米デトロイトで開かれた北米国際自動車ショーで幕を開けた2015年の自動車業界。それに先駆けてラスベガスで開かれた国際家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」ではクルマが陰の主役となり、自動運転技術などが披露された。今年は、どんなクルマが登場してくるのか。

 最近、マツダ偏重主義が過ぎる当欄の著者、フェルディナント・ヤマグチ氏が、『間違いだらけのクルマ選び』の著者でもある“正統派”自動車ジャーナリストの島下泰久氏に、今の消費者やクルマの未来について聞いた。

“正統派”自動車ジャーナリスト・島下泰久氏と不肖フェルの“異種格闘技戦”が繰り広げられた (写真:菊池くらげ、以下同)
“正統派”自動車ジャーナリスト・島下泰久氏と不肖フェルの“異種格闘技戦”が繰り広げられた (写真:菊池くらげ、以下同)

F どうでしょう、昨年1年を振り返って。

島下さん(以下、島) 何かこうね、柱が1本あった感じでもなく……。

F でも後半のとどめとして、やっぱりフォルクスワーゲン(VW)のディーゼル不正事件。自動車産業に本当に、いろいろな意味でインパクトを与えましたよね。

 ドカンと来た。まだちょっと、何だろうな、煙が残っているような感じじゃないですか。

F 煙が引いた後の。

 そう。余波が相当長引くんじゃないですか。

F そうでしょうね。いろいろな言い方ができるんですけど、パンドラの箱を開けてしまったというか。まあまあまあ、という部分(編集部注:実走行時に排出する大気汚染物質が排ガス基準を超えているケース)がVWだけに限らずあったわけで。じゃあ、あれもこれもとなると、もうディーゼル車が売れなくなる。ガソリン車も売れなくなるという。

 単純にVWグループの台数がどうなるんだろうって。台数が、例えば上がりはしないですよね、今回の件で。

F しばらくはね。

 そう。となったときに、あの巨大な、上ばかり目指して突き進んでいたところがどういう転換を図れるんだろうかと。

F そうですね。昨年、僕が書いた記事の中でも触れたんですが、ディーゼルに対するバッドイメージというのが、VWに限らずあって。特に日本人ってやっと石原(慎太郎・元東京都知事)さんのペットボトルシャカシャカ事件以降、そのアレルギーがとけてきて、何かディーゼルいいかもとなってきて。実際僕も何と生まれて初めてディーゼル(メルセデス・ベンツG350d)を買ったんですけれども。

 もう買った?

F 買いました! ただ今回の事件、ディーゼルを買おうかどうか悩んでいたユーザーの中には、やっぱりよくないのかなと思う人もいるかもしれない。

 特にVWの事件の直後はありましたよね。今はどうなんでしょうね。冷静になっているんじゃないかなという気もしないでもないですけど。

 これからイメージが悪くなるかもしれないと思うけど、目の前の経済的メリットなどを考えると、やっぱりディーゼルだよねと。

F 確かに。

 ヨーロッパの人はもう間違いなくそう思っているだろうと考えてるんですよ。いろいろあるけどさ、燃料代半分だよといったら、やっぱりディーゼル買うんじゃないかな。

F そうそう。あと走ってみるとちゃんと速い。この何ともいえない加速って。

 新鮮な。

F とても気持ちいいですね。とても気持ちいい。

 喜びがあるじゃないですか。

F 僕、BMW2シリーズのディーゼルにも乗ったんですよ(参考記事はこちら)。あれなんてびっくりですよね。こんなにいいと思わなくて。

 そう。だからまあ、結局ディーゼルは何となく……。

F 大丈夫ですかね。

 VWグループの問題に戻すと、VWブランドだけがすごい落ちている。みんなグループとブランドのことをあまりよく分かっていない。特に輸入車ビジネスってイメージもすごく大きいということを改めて実感しますよね。

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