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:最初に本当に来たのは美祢(みね)の試験場(マツダ美祢自動車試験場、旧MINEサーキット)です。

F:章男社長自らが来たのですか?

:そう、章男さん自らが来られた。

F:マツダ側は誰が出迎えたのですか?

:ウチの方は社長と副社長、あとは私とデザインの前田(前田育男常務)。レーシングスーツを着て。あと虫谷(虫谷泰典・車両開発本部操安性能開発部主幹)も。

F:お! マツダの名物男ムッシー出た!(編注:こんな失礼な呼び方をするのはフェルさんだけです)これはもうフルキャストですね。あの人は足回りのセッティングのプロだし、前田さんはマツダ屈指の腕前で、とても速いと聞いています。

:うん。前田はマツダで最も速い。最も荒いけどね……。あ、これは書かんでいいよ(笑)。

F:前田さんは速いけど荒い。いただきました。ありがとうございます(笑)。

マツダ広報 小林嬢:あのですね。そういう社内のアレはですね……。

「藤原さんが、前田さんの運転はマツダで一番速い、と誉めてましたよ」とお伝えしたら、「藤原さんは俺の運転じゃなくてデザインを誉めてくれ」と仰っていました(実話)

レーシングスーツ姿で来た豊田章男社長

F:章男社長はレーシングスーツを着ておられた?

:着ていましたね。章男さんの他にも2、3名の方がレーシングスーツを着ていらした。試験場に来ていただいて、我々もロードスターとかFD(RX-7)とか速いやつをダーッと並べて。さあさあどれに乗ってもいいですよ、という餌をチラつかせながら、最初に虫谷が時速30キロでこうやって走ったんですよ。時速30キロでゆーっくりと(笑)。

F:え? ガンガン飛ばせるサーキットを走らせるのではなく、一般道風のコースで、あの虫谷さんの「骨太講座」みたいな体験をしてもらった?

:そうそう。フェルさんには三次で乗ってもらった、あれですね(笑)。

(どういうことか知りたい方は「マツダ 『人馬一体塾』」シリーズをどうぞ。第1回は「また広島へ!? 車内で受ける"骨太講座"」です)

:クルマはデミオ。現行のデミオ開発車両です。みんなレーシングスーツを着ているのに、30キロでこれですからね(笑)。


 マツダの社長副社長に、専務、デザイン本部長、そして足回りの統括責任者が待つ場所に招待され、レーシングスーツを身に纏い勇躍乗り込んだテストコース。サーキットにはロードスターから往年の名車FDまでがずらりと並んでいる。レーシングドライバーとして鳴らす章男社長のこと、腕がなるぜとクルマから降りたら、スポーツカーを素通りして、連れて行かれたのは一般道のようなテストコースだ。え? アレに乗るんじゃ無いの? いえいえまずはこちらからどうぞ。待っていたのはコンパクトカーのデミオである。

 肩透かしを食う、とはこのことだろう。


:2年半前、いや、3年くらいになるのかな。それがトヨタさんとの第1回目です。お互いに「良いクルマとは何か」を話そうと。そのために一緒にクルマに乗って、いろいろと話をしましょうと。我々の持っている様々なクルマに乗ってもらうために来ていただいたんですが、その前に例の虫谷の時速30キロコースに乗ってもらいましょう、と。


 マツダ側が大真面目なのは「骨太講座」をお読みいただいた諸兄や我々は百も承知だが、サーキット走行だと腕を撫して来た、レーシングスーツを着た章男社長のキョトンとした顔が目に浮かぶではないか。
 どちらも「良いクルマ」について真面目に考えて、準備してのこの構図だから面白い。

 いいところですが以下次号。明日の続きをお楽しみに!