「このシートアレンジは無いなと思いました」

F:問題?どのような問題でしょう。

:例えば小さなお子さんが二人いるファミリーでモビリオを買っていただいたとします。セカンドシートにチャイルドシートとか固定しますよね。すると3列目にアクセスしたいときに、例えばチャイルドシート1個だけだったら反対側のシートからいけばいいんですが、2つとも固定のチャイルドシートを入れていると、後ろにアクセスするときに1個必ず外さないといけなくなるんです。

 だからファミリーカーで、子育てど真ん中のご家族にどうぞと言って売っていたクルマが、実はちょっと使い勝手が悪いじゃないの、という声が有ったんです。

F:なるほど。前にやって一度痛い目に遭っている。

:そう。我々は1回やっているので。いろいろとお客さんの使い勝手上のネガも分かっているので。

F:それじゃシエンタのシートを見た時に、「お、あいつらやってるやってる。ニヤリ」って感じだったんですか。フリードの開発陣みんなでほくそ笑んだというか。

:いやそんな、我々はそんなに性格悪くないですよ(苦笑)。ですが少なくとも、子育てど真ん中でミニバンを欲しいというお客さんには、このシートアレンジは無いなと思いました。

 そういった立ち位置の違いがあるので、本当にサイズの短い、全長の短い、だけどちゃんとミニバンとして使えるクルマが欲しいというお客さんは、どうぞウチのを買ってくださいと言いたいです。


 大抵のエンジニアは、ライバル車のことに話を振っても、「あのクルマはここが良いんですよねー」とエールの交換よろしく誉めそやすことが多い。私はそれを、毎回ホンマかいなと思いながら聞いていた。

 ところがフリードの田辺さんは、ライバル車に対して対決姿勢を露わにし、対抗心剥き出しでアレコレお話し下さった。

 敵方のクルマの長所なんか聞きたくないんですよ。こういうホンネを伺いたいのです。

 正直者の田辺さん。インタビューは次号へと続きます。

 しかしこうなるとシエンタの方の反論も聞きたいなぁ。東西対抗ミニバンバトルとか、フェルがレフリーでやったら面白そうですよね。

 それでは皆さままた来週!

加熱する「コンパクトSUV」戦争

こんにちは、ADフジノです

フリードの開発責任者である田辺さんが冒頭に販売台数の話をされていましたが、以下が2016年の1月〜12月新車乗用車販売ランキングベスト10です。10モデル中なんと6つをトヨタが占めており、ハッチバックもセダンもミニバンも、車型を問わずトヨタの強さが如実にあらわれています。こうした中で、ホンダが気を吐くモデルがベスト10中唯一のSUVであるヴェゼルです。

1 トヨタプリウス 248,258台
2 トヨタアクア 168,208
3 トヨタシエンタ 125,832台
4 ホンダフィット105,662台
5 日産ノート 102,402台
6 トヨタヴォクシー 91,868台
7 トヨタカローラ84,770台
8 ホンダヴェゼル 73,889台
9 日産セレナ 73,502台
10 トヨタヴィッツ 71,909台

ヴェゼルはフィットをベースに開発された、クーペのようなスタイルが特徴のコンパクトSUVです。日産ジュークを火付け役として世界的な人気となったこのカテゴリーには最近ではマツダがCX-3を投入するなど、競争が激化しています。

ホンダヴェゼル。エンジンは1.5リッターのノーマルエンジンと1.5リッター+ハイブリッドの2種類。トランスミッションは前者がCVT、後者が7速DCT。いずれのエンジンにも2WDと4WDを組み合わせる

こんなおいしいマーケットをトヨタがみすみす見逃すはずもなく、昨年12月に発売されたのがC-HRです。これはプリウスにはじまったTNGA(Toyota New Global Architecture)を採用する第二弾モデルであり、ドイツのニュルブルクリンクを走り込んでテストを重ねるなど、走行性能を重視する欧州市場を意識して開発されたといいます。先日少し試乗する機会があったので、ここで紹介しておきます。

トヨタC-HR。グレード構成は、2WDが1.8リッターガソリン+ハイブリッド、4WDが1.2リッターターボ+CVTと、駆動方式によってエンジンが分けられている。両車の価格差は大きくなく、ハイブリッドのほうが約13万円高い設定となっている

試乗してみると、キビキビとスポーティというよりはしっとり落ち着いた印象でした。タイヤの大きな18インチ仕様もちゃんと履きこなしていて乗り心地はいい。2WDと4WDを比較すると、より安定感のある4WD+ターボ仕様の乗り味のほうが好みでした。

最新モデルですから、衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense P」を全車に標準装備しているし、燃費だっていい。そういう意味では大きな不満などないのですが、最近のトヨタは章男社長を筆頭にあれだけ走りにこだわっていると喧伝しているし、ニュルブルクリンクを走っていたC-HRもマニュアルモデルでした。「だからやっぱりCVTじゃなく、マニュアルでも乗りたい」と開発陣に問うたところ、彼らから以下のような答えが返ってきました。

「もっと、いろんなところでそう言ってください。日本では売れないという慣例から設定されていませんが、イギリス仕様にはすでに右ハンドルのMTモデルがあります。開発陣としては、日本の方にもぜひ乗っていただきたいと思っていますし、皆さんからの欲しいという声がたくさん集まれば営業サイドも動いてくれると思います」

C-HRの開発陣。(右から)開発主査の古場博之さん、一連のTNGAモデルのチーフエンジニアである小西良樹さん、シャシー設計を担当した志度彰一さん。実はC-HRは当初TNGAの開発とは別に動いており、本来はもう数年早く発売される予定だったこと。生産は日本仕様も欧州で行われはずだったが、日本のお客様のためには日本で、という社長の一存もあり、日本(岩手工場)で作られるようになったこと。デザインのアイデアスケッチは、先週のあとがきで紹介した新型カムリを手掛けた北米デザインスタジオCALTY(キャルティ)のIan Cartabiano氏の手によるものだということなど、たくさんの開発秘話をお聞きしたのですが、詳細はまたの機会に

ちなみに発売から約1ヶ月(2017年1月19日時点)の初期受注は、なんと約4万8000台、内訳はハイブリッド車が約3万7000台、ターボ車が約1万1000台だそうです。やはりトヨタの営業力は恐るべし。ぜひその勢いでマニュアルも販売して欲しいものです。運転が楽しいだけでなく、脳トレよろしく高齢者のアクセルとブレーキの踏み間違え予防にも効果があると思うのですが。