で、この小さな事件は、私の中では不気味な謎のまま忘れられようとしていたのだが、本書での説明を得てはじめて得心した。
本文にはこうある。
《空港で国歌を歌った中国の人々が言いたかったのは、「われわれ中国国民の安全で快適な旅行を保証するのは中国の統治者の責任である。その中には航空会社や外国の政府に圧力をかけて必要な措置を提供させることも含む。それをただちに実行せよ」ということである。クレームの相手は中国政府なのだ。》
なんとも、日本で暮らしている当たり前の日本人であるわれわれには到底了解不能な思考回路ではないか。
こういうことは、実際に中国人と日常的にやりとりしている人間でなければわからない。
この国歌のエピソードだけではない、本書では、中国の人々の自我のあり方や、社会と個人の関係についての考え方、あるいは、為政者への期待や秩序感覚といった、ひとつひとつ順序立てて説明されなければ到底理解のおよばない話が、実例つきで紹介されている。
さまざまな意味で、勉強になる本だと思う。
安倍さんにもぜひ読んでほしい。
あるいは、今回の訪中で伝えられている言動を見るに、すでに読んでおられるのかもしれない。
いずれにせよ、今回、安倍さんがとりあえず習近平氏の面子を立てておく選択肢を選んだことは事実で、してみると、首相の周辺には、優秀なアドバイザーがいるのだろう。
不愉快な助言をもたらすアドバイザーを大切にしてほしい。
これは私からの助言だ。
(文・イラスト/小田嶋 隆)
こちらでくわしく触れられています。

なぜ、オレだけが抜け出せたのか?
30 代でアル中となり、医者に「50で人格崩壊、60で死にますよ」
と宣告された著者が、酒をやめて20年以上が経った今、語る真実。
なぜ人は、何かに依存するのか?
<< 目次>>
告白
一日目 アル中に理由なし
二日目 オレはアル中じゃない
三日目 そして金と人が去った
四日目 酒と創作
五日目 「五〇で人格崩壊、六〇で死ぬ」
六日目 飲まない生活
七日目 アル中予備軍たちへ
八日目 アルコール依存症に代わる新たな脅威
告白を終えて
日本随一のコラムニストが自らの体験を初告白し、
現代の新たな依存「コミュニケーション依存症」に警鐘を鳴らす!
(本の紹介はこちらから)
この記事はシリーズ「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?