ただ、
 「外国人労働者の受け入れ枠は拡大するが、いわゆる移民政策は取らない」
 とする安倍首相の答弁が、「人間」でなく「労働力」だけを輸入する意図を物語ってしまっている事実は動かせない。
 そんなことは不可能だ。

 強欲な金貸しのシャイロックが、借金の担保として、心臓のまわりの肉1ポンドを、一滴の血も流さずに手に入れることができなかったのと同じように、いかな晋三のまわりの人間たちとて、生身の人間から商品としての労働力だけを抽出して売買することはできない。あたりまえの話だ。

 アメリカでは、トランプ大統領が、移民阻止のために軍隊を出動させている。
 中米ホンジュラスからメキシコを縦断してアメリカを目指す「キャラバン」と呼ばれる人々に対応するための派遣した軍隊に「忠実な愛国者」、“Operation Faithful Patriot” という作戦名を与えている。

 11月7日、米国防総省はこのあからさまに扇情的な作戦名を、今後は使わない旨を発表した。

 トランプ陣営が、中間選挙の投開票が終わった7日になってから作戦名の変更を告知したことは、とりもなおさず、「移民キャラバン」の脅威と、それに立ち向かう「忠実な愛国者」としての自分たちの活躍ぶりを選挙のためのイメージ戦略として利用したことを証明している。

 移民は利用される。
 労働力として経済的に利用されることはもちろん、スケープゴートとして政治的に利用されることもあれば、仮想敵として社会的な不満の持って行き場にされることもある。

 どう扱うにせよ、私たちのような島国の人間が、外国人に対して平常心で向き合えるようになるまでには、一定の時間がかかる。

 つまり、開国か鎖国かのいずれの結論を出すのであれ、拙速にコトを進めるやり方だけは避けるべきだ。
 現状の政府の方針は、ウソがバレバレであり、かつ拙速であると言わざるを得ない。

 大切なことや難しい課題に対しては、賢く、かつ、中途半端な態度を堅持しなければならない。
 はなはだ中途半端な結論だが、私はそう思っている。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

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 なぜ、オレだけが抜け出せたのか?
 30 代でアル中となり、医者に「50で人格崩壊、60で死にますよ」
 と宣告された著者が、酒をやめて20年以上が経った今、語る真実。
 なぜ人は、何かに依存するのか? 

上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白

<< 目次>>
告白
一日目 アル中に理由なし
二日目 オレはアル中じゃない
三日目 そして金と人が去った
四日目 酒と創作
五日目 「五〇で人格崩壊、六〇で死ぬ」
六日目 飲まない生活
七日目 アル中予備軍たちへ
八日目 アルコール依存症に代わる新たな脅威
告白を終えて

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