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 いくつか疑問点があったので、折り返し電話をして真意を尋ねた。
 確認したところでは、オファーの内容は以下のようなものだった。

  1. 出演日
  2. 生放送で討論をしてもらう
  3. 出演時間は45分。討論のコーナーは実質30分前後
  4. 討論の内容は万博の是非について
  5. 他の出演者はキャスター、進行役、アシスタント、万博賛成派の論客、レギュラー出演の文化人など
  6. スタジオ入り&打ち合わせは、番組開始前30分から

 なるほど。
 説明を受けて、私の方からは

  1. 万博反対の意見をテレビ画面を通じて表明することで、自分にメリットがあるように思えない
  2. 単純に賛成派と反対派に分かれて議論をすると、たぶん視聴者の目には反対派が重箱の隅をつついているように見えるはず
  3. 自分が反対する論拠をテレビの生放送のサイズのコメントとして適切に説明しきれる自信がない

 という感じの懸念を伝えた。

 現実問題として、テレビ局はどこであれ万博に対して全社的に前のめりだったりする。
 とすれば、そのテレビ局があえて反対意見を表明している人間に対して発した出演オファーを、無邪気に受け止めて良いものなのかどうかは、大いに疑問だ。テレビの世界で仕事をしている芸能人や文化人の中にも万博招致の当事者(大手の芸能事務所に所属する芸人が万博誘致委員会のアンバサダーに就任している)に名を連ねている人間が少なくない。そんな状況下で、万博への賛否を問う討論にノコノコ顔出しで出演する仕事は、普通に考えてリスクが大きすぎる。ヘタをするとスケープゴートの役割を演じることになる。

 スタッフ氏は、私の疑念に即答することはしなかったが、2時間ほど後、連絡用に一時的にフォローしたツイッターに

「今回は別の企画で番組を進行することになりました。そんなわけですので、申し訳ありませんが、ご出演のオファーはまた別の機会にご検討ください」

 という主旨のダイレクトメールを届けてくれた。かくして、企画は流れることになった。
 結果的には、これで良かったのだと思っている。