F:ははぁ。ターゲットを個人から家族へ。

:はい。最近、両親との同居率は少ないのですが、「近居率」というのが非常に増えていて。だいたい1時間ぐらいの範囲に、おじいちゃん、おばあちゃんがいて、週末に一緒にご飯を食べに行こうかとか、スーパーでお米が安かったから、ちょっと実家の分も買って帰ろうかとか。同居では無いのですが、あたかも一緒に住んでいるかのようなファミリーをイメージして固めていきました。週末どこかに遊びに行くときに、おじいちゃんとおばあちゃんがはどこに乗るのか。それはきっとサードシートに乗るよね、と。

F:じいちゃんばあちゃんは3列目ですか。2列目ではなく。

:調べるとほぼ例外なく3列目ですね。セカンドシートは、子供用のブースターシートがくくり付けられているから。そうすると簡単に畳んだりはできないでしょう。

F:あ、チャイルドシートが、なるほど。

おじいちゃんは孫を起こしたくない

:子供が2列目でスヤスヤ寝ているところを、おばあちゃんはどうやって乗り降りすれば良いのか。するとシートのレイアウトを考えなければいけなくなる。今回はサードシートからも操作できるスライドドアのスイッチを付けたのですが、あれは2列目で子供が寝ていても、後ろから開け閉めできるようにするためです。しかも2列目のベルトをシートに内蔵しているので、ピラーから伸びたベルトが通せんぼしないので、快適に乗り降りができるんです。

セレナ Xのインテリア
セレナ Xのインテリア
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F:すると車体の剛性を上げたというのも…。

:はい。2列目3列目に座る、お子さんやおじいちゃんおばあちゃんに快適に乗ってもらうためのものです。開口部の四隅を固めてあるのも、サスペンションの取り付け部分の剛性を高くしたのも、やっぱり乗り心地重視のためなんです。ファースト(シート)からサードまでごつごつ固くしていると、もうサードのおじいちゃんなんかは、くたびれてしょうがないんですよ。

F:今回はずいぶんクルマ全体がしっかりしたな、走りが良くなったな、と感じましたが、それは乗り心地のために剛性を上げた、副次的な効果だったということですか。

:そうですね。剛性を上げて、他社さんと比べても突き上げを少なくして、乗り心地重視で仕上げようと。ガチガチに固めて大きな上屋の動きがあると、子供は間違いなく酔っちゃいますので。子供が酔わないように。おじいちゃんが長時間乗ってもくたびれないように。なるべく上屋の動きを抑えてあげると。そこを両立させるのに今回は相当苦労しています。

F:重くしないで強くする。カチッとしているけれども突き上げは無い。この相反する要素は、どのようにバランスして行くのですか。何度も試作車を作って、トライ・アンド・エラーを繰り返すのですか。

解析技術が進歩しても、ノウハウは真似できない

:これはもう解析ですね。最近は解析技術がとても進化していますから。車体の剛性解析なんかは本当に進んでいます。どこにどういうパッチを当てるか。ハイテン(高張力鋼板)をどこの部分に使って、軽量化と剛性と強度、この3つをどうやってバランスさせて上げていくか。それをシミュレートした上で、PFロットに持っていく。

F:PFロット…?

:ああ失礼。プラットフォームロットの略です。1コ前のクルマを使って、いろいろ上屋を改造して、こことここをやれば解析上は剛性が高くなって効果があるよね、というのを実際の車輌でやってみるんです。それで、あ、確かに効果があるね、或いはあれれ、思ったより効果が出ないぞ、というのをフィジカルに検証して行くんです。

F:実際にやってみると、やっぱりシミュレーションの言うとおりだね、ということもあれば、「あれれ?」ということも有るんですか。どんなに解析技術が進んでも。

:有りますね。まだまだ100%解析だけじゃいけないや、というところもありますね。ですが前に比べると格段によくなりました。今のCADはすごいですよ。本当にすごい。

F:それはコンピューターそのものがすごいんですか。それとも解析ソフトの進化がすごいんですか。

:うーん。ソフトの進化もそうなんですが、やっぱり過去の蓄積ですね。例えばこの部品とこの部品の結合をどうするのか。溶接か接着かネジ止めか。いろいろ条件を当てはめていくというのがノウハウですからね。ああいうソフトって、使いこなすのが結構大変なんですよ。

F:それじゃ「日産はこの会社のソフトとこの型式のコンピューターを使って解析している」、とリークされたところで、簡単に真似できるということでは無いのですね。

:ああもう全然関係ないです。そこの境界条件を1個1個ちゃんと決めていくのがすごく難しいので。ウチと同じ機械とソフトを揃えても、同じ解析なんて絶対に出来ませんよ。できっこない(笑)。

F:いい話だなぁ。実に頼もしい。

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