《「日本は発展し、日本の都市は活力に満ち、世界でも有数のパワフルな経済をつくりあげている」と言った。ここでトランプは、読み上げていた原稿から目を離して、アベの方を見ると、
「でも、われわれと同等とは思わない。そうだろ?」
と言い、
「われわれはそれを続けていく」
と続け、さらに
「君たちは二番手だ」
と付け加えた。
翻訳者に内容を伝えられたアベは、黙って微笑んでいた。》
これなどは、アメリカのテレビドラマに出てくるクラスのいじめっ子そのものの態度に見える。
深刻なのは、トランプ大統領がこのように振る舞い、安倍首相がそれをこんなふうに受けとめていることが、世界中に伝えられていることだ。
なお、以下は、毎日新聞でも紹介されていた話だが、こんな挿話もある。
《首相はトランプ氏にとって当選後、初めて会談した海外の首脳。トランプ氏はあいさつで、首相から昨年11月に当選祝いの電話を受けた際、「首相から『なるべく早くお会いしたい』と言われ『いつでもいい』と適当に回答した。(大統領就任後の今年の)1月20日以降の意味で答えた」と説明。「私は(会談は今年の)2月とか3月とか4月と思ったが、首相は非常に積極的な政治家で、今すぐということだった」と食い違いを「暴露」。直後に首相がすぐに訪米しようとしていると知り、側近からも「適切なタイミングではない」と言われて断りの電話を入れようとした。
しかし、「首相はすでにニューヨークに向かっており、断ることはできないので会うことにした」と語った。トランプ氏は当時の会談について「本当にいい思い出になった」と述べた。》 (こちら)
一対一関係の話を、外部の人間(それもメディアの人間に対して)漏らしてしまう態度自体極めて異例だし、暴露されている内容も安倍首相にとっては恥に属する話題だと思う。
ワシントン・ポストの紙面では、
how Abe was so desperate to visit him at Trump Tower after the election
(選挙の後、トランプ・タワーを訪れることに対してアベがいかに必死だったか)
という書き方をされている。
私は、心配している。
トランプ大統領は、自分に近づいてくる人間には鷹揚に応対するし、利用価値があると見た人間にはわかりやすい厚遇を与える人だと思う。
でも、自分にとって価値のない相手だと思った時に、彼がどんな態度を取るのかは、この半年の間に彼のもとを去った側近の扱いを見ればよくわかるはずだ。
"You are fired!"(お前はクビだ!)
と言い放つテレビ番組の彼の演技は、半ば以上彼自身の本質だと思う。
というか、「トランプ氏」は、もともとテレビ用のキャラクターなのだ。
(文・イラスト/小田嶋 隆)
あ、そこですかさず30秒スキップですね。

当「ア・ピース・オブ・警句」出典の5冊目の単行本『超・反知性主義入門』。相も変わらず日本に漂う変な空気、閉塞感に辟易としている方に、「反知性主義」というバズワードの原典や、わが国での使われ方を(ニヤリとしながら)知りたい方に、新潮選書のヒット作『反知性主義』の、森本あんり先生との対談(新規追加2万字!)が読みたい方に、そして、オダジマさんの文章が好きな方に、縦書き化に伴う再編集をガリガリ行って、「本」らしい読み味に仕上げました。ぜひ、お手にとって、ご感想をお聞かせください。
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