前号(セレナ開発指令「ドリフのコントをどう防ぐ?」)ではセレナが“世界初搭載”というオートスライドドアを中心に、装備類の開発秘話を伺った。

 プロパイロットやオートスライドドア、或いは変幻自在のシートレイアウト等、確かにセレナに搭載されているギミックは先進的で興味深いものが多い。しかしこのクルマの本当の“キモ”は走りに有るのだ。実際に試乗すれば分かるが、最早「ミニバンの割には」、という前提条件を取っ払っても良いくらいのレベルに達している。

 腰高で開口部が大きくて“走り”を追求するにはどうしても不利なミニバンで、ここまで良質な走りが実現できた秘密はどこにあるのか。

 今回は、セレナの走りの部分を中心に話を進めていこう。インタビューに答えてくださるのは、セレナのチーフエンジニア、磯部博樹さんである。


「磯部さん!気をつけて下さい!」

「走りについてのアピールが難しい点が、僕らの悩みでもあるんです」
「走りについてのアピールが難しい点が、僕らの悩みでもあるんです」

F:セレナの走りの部分についてお話を伺います。試乗車をお借りして、首都高速に上がって、いくつかの狭いコーナーを抜けて「おぉっ!」と思ったのはセレナの走りが思いの外しっかりしていた事です。

 失礼ながら、どうせミニバンだから……とそれほど期待をしていなかったので、その意外感は相当大きなものでした。それなのに日産はセレナと言えば後ろのドアが二段階に開くデュアル・ハッチとか、横のドアのハンズフリーとか、プロパイの話ばかりで、肝心の走りを前面に打ち出してこない。これはどうしてでしょう。

磯部さん(以下、磯):走りのことももちろん大きくアピールしていきたいのですが、いまフェルさんが言ったような機能面での“大物”が並んでしまうと、どうしても走りの部分が霞んでしまうということは有りますよね。

 僕らもマスコミ向けの試乗会などで、記者さんのヨコに乗ったりしたら、走りを中心にお話しするのですが、なかなか記事には反映されなくて(苦笑)……。その辺は僕らも悩ましい部分なんです。

F:それじゃこの機会にセレナの走りをバンバン語っちゃって下さい。僕は聞いたことを包み隠さずバンバン書きますから。

:それは有り難いです。

広報佐々木さん:磯部さん!気をつけて下さい!

ADフジノ:本当に気をつけて下さい。「ここだけの話」、はこの人に通用しませんから……。

F:なに、大丈夫です。最近は業界の常識も身に付いて、すっかり丸くなったと言われていますので(笑)

ADフジノ:そんなこと誰も言ってません。みんな呆れてますよ。

F:セレナの走りの良さは、どこから来ているのでしょう。

:まず車体剛性をうんと上げて、ショックアブソ-バーもチューニングしています。チューニングと言うか、今回は径そのものを太くしていますね。

F:前モデルと比較して、足回りは全取っ替えと言えるのですか?

:サスペンション形式そのものは変えていませんが、ショックアブソーバーの径を大きくして、バルブをより応答性の良いタイプの物に替えたりしています。

 あと大きいのは車体ですね。セレナはミニバンですので、大きな開口部があちこちにあるクルマです。あの大きな開口部の四隅をちゃんと押さえておかないと、車体そのものがグニャグニャになってしまいます。だから開口部の補強を重点的に行いました。

F:なるほど。確かにミニバンは開口部が多くて、しかも大きい。

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