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:変わっていません。EVの市場が5%から10%になったところで、しょせん我々が売れる台数は少ないことに変わりはありません。我々だけでEVに投資をして、それを回収しようとしたら大変なことになってしまいます。だから3年前に(EVは)要らないだろうと言いました。

 一方で、それとは別に、自動車メーカーには「規制」という大きな壁があるわけです。

F:規制、ですか?

:そう、規制。例えばアメリカにはカリフォルニアを中心にした州の中では、ある限られた台数、あるパーセントのZEV(Zero Emission Vehicle:排ガスを出さないクルマ)を売らない限り、その会社は罰金を払いなさい、という取り決めがあるんです。

編注:米国カリフォルニア州大気資源局(CARB:California Air Resources Board)が施行する「ZEV規制」のこと。このZEV規制は2018年から、アリゾナ、コネチカット、メイン、メリーランド、マサチューセッツ、ニュージャージー、ニューメキシコ、オレゴン、ニューヨーク、ロードアイランド、バーモントの各州にも適用される見込み。

罰金を払いながら売っちゃえば?

F:罰金を甘んじて払いましょう、「罰金上等」、という姿勢なら売っても良いわけですか? 排ガスを出す普通のクルマでも。

Y:相変わらずこの人は……。

:罰金を払うなら売っても良いです。

F:それじゃ例えばランボルギーニとかそういうところは無視し続けるのでしょうか?

:少量生産の会社は、当面は免除となっているんです。もともと大きな販売台数を持っているブランドは、もっと早い時期から規制が始まっていたのですが、我々のような中規模のブランドは、それが2018年から始まる訳ですね。

編注:ZEV規制の対象となるメーカーの販売台数は、2017年では年6万台以上で、トヨタ、日産、ホンダ、GM、フォード、クライスラーが当てはまった。ZEVの比率は14%だった。18年は2万台以上となり、フォルクスワーゲン、ダイムラー、BMW、現代、起亜、そしてマツダが対象に加わった。求められるZEVの比率も16%となった。これに加え、ZEVとして認められる車も、17年まではEV、FCV(燃料電池車)、PHV/PHEV、ハイブリッド車、天然ガス車、低排出ガス車が含まれたが、18年からはハイブリッド車、天然ガス車、低排出ガス車が認められなくなるなど、大幅に厳しくなる。

F:販売の絶対数が少なかったからお目こぼしがあった。

:そう。少し余裕を与えてくれていたのです。でも2018年からはついに規制の対象になってしまう。最初の1~2年は(ZEVの販売)比率が少ないので、フェルさんが言うみたいに「罰金上等」でも良いかも知れませんが、これから毎年毎年、うわーっと増えていくんです。会社としてキチンと対応しておかないと、大変な金額になってしまう。

F:そしてその罰金は車両価格に転嫁され、車両価格が跳ね上がり、イコール競争力の低下につながって……。

:その通りです。すると巨額の投資をしてZEVを開発したほうが良いのか、それとも罰金を払い続けるほうが良いのかという話になってくる。5年、6年、7年先と考えると、やっぱり造った方がいい、開発した方がいいとなった。

 ただ、1社で売らなくちゃいけないZEVの比率はそれほど大きくはない。それならば、1社ごとに独自で作るより、複数の会社で協力して、みんなでやった方が楽でしょうと。開発費は楽になるんじゃないですか、と。協力してクルマを開発して、それをそれぞれ自分の会社に持ち帰って各社で造ればいいじゃないですか、というのがポイントです。

F:なるほど。それが対アメリカの話。

:中国も細かいところは違いますが、やはり同じように規制があります。ヨーロッパにはCO2規制があって、2020年からガクッと厳しくなる。ヨーロッパにはフォルクスワーゲンを発端とするディーゼルスキャンダル、「ディーゼルゲート」が、2015年にありましたよね。