:いや、それは我々の企業規模なら良いですよ。我々なら一緒にしたほうがラクだし、トータルで見たら合理的だと思います。ですが彼らは違います。なぜって、タイだけでもドカドカたくさん売れるんですよ。そこにムダな物を付けたり、オーバースペックなものを供給するよりも、その地域に合わせて個別最適化した方が絶対に良いんです。何しろ作る台数が違うから。

F:なるほど。スケールの問題ですね。

:そう。トヨタの場合は個別最適化したほうがトータルで安くできる。

F:逆にマツダなら日本もタイも一緒のものを売ってしまった方が安上がりになると。

:そう。そこはもう、我々はそれしか生きる道がないから。

F:トヨタがマツダから何かを学びたいというところは、これから販売台数がどんどん減って、少量多品種化していくというよりも……。

:それよりも、これから増えていく電動化とか自動運転だとか、そういうものに対する人の配置を換えなくちゃいけないから、かもしれません。先に申し上げたように、トヨタには深い知見を持ったエンジニアがたくさんいる。そうした優れたエンジニアを、「こっちに移してここを効率化して、この人間をこっちに持っていく」ということをしないといけないのだと。

「彼らはやはり、リーディングカンパニーですから」

F:人材豊富なトヨタといえども、自動車の世界に訪れる変化によって、近い将来に人手不足で喘ぐことになるかもしれない、と。

:なりますよ。あれだけの適合開発をすべてやっていると、そこに相当な数のエンジニアが必要になるんです。この状態が続いたら、もう人なんか全然足らなくなりますよ。だから南武線なんじゃないですか(笑)。

F:出た! 南武線の吊り広告。いまやあの電車はギャンブル列車ならぬ、エレキの人材供給列車ですからね(笑)。

:ああなるわけですよ。だからこそその部分を効率化して、必要なところに人を配置換えして、ということだと思うんですけどね、彼らがやりたいのは。

F:トヨタでは3カ月前倒しで大きな人事異動がありました。そのときの章男さんの弁は、「このままではトヨタはマズい。死んだ気でやらないと本当に潰れちゃう」と取れるような、危機感に溢れるものでした。同じような危機意識はマツダにもあるのですか。それともアレはちょっと大げさだよなぁ、と思われますか。

:もちろんウチにもあります。このままじゃマズいと我々も思っています。ですが我々のマズい感覚と、彼らのマズい感覚は違うと思います。

F:それはどのように違うのですか?

:彼らはやっぱりリーディングカンパニーですから。日本の未来を背負っていますから。

F:あ、なるほど。

:だから自動運転ひとつとっても、「MaaS」といわれている、モビリティー・アズ・ア・サービスみたいな世界もやらなくちゃいけないし、レクサスみたいなオーナーズカーもやらなくちゃいけない。両方やらなくちゃいけない。やらなくちゃいけないことが山ほどあるわけですよ。

F:これから公共交通機関のようなこともやらなければいけないし……。

:そうそう。何しろリーディングカンパニーだから大変です。そこにグーグルだアップルだと異業種が、次のモビリティを真剣に狙ってワンサカ来ている。それに対する手も打たなくちゃいけない。これは彼らにとって、脅威であり恐怖です。でも我々はどちらかと言えばMaaSみたいな世界は放っておいてもええわけです。オーナーズカーだけ考えていれば良い。

F:なるほど。トヨタと比べれば、少しは気が楽ですね。

:とはいえ、そのオーナーズカーの市場は、ヨーロッパのエスタブリッシュされたブランドがたくさんある中で、どうやって生き延びていくんだということを考えなければいけません。下へ降りれば降りるほど、今度は絞め殺されてしまうので。

F:し、絞め殺される……。それはどういう……?

 マツダは誰に絞め殺されるのか。犯人は誰か。凶器は何か。
 痴情のもつれか物盗りか、はたまた怨恨か……。続きはまた明日、いや来週!

 どうです? けっこう頑張って続いているでしょう。
 私だってやるときはやるんですよ。はっはっは。