ともあれ、この頃から、私は、賞の行方への興味を失って行った。
 世間の大勢も、醒めた目で見るようになっていたと思う。

 実際、1990年代以降は、いくつかの事務所に所属する歌手やアーティストが、あらかじめ賞を辞退する旨を明言するようになって、レコード大賞の権威そのものが疑われる流れになっていた。

 21世紀に入ると浜崎あゆみ嬢が3連覇を果たす。

 と、私の中では、レコード大賞は、「ベストジーニスト」だとか「ネイルクイーン」だとか「ベストファーザー賞」だとかいった、業界にあまたある「賞を出す側の人間たちが、自分たちの業界の存在を宣伝する目的で、悪目立ちのする芸能人に金品を提供することを通じて、受賞イベントに記者を集めて乱痴気騒ぎを繰り広げる世にも恥ずかしいイベント」の一つに格下げになった。

 今回のことで、テレビが後追い報道するのかどうかはともかく、レコード大賞のありがたみが地に落ちたことはもはや疑いようがない。隠すこともできない。

 今年はなんとか賞を出すのだろうし、あと何年かは続行するかもしれない。
 でも、10年後には消滅しているはずだ。
 「ドン」と呼ばれる人たちも、その頃には誰一人としてこの世にいないだろう。

 あらかじめ合掌しておく。
 さようなら。

本欄担当者としては
とっても悔しいけれど、とても面白いです。

 全国のオダジマファンの皆様、お待たせいたしました。『超・反知性主義入門』以来約1年ぶりに、小田嶋さんの新刊『ザ、コラム』が晶文社より発売になりました。

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この記事はシリーズ「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。