「タブー」という言葉を使うほど強い禁忌ではないにしろ、報道にたずさわる人間の間に、同業者の不祥事はあまり積極的に扱いたくない気分があることは事実で、その意味でY氏のやりざまは、記事にして面白がるにふさわしい出来事ではなかったということだ。

 もっとも、記者タブーのような露骨な身内びいきは、あるタイプの読者なり視聴者が最も強烈に批判しているところのものでもあるわけで、そういう意味では、記者の不祥事をお目こぼしにすることは、きょうび、簡単なことではない。

 特にネットメディアがそれなりの取材力と情報拡散力を持ち始めている昨今では、記者仲間が身内の恥を隠し通そうとすることは、メディアの信用を毀損する意味で、かえってリスクが大きい。

 ヘタに隠し立てをすると、「マスゴミ」という言葉を好んで使う一部のネット民の格好の餌食になる。
 これは、大変にまずい展開だ。

 思うに、Y氏の立場が独特なのは、マスコミ内部の記者タブーにひっかかっているだけでなく、メディア不信を抱いている「マスゴミ」告発者の多くが抱いている「政権タブー」にも微妙にひっかかっているところだ。

 どういうことなのかというと、本来ならマスコミの記者の不祥事を絶対に許さないはずのメディア嫌いのネット民たちが、Y氏に関しては、別の理由から告発をためらっているということだ。

 というのも、メディア不信を言い立てている人々は、多くの部分で、現政権のコアな支持者とカブっているからで、その人々の心情からすると、安倍さんの親しい仲間うちであった記者の不祥事を暴き立てることは、いかにも不都合だからだ。

 つい先日もほかならぬTBS本社前で、「TBS偏向報道糾弾大会・デモ」と銘打ったデモが行われ、一部報道によれば500人が集まったと言われている(こちら)。

 リンク先の記事に添付された写真の中で、デモ参加者の多くが日の丸を掲げていることからもわかる通り、昨今のメディア批判者には安倍氏のシンパが相当な割合で含まれている。ということは、彼らは、たとえ大嫌いなTBSの記者であっても、Y氏については糾弾をためらわざるを得ないのである。

 もうひとつ、Y氏のレイプ疑惑が黙殺されがちな理由は、それがあまりにも深刻な犯罪だからだ。

 こう言うと、意外に聞こえるかもしれない。
 深刻な犯罪の疑惑であるのなら、なおのこと大々的に報じるべきだと、そう考える人もたくさんいるはずだ。

 が、実際のところ、凶悪な犯罪の疑惑であればあるほど、気軽に記事にすることはできないものなのだ。