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 もっとも、私が言いたいのは、

 「給与生活者の子弟は保守的だ」
 「サラリーマン家庭で育った若者は反骨精神を持っていない」

 ということではない。
 話はもう少し微妙だ。

 たとえば、われらパパ社長の父親であった自営業者や農業者や中小企業経営者たちが、政権に対して批判的な人たちだったのかというとこれは正反対で、私の父親もそうだったが、昭和の時代において、多くの自営業者やフリーランスの働き手たちは、自民党の支持層だったからだ。

 思い出してみれば、30年前に私がパパ社長の原稿を書いた当時、野党支持層は、むしろ都市在住のホワイトカラー層に多かった。

 とすると、
 「給与生活者の子弟は自民党を支持する」
 と、言い切ることはちょっとむずかしい。

 私が言いたいのは、誰が保守的で誰が進歩的だとか、パパ社長が与党支持なのかとか、サラリーマン子弟の野党支持率の推移とかそういうガチな話ではない。

 私が言おうとしているのは、サラリーマン世帯で生まれ育った子弟は、ごく自然に身に着けたマナーとして世間の大勢に対して融和的にふるまうことが多いのではなかろうかといった程度の話に過ぎない。

 これは、政治思想とか反骨精神とかいったおおげさな話ではない。
 単なるマナーの問題だ。

 で、その単なるマナーの問題として、組織の中で生きる人間のもとで育った子供たちは、「コトを荒立てることをめんどうがる」傾向を持っている。
 対して、独立自営民の子弟たるパパ社長は、周囲に合わせて振る舞うことに苦痛を感じる性質を生まれ持っている。

 21世紀のわが国の労働人口の最大多数は、被雇用者で占められている。
 とすれば、その国の国民の国民性が、組織の一員として生きる人間のマナーを共有することは、もはや避けられない。

 一人ひとりの国民が、あえて不必要な自己主張をしないという、たったそれだけのことで、その国の民主主義の根本設定がかなり大幅に変更されてしまうことは大いにあり得る。

 年末だというのに、謎のような原稿になってしまった。
 今回は、特に結論を提示したつもりはない。

 あれこれ考えるばかりで特定の結論に到達しない原稿は、一般的に考えれば不出来なテキストということになる。
 その意味で、当稿は失敗なのだろう。

 でもまあ、最後を失敗でしめくくっておくのは、新しい年の出発のためにはそんなに悪いことではない。
 平気な顔で失敗できるということが、パパ社長のほとんど唯一の長所でもあることだし。

 そんなわけで、来年もよろしく。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

最新(2017年)の「パパ社長」の状況は「労働力調査(基本集計)」の「2.就業者」内、「図4 雇用者と自営業主・家族従業者の推移」あたりが参考になるかと思います。
それでは皆様、すこし早いですがよいお年を!

 なぜ、オレだけが抜け出せたのか?
 30 代でアル中となり、医者に「50で人格崩壊、60で死にますよ」
 と宣告された著者が、酒をやめて20年以上が経った今、語る真実。
 なぜ人は、何かに依存するのか? 

上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白

<< 目次>>
告白
一日目 アル中に理由なし
二日目 オレはアル中じゃない
三日目 そして金と人が去った
四日目 酒と創作
五日目 「五〇で人格崩壊、六〇で死ぬ」
六日目 飲まない生活
七日目 アル中予備軍たちへ
八日目 アルコール依存症に代わる新たな脅威
告白を終えて

 日本随一のコラムニストが自らの体験を初告白し、
 現代の新たな依存「コミュニケーション依存症」に警鐘を鳴らす!

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