理由は、彼女が「まだ若いですから」ということにしているが、杉田水脈議員は現在51歳である。

 比較的年齢層の高い議員が多いと言われる自民党の中でも、特段に若手というわけではないと思う。それでも、「若い」からと、安倍さんがなんとか杉田議員を擁護したのは、つまるところ、彼女が、自分自身の内心を代弁する存在だから切るに切れないのではないか。

 「新潮45」の編集長が、世間からの圧倒的な逆風をものともせずに真正面からの反論企画掲載に打って出た理由も、結局のところ、杉田論文が「総理案件」であることにある程度気づいていたからで、要するに、編集長氏は、この反論企画が必ずや首相に気に入られることを知っていたはずなのだ。

 特集の執筆陣も同様だ。
 小川榮太郎氏は、肩書こそ文芸評論家ということになっているが、ググるなりウィキペディアを閲覧すればわかる通り、そもそも安倍首相の関連書籍が仕事の大半を占める書き手だ。

 ということはつまり、このお話ははじめから最後まで総理案件で、反発している人たちが騒いでいる理由も、単に差別的だからという理由でもなければ、掲載責任や出版人としての良心がというお話でもなくて、この薄気味の悪い生産性差別物語の背後に、一貫して総理のご意向が見え隠れしていたからなのだ、と考えられる。

 私自身、差別的なライターが差別的な文章を書いた程度のことで、いちいち驚いたりはしない。
 700人からいる議員の中に、明らかな差別思想を抱いているらしい人間が幾人か混じっていることにも、いまさら驚かない。

 ただ、もし仮に、総理大臣の職にある人間が、杉田論文を問題視しない考えの持ち主であったのだと考えると、やはり平静ではいられない。

 とはいっても、やや長めのため息を吐き出す程度のことだ。
 息を吐いた後は、大きく息を吸う。
 私は大丈夫だ。
 目は泳いでいない。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

……当該号にはオダジマさんの連載コラムも載ってます。おっ?
かわぐちかいじさんのインタビューもあるぞ(目が泳いでいる担当編集)

 小田嶋さんの新刊が久しぶりに出ています。本連載担当編集者も初耳の、抱腹絶倒かつ壮絶なエピソードが語られていて、嬉しいような、悔しいような。以下、版元ミシマ社さんからの紹介です。


 なぜ、オレだけが抜け出せたのか?
 30 代でアル中となり、医者に「50で人格崩壊、60で死にますよ」
 と宣告された著者が、酒をやめて20年以上が経った今、語る真実。
 なぜ人は、何かに依存するのか? 

上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白

<< 目次>>
告白
一日目 アル中に理由なし
二日目 オレはアル中じゃない
三日目 そして金と人が去った
四日目 酒と創作
五日目 「五〇で人格崩壊、六〇で死ぬ」
六日目 飲まない生活
七日目 アル中予備軍たちへ
八日目 アルコール依存症に代わる新たな脅威
告白を終えて

 日本随一のコラムニストが自らの体験を初告白し、
 現代の新たな依存「コミュニケーション依存症」に警鐘を鳴らす!

(本の紹介はこちらから)