覚えておいでかどうか。2008年にデビューした初代フリードは、職業不詳(敢えて言えばジョン・レノンの息子業)の小野太郎氏が、何やら甲高い声で叫ぶ珍妙なコマーシャルで話題となったクルマである。

初代フリード
初代フリード

 太郎氏の異母兄であるジュリアン・レノン氏も、実はこの少し前にホンダCITYのコマーシャルに登場されている。ホンダのレノンファミリーに対する肩入れ具合は尋常ならざるものがあった。同社の宣伝部には、どなたかジョン・レノンの熱烈なファンでも居るのだろうか。

 となればオノ・ヨーコさんがホンダのCMに登場する日もそう遠くはあるまい。彼女は最近歌手として本格的に活動しておられるのだ。あの調子でcmソングを歌った日には、我が国の広告界に強烈なインパクトを与えること間違いナシである。クルマが売れるかどうかは別として……。

 とまれ、CMは思い切りヘンだったが、初代フリードはマトモなクルマで、とてもよく売れた。普通のミニバンでは大き過ぎる。でも家族を乗せて荷物もちゃんと積んで走りたい、というディマンドに合致して、8年もの間、大したマイナーチェンジも施さず、ジワジワと静かに、しかし力強く売れ続けた。そして昨年秋に、満を持してのフルモデルチェンジと相成ったのである。

 最大のライバルであるトヨタのシエンタは、1年前に実に12年ぶりのフルモデルチェンジを実施している。その変貌ぶりはいかにも大胆で、某社のデザイナーをして、「あれを本当に売ってしまうトヨタがスゴい」とまで言わしめた(実話)、ギョッとするほどの“異相”だった。

 1年もの“後出しジャンケン”となったフリードはどのように変わったのか。宿敵シエンタに打ち勝つことは出来るのか。

 じっくりと試乗してみよう。


ライバル、シエンタとの緒戦は…

 今回はADフジノ氏が多忙だったため、不肖フェルが自らホンダの本社へ広報車輌を受け取りに行った。青山一丁目の交差点に聳える真っ白なホンダの本社ビル。二階の広報スペースで担当の方と待ち合わせをして、一緒に地下のパーキングへ向かう。

 どんなクルマでも、売り出しの初月はご祝儀相場よろしくカイが集中する。そして売上台数がドカンと増加する。

 フリードの売り指し初月は、宿敵シエンタに勝ったのだろうか。尋ねてみると、「残念ながら初月に勝つことは出来ませんでした。僅差だったのですが、シエンタさん、月の後半にググッと台数を伸ばしてきて……」とのことだった。

 フリードの発売は昨年の9月後半。10月の販売台数は9,153台で、シエンタの10,778台には残念ながら届かなかった。

 なるほど。トヨタの販売も相当気合が入っているようだ。

貸出前に懐中電灯で車輌の小キズチェックを行う。中指を立てて”不適切”なスラングを発している訳ではない。
貸出前に懐中電灯で車輌の小キズチェックを行う。中指を立てて”不適切”なスラングを発している訳ではない。

 鍵を受け取り、細かな車輌の説明を受ける。今回お借りするのは、自慢のハイブリッドモデルで、2列シート仕様のフリード+(プラスと読む)である。

 ちなみにこの+は、前モデルではフリードスパイクとして販売されていた。

「今回は完全なフルモデルチェンジ、プラットフォームもエンジンも全て刷新されています。乗り心地は“ホンダらしい”、非常にしっかりとしたものです。お楽しみ下さい」

 担当の方は、自信満々にそう仰る。

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