島 そう。でも何か分かっていて、こいつ人生楽しんでいるように見える、みたいな。まあ、開けたらサーフボードの1つも積んでいるかなと思うような。
F うーん、なるほど、なるほど。趣味の道具があって。
島 そう。何か楽しく生きているに違いない。友達がいっぱいいるに違いないとか。
F はいはい。スキーに毎週行くとかね、波乗りに行くとか。
若者の遊びを理解しようとしなかった?
島 そうそう。ホンダにはそういうイメージが90年代後半ぐらいまであったじゃないですか。でも、それ以降、商品企画をする人たちには、自分たちが何で世の中に支持されているのか分かっていなかったんじゃないでしょうかね。それまで造ってきた人たちが、あまりに楽しかったから自分たちで同じことをずっと続けちゃったと思いません?
F すごく思います。継承できなかった。でもこういう楽しみ方とか遊び方とかって教えられるものでもないじゃないですか。遊び人のおやじの子供は必ず遊び人になるとは限らない。一生懸命キャンプ連れていっても全然興味を持てない子供っていますよね。
島 そうですね。揚げ句、そういうの俺本当もう嫌だと言い出しかねない。
F おやじの付き合いでやっていたけれど、俺はゲームが好きなんだよという子だっている。うちの息子がまさにそうなんですけど(笑)。あんなに海だ、山だって連れて行ったのに、結局、ゲームやっていますからね。
島 ホンダでクルマを造っている人たちにも、多分、本当に違う種類の遊び、まさにキャンプでも海でもない、面白いことをやっている若者はいたと思うんですよ。でもそのときいたおやじは、そんなことをやってないでもっと海へ行けよ、山へ行けよと言っちゃったんだと思う。そうしたら本当に違う、新しい世代の面白さを持っていた人たちがスポイルされちゃったんじゃないかなと。
F 本当は今はスケートボードがイケてて楽しいのに、お前、そんなアメリカ人がやるようなことやめろと。
島 俺には分からないけど、お前らが面白いと思うんだったらやってみろと、若い世代に思い切って任せた方がいいクルマができるんじゃないかと。マツダにはそんな雰囲気があるような気がするじゃないですか。
イケてるホンダをつくったという先輩たちが、次の世代のホンダは俺がつくるものじゃないと思って後輩に渡さなきゃいけなかったんじゃないですか。
F おやじが偉大過ぎた。先輩がすご過ぎた。
島 自分がすごいと思い過ぎた面もあるでしょうね。
F 話は飛びますが、昨年末に『2016年版 間違いだらけのクルマ選び』を出版されましたね。この本は、日本で売っているクルマをほぼカバーしているのですか?
島 日本車は、ほぼカバーしています。
F 一番思い出深いといいますか、印象に残っているのはどれでしょう?
島 やっぱりスズキのアルトなんですよね。ホンダのS660やオデッセイもいいクルマでしたけど、アルトほどインパクトはなかったね。
F それは乗って、おう、やりおったかと。
島 見た目最初たまげましたよね。わっ、やっちゃったみたいに思ったけど。実物を見に行ったら、あれ、何か悪くねえなと。それで乗ったら、わあ、何かすげえちゃんとしている。軽量化してある。ほぼ1割減ですよね、車重。
F あの軽い軽でさらに。
島 そう。普通車で2トンから1.8トンになっても、それはすごいけど、まあ、できるかもねと。でもアルトは700キロが610キロになって。何じゃ、これはと思って乗ると、しかもカチっとしていると。さらに何だ、これはと。
F 本当にエンジニアリングとして優れている。
島 すごいなと思って。商品としてそれが価値にちゃんとなっている。
F なるほど。
島 だって絶対的に軽いから燃費はいいし、ターボなしでも十分走るし。高速道路を普通に走れる。気持ちよく走れるじゃんと。パフォーマンスはすごいですよね。やっぱり軽いって素晴らしいなと。S660って、何だかんだ言って800キロ以上あるでしょう。そうしたら200キロ差なんですよ。
F じゃあ実は、アルトの方が速いんじゃないですか。
島 速いんですよ。だってどちらも64馬力であるのは変わらないのに、200キロ差があるんですよ。ヨーイドンしたらもう圧倒的に速い。
F そうなんですか。それ動画で見たら超ショッキングですよね。あんなスポーツカーみたいなのが負けるなんて。乗んなきゃ、アルト。
島 乗ってください。逆にフェルさんのベストは何ですか。
F またマツダかと言われるだろうけど、やっぱりロードスターですかね。
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