「良いですねぇ」と言いながらラインを撫で回すホンダの担当

「ホンダらしい乗り心地」と聞いて、読者諸兄はどのようなイメージを浮かべるだろう。若々しい。スポーティー。軽快。速い。軽い。小気味良い……。

 何れにしても、走りに関してマイナスのイメージを抱く人は少ないだろう。だが残念ながら最近のホンダ車は、その辺りが顧客に対して上手に訴求できていないように思える。

 果たしてこのクルマは、どのように仕上がっているのだろう。

 デザインは完全に前モデルの踏襲で、所謂キープコンセプトと言うやつだ。有り体に言えば代わり映えが無く、良し悪しは別として、パッと見に於いてシエンタのような驚きは皆無である。

「うーん、カッコは良いのだけど、大きな変化は無いなぁ」

 思わずそうごちると、担当の方は私をクルマの側面部分に連れていき、ボディ側面を指差して言った。

「サイドラインの複雑な造形を見て下さい。このラインをプレスするのは相当難しいのです。奇を衒うような、アッと驚くデザインではありませんが、こうした細部に拘ったデザインがホンダの信条です」

 なるほど。言われてみれば確かにプレスの難儀そうな複雑なラインである。担当の方はいかにも愛おしそうに「良いですねぇ」と言いながらラインを撫で回しているのだが、ここに萌える人がいったいどれくらい居るのだろう。

「相当プレスが難しい」というサイドライン。言われてみれば確かに複雑に線が入り組んだ、凝ったデザインである。スライドドアのガイドレールが、テールライトにまで食い込んでいる。
「相当プレスが難しい」というサイドライン。言われてみれば確かに複雑に線が入り組んだ、凝ったデザインである。スライドドアのガイドレールが、テールライトにまで食い込んでいる。

 ミニバンの試乗が続いている。先週は日産のセレナに乗っていた。

 プチ自動運転とハンズフリードアばかりが取り沙汰されるクルマだが、実は非常に操安に優れていて、その快適さに目を見張ったものだった。

 ではフリードはどうか。「ホンダらしさ」とやらをキチンと体現できているのだろうか。

 狭く上がり難い駐車場の出口を上る。外苑東通りに出て青山一丁目の交差点を通過。権田原の交差点を左折する。絵画館を囲む左回りのサークルを、グルっと一周してみる。

 なるほど。確かに高剛性ボディがもたらすカッチリ感がある。外苑の入り口から首都高に入る下りの右カーブ。これは気持ちがいい。ロールは決して小さくないのに、恐怖感はまったく無い。懐の深いサスペンションが、「もっと踏んでも大丈夫だよ」と囁いているような安心感がある。なるほど、“ホンダらしさ”を、と言った担当の方の言葉はダテでは無かった。

 都心環状線の外回りに入る。悪名高き首都高の継ぎ目に於いても、不快な突き上げは感じられない。無難に“いなし”て行く印象だ。走行時の騒音は意外なほど静かで、エンジン音、タイヤノイズ、風切り音のバランスが取れている。クラス最高の低いCD値(空気抵抗係数)を謳うだけあって、速度を上げてもミニバンっぽい風切り音が聞こえてこない。

 それにしても、このスパスパと小気味良く決まる変速はどうだ。フリードのハイブリッド仕様車の変速機は、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)が搭載されているのだ。

 この剛性感にこの変速。フリードも、「ミニバンの割には」という不均衡逆説表現を用いなくても十分に「走りの良いクルマ」である。

 所謂ミニバン的なグニャグニャ感は皆無と言っていい。コーナーではよく粘り、直線ではピシッと安定する。ひとつのクルマとして、実に上質に仕上がっている印象である。

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