それゆえ、ここから先の議論は必ず荒れる。
 ただ、多少他人に迷惑をかけるものであっても、それを必要としている人々がいる以上は、適切なゾーニングをほどこした上で、なるべく存続するようにとりはからう必要がある。それが、政治の役割だ。

 200年とか300年先の未来について言うなら、喫煙という習慣を残さねばならない必然性はない。むしろ根絶させた方が良いのかもしれない。

 ただ、現実にいま居る喫煙者が無事に火葬場に送り届けられるまでの間は、なんとか彼らのために喫煙場所を残しておいてあげないといけない。

 現実問題として、多くの非喫煙者が、その内心でなんとなく願っているのは、すべての喫煙者が、一服ごとに、恥ずかしさと情けなさと自己嫌悪を感じながらケムリを吸い、うしろめたさと罪の意識と良心の呵責に我が身を引き裂かれながらケムリを吐き出すことだったりするわけなのだが、この設定にはやはり無理がある。

 この期に及んでいまだにタバコをやめていない頑固な人間である喫煙者は、そういうタマではない。

 彼らは、一息ごとに、誇らしくも晴れがましい気持ちでケムリを吸い、一点の曇りもない勝利感ならびに満足感とともにケムリを吐き出している。うっかりすると自分たちの吐き出している副流煙は「カネで買ったケムリ」なのだから、おまえらが吸うつもりなら料金を払いやがれぐらいなことは考えている。そいういう人々だ。

 ということは、彼らとわれわれの間に、話し合いの余地や共通の理解のための足場は、ほとんどありゃしない。
 せめて、申し訳なさそうなふりをしてくれると、こっちとしても気にしていないふりぐらいのことはできると思うのだが、お互いそんな芝居をするのも窮屈ではある。とすれば、現実的には、適当にいがみ合っている現状が、実はもっとも穏当な線なのかもしれない。

 ともあれ、都民ファーストの会はなんだかやたらとキナくさい。
 なので、件の条例案は、ケムリを上げるだけでなく、炎上して灰になってくれるとありがたいと思っている。
 と、最後は適当にケムに巻いて終わることにする。ドロン。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

東京都で430円のたばこを買うと、都たばこ税17.2円。特別区たばこ税が105.24円。
都たばこ税だけでも172億円の税収(2016年度)になるそうです。

 当「ア・ピース・オブ・警句」出典の5冊目の単行本『超・反知性主義入門』。相も変わらず日本に漂う変な空気、閉塞感に辟易としている方に、「反知性主義」というバズワードの原典や、わが国での使われ方を(ニヤリとしながら)知りたい方に、新潮選書のヒット作『反知性主義』の、森本あんり先生との対談(新規追加2万字!)が読みたい方に、そして、オダジマさんの文章が好きな方に、縦書き化に伴う再編集をガリガリ行って、「本」らしい読み味に仕上げました。ぜひ、お手にとって、ご感想をお聞かせください。

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