別の見方をすれば、地方政党としては与党でも、全国政党としてはニッチな政治的立場を獲得しに行かざるを得ない弱小政党の立場からすれば、あえて国政マターに関与して炎上を求めることは、党の存続に寄与せんとする捨て身の選択であるのかもしれない。
してみると、吉村市長があえて慰安婦問題に手を出したのは、来年の春に迫った参院選で、もしかしたら消滅してしまうかもしれない日本維新の会への援護射撃でもあれば、将来自分自身が中央政界に打って出る時のための伏線でもあるということだ。
だとしたら、なんともバカな話だ。
あるいは吉村市長ご自身は、愛国心をアピールしているつもりなのかもしれない。
が、私の目には、彼がせせっこましい縄張り根性を誇っているようにしか見えない。
つまり、吉村市長が自ら「愛国心」であるというふうに自覚し、内外にアピールしている心情は、第三者の立ち位置から観察すれば、ムラ社会由来の排外主義以上のものではないということだ。
万国博覧会を招致しようとしている自治体のリーダーがこの方なのかと思うと、アタマがクラクラする。
そもそも、万博は、人種や民族や国籍や国家にまつわる行き違いや対立を超克するべく企画された国際交流のための試みだ。
とすれば、せめて開催期間中だけでも、歴史的な行きがかりや食い違いについては目をつぶらないといけないはずだ。まして、万博の主催都市として手を挙げているリーダーであるならば。
ところが、吉村市長は、一方で万博と統合型リゾート施設の誘致によるインバウンド需要の喚起を訴えていながら、もう一方では、国際対立を煽り、民族間の反感に火をつけ、人々の間にある排外感情の高まりに棹さすことで自分たちの政治的な立場を強固ならしめようと画策しているように見える。
でもまあ、市長が頑張ってあれこれ動いた結果、万博招致とカジノ誘致がおじゃんになるのであれば、それは大阪市民にとってそんなに悪い結末ではない。
シスコのシスターの
カジノの火事は
半鐘がおじゃんで
お姉妹だ
半端な都々逸でしたね。おそまつ。
(文・イラスト/小田嶋 隆)
ところで、どちらがお姉さんだったんでしょうね?

なぜ、オレだけが抜け出せたのか?
30 代でアル中となり、医者に「50で人格崩壊、60で死にますよ」
と宣告された著者が、酒をやめて20年以上が経った今、語る真実。
なぜ人は、何かに依存するのか?
<< 目次>>
告白
一日目 アル中に理由なし
二日目 オレはアル中じゃない
三日目 そして金と人が去った
四日目 酒と創作
五日目 「五〇で人格崩壊、六〇で死ぬ」
六日目 飲まない生活
七日目 アル中予備軍たちへ
八日目 アルコール依存症に代わる新たな脅威
告白を終えて
日本随一のコラムニストが自らの体験を初告白し、
現代の新たな依存「コミュニケーション依存症」に警鐘を鳴らす!
(本の紹介はこちらから)
この記事はシリーズ「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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