「駆けつけ警護」に伴って生じる「武器使用」についても、「武器使用」ではあっても、「軍事行動」ではないという奇天烈な解釈がつきまとっている。

 どうして自衛隊が武器使用をしても軍事行動に当たらないのかというと、自衛隊はそもそも軍事行動ができないからで、憲法上軍事行動を禁じられている自衛隊が武器を使用することがあったのだとしても、それは単に武器を使用したということであって断じて軍事行動ではない、という理屈で、あれは軍事行動ではないということになる。

 おわかりいただけただろうか。
 つまり、本来不可能な自衛隊による「軍事行動」を可能ならしめるために「武器使用」という新しい概念が発明されたのである。

 外務省のホームページでは、さらに手の込んだ言い換えが展開されている(こちら)。

 リンクした英文ページの2の(1)のところにある
"So-called Logistics Support and "Ittaika with the Use of Force""  というチャプターには、"ittaika with the Use of Force"という言葉がつごう6回も登場する。

 ittaika
 見たこともない単語だ。
 なんと不思議なスペルの、不思議な言葉ではないか。

 これは、無理矢理に翻訳すれば「いわゆる後方支援および武力行使とのイッタイカ」ぐらいになる。

 章タイトルに出てくる「ロジスティック・サポート」も、一般的な訳語は、「兵站」だ。そして、世界中どこの国でも、「ロジスティック・サポート」は「戦闘行為」の不可分な一部分とされている。

 ところが、これが政府の翻訳を通すと「後方支援」になる。で、「後方支援」は「戦闘行為」ではないというお話につながる。

 奇妙な話だ。
 外務省が国際社会に向けて発表している英文の文書では、「ロジスティック・サポート」という言葉で説明されている同じ行為が、国内向けの日本語の文書では「後方支援」という別の概念に置き換えられていることになる。

 「一体化」の周辺事情はさらにひどい。国際社会に向けてそのまま"integration with the Use of Force"という言葉を使うと、自衛隊が海外で武力行使をともなう活動をするつもりでいる旨があからさまになってしまう。そのことを、外務省のお役人は、恐れたのだと思う。そこで彼らは、"ittika"という、日本語でも英語でもない魔法みたいな外交用語を発明することで、この難局をしのいだわけだ。

 ことほどさように、自衛隊のまわりには、常に奇妙な言葉が飛び交うことになっている。
 理由は、自衛隊が、法的な鬼っ子であり、防衛上の黒子であり、外交上の活断層であり、政治的なブラックホールだからだ。

 この問題を解決するためには、憲法を改めるか、外交方針を一新するか、防衛政策をリニューアルするか、それともそれらの全部を刷新すれば良いのだろうが、何のどこを変えるとどんなことが起こるのかについては、やはり慎重に検討しないといけないはずだ。

 理屈に合わせて言葉を直してしまえば、立ち止まる足がかりも消える。
 迷わない覚悟が自分の中に本当にあるかどうかを確認してからでも、遅くはない。

 いずれにせよ、理屈をタテに結論を急ぐことだけは避けた方が良い。
 いつまでもごまかし続けることは恥ずかしいことだが、うちの国が、そのみっともないごまかしでこの60年あまりをそこそこうまい具合にしのいできたことを忘れてはならない。

 高校生の時に経験した遠足のバスの車内での出来事を思い出す。