2列の方は部材を追加したりして剛性向上を図っていますので。まあ細かく数値で見ていけば、若干3列の方が高い剛性になりますが。
しかしそれは本当に微妙な差なので、お客さんには感じられないレベルです。よく「2列仕様の方が3列目のシートがない分軽いですよね」と聞かれるのですが、いやいや、それなりの骨格補強をしているので、実は2列仕様の方が重いです、とお答えしています。
F:なるほど。3列目のシートよりも補強のために追加した部材のほうが重いと。
田:重いですね。追加部材のほうが明確に重いです。
F:どれくらいの重量差が有るのですか?
田:10キロですね。3列目シートの重さがだいたい30キロ。
F:それよりも10キロ重いということは、2列仕様は補強のために40キロも使っていると。わずか15センチドアを大きく開くために、そこまで重くなるのですね。
田:もちろんゲート部分の補強だけではなく、それに付随する様々な重量増の要素があるのですが。まあ大枠で言えばそういうことになります。
F:なるほど。そこまでして剛性の確保をしていると。かくしてミニバンらしからぬ乗り心地が実現できた訳ですね。またトヨタのシエンタを引き合いに出して悪いのですが、乗り比べるとどのような差が出るのですか。開発した側からすると。
田:運転上の乗り心地は、やはりウチの方がしっかり感はあると思います。ですがトヨタさんの味付けと、ホンダの味付けは元々が違いますから。トヨタさんは、ちょっとふわふわした感じ、柔らかい感じ。そこが好きな人は、ウチの味付けが少し硬いと思われるかも知れません
F:ゴツゴツと感じてしまう可能性もある。
田:しかし高速道路でのしっかり感だったり、風に煽られた時の挙動や、ハンドルをちょっと切ったとき、レーンチェンジをした時の「より戻し」や「揺り戻し」のようなものは、ウチの方が感じにくいのではないかと思いますね。
F:しかしシエンタが出たときは驚きましたね。ホントにこの顔で売るの?と思いましたもの。あれを本当に売ってしまうトヨタってすごい会社だな、と。
田:デザインの奇抜さは負けたと思いました。負けたというか、余りにも方向性が違うので何とも言えないですが。
F:シエンタのデザインと比べると。フリードはぐっと地味に感じますよね。わりと普通のクルマ、普通のミニバン。
田:そうですね。
F:シエンタは1年先に出ましたが、あれを見て、デザインに関して何らかの影響を受けましたか。
田:無いです。
F:影響ゼロですか。まったく無い?
田:ゼロです。1ミリもありません。シエンタが出たときには、もう我々のデザインは固まっていましたから。クルマのデザインに於けるデザイナーの志向というのは、その時代時代で変わって行くものです。例えばフリードで言うと、ベースはやっぱりフィットなんです。
F:フリードのデザインはフィットの系譜。
田:そう。基本的な位置付けはフィットの兄弟です。エポックメーキングのモデルというのはどの会社にもありますが、ホンダで言うと大型はアコード。中型はシビック……まあシビックはいま日本では販売されていませんが……(編集部注:先日開催されたオートサロンで、日本でも今夏よりシビックシリーズ<ハッチバック・セダン・タイプR>が発売されると発表された)。そしてフィット。フィットの派生で言うと、ヴェゼルとかシャトルとかグレイスとか。その最後にフリードが来るんです。
「骨の中に骨を入れた」理由
F:フリードはフィットと共通プラットフォームという意味ですか。
田:いえ。そうではありません。フリードはフリード単体で作っています。どのクルマとも共有していません。
F:昨今はプラットフォームの共有が大流行ですが、なぜそうしないのですか。
田:まず1つ目の理由が、フィットからヴェゼルまではマックスで5人乗りということがあります。ところが我々のフリードは基本骨格が7人乗り。2人増える分で、骨格の造りがまるっきり変わってくる。当然、耐久性に対する考え方も変わって来ます。
それからもう1つ大きな理由は、フィットからヴェゼル、シャトルも含めて、ヒンジドア(蝶番式のドア)ということです。我々のフリードはスライドドアです。ヒンジドアとスライドドアって、フロアの作り方が全然違って来るので。
F:そんなに違いますか。
田:ああもう本当に違います。見た目が同じような格好のクルマでも、ヒンジドアとスライドドアでは、まったく作り方が異なります。衝突に対する考え方も違いますし。
F:衝突も、なるほど。
田:ヒンジドアのクルマは、ドアの下の方にサイドシルという柱がどーんと通るんです。ドアを開けると、幅の広い、バスタブの淵の部分のような土手があるじゃないですか。あの辺のことをサイドシルと呼ぶのですが、中にはぶっ太い骨が通っています。スライドドアのクルマにはあれが有りません。
F:なるほど。もともと床が高めのミニバンの入り口に土手なんか出来たら、乗り降りしにくくてしょうがなくなってしまう。
田:そう。乗り降りし難くなる。でもあの部分には頑丈な骨が必要です。どうすれが良いか。フリードの床にはスライドドアが通るレールが有るのですが、その部分の内側に骨が入っているんです。骨が入っているのですが、それを高くしてしまうと具合が悪い。ミニバンはやはりフラットな床が売りなので。
F:剛性を求めると柱が太くなり上に上がってきてしまう。それじゃ下に出せば良いかというと、最低地上高の問題が有るからそれにも限界がある。
田:そう。上にも行けない。下にも出せない。八方塞がりです。
F:それなると、横方向に太くするしか逃げ道がありませんね。
田:そう。横です。ですが横に平べったい柱を作ると、横方向は良いのですが、上下方向の力には弱くなってしまう。だからそこは知恵を使うしか無い。それじゃどうするか。骨の中に骨を入れたんです。
F:なるほど。骨そのものを強くした、と。これ、断面の写真は有りますか?記事に載せて差し支えが無ければ、ぜひ見せて頂きたいのですが。
田:うーん、広報用に撮った写真はないですね。そもそも柱の断面の写真をリクエストされることも滅多に無いので。
ADフジノ:そんな変な写真を見て喜ぶのはフェルさんくらいのものですよ(笑)
F:なんかイヤな言い方をするね。
田:クルマを真ん中からぶった切れば見れますけど、それはちょっと勘弁してください(笑)
F:トヨタはフリードを買ってぶった切っていますかね?
田:やっているでしょうね。トヨタさんだけでなく、みんなやっていますよ、それくらいのことは。
さあさあ、いよいよ盛り上がって参りました。
高温高圧エンジニアの田辺さん。フリードの開発秘話は次週へ続きます。
家族は増えずとも…収納性は重要です
読者のみなさん、こんにちは。編集担当のY田です。
前回の記事(「我々はそんなに性格悪くないですよ」)でもご紹介しましたが、フリードとシエンタ、ユーザーの用途や収納性を秤にかけての、シートアレンジなどにおける細かな選択肢の違いはなかなか興味深いものがあります。
ちなみに我が家は3人家族なので、これまでのクルマ選びの際、シートアレンジや収納性はそれほど気にかけていませんでした。ただ、最近では、「やっぱり収納って大切だよなぁ」と思うことがしばしばあります。
念のため言っておきますが、新しい家族が増える予定があるわけではありません。ただ、新しい“連れ”ができまして…。
写真に写っている、グリーンのヤツです。これ、ボルダリングマットでして、1m四方のサイズがあります。去年の夏、外岩デビューしましたので(それまではもっぱらインドアのジムで楽しんでいました)、それを機に購入いたしました。岩から降りる(落下する)際のクッションで、当たり前ですが、何度踏まれても黙って耐え、一言も文句を言いません。ここだけの話、同じ“連れ”にも、いろいろあるものです。
私の愛車はマツダ・デミオなのですが、収納性はそれほど高くないので、マット選びには苦労しました。マットは屋外で使いますので、当然汚れます。それを家の中で保管するとなると、もう一方の“連れ”が嫌がります。こっちは黙って耐えるタイプではありません。なので、リアシートを倒した状態でクルマの中に保管できるサイズのコンパクトなマットが望ましい。
ただ、なかなかないのです。そのサイズのマットが(折り畳み式のマットもあるのですが、諸般の事情で折り曲げ式を選択したこともあり…折り曲げ式はクセがつかないように保管時は広げておきたいのです)。
また、外岩を楽しむ際には、複数のメンバーで集って向かうのが一般的です。足代も割り勘にできますし。で、その際の「足」としても、わが愛車はちょっと…。例えばホンダ・フィットだと、分割式リアシートの片方を倒せば、折り畳んだ(折り曲げた)マットを縦に3人分積めますが、マイ・デミオではできません。フィットはリアが立っていますが、デミオは寝ているので、3枚重ねると上部が収まりません。
なので、2人で現地に向かう際にはいいのですが、3人となると他のメンバーのクルマに同乗させてもらうしかなく、(それはそれでラクという面はあるのですが)ちょっと心苦しかったりするわけです。いつもいつも、となると。
とまぁ、小さいグチを書き連ねましたが、収納性はさておき、デザイン重視でクルマを選んだのは自分ですし、デミオ、気に入っています。
ただ、子供は増えずとも、“連れ”は増える可能性がありますので、小家族でも収納性には要注意ということで。う~ん、何のことやら…。
この記事はシリーズ「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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