複数の省庁が障害者の雇用率を水増ししていたことが発覚した。

 報道によれば、水増しは複数の省庁で42年間にわたって行われていた大掛かりなものであったのだそうだ(こちら)。

 「久しぶりに出くわしたとんでもないニュースだ」

 と言いたいところなのだが、残念なことに、ニュースの受け手としての私のとんでもなさへの感受性は、順調に麻痺しつつある。

 私は驚かなかった。
 「まあ、そういうこともあるのだろうな」
 と思いながら記事を読み終えた。

 そして、その自分自身のクールな受け止め方と不人情さに、いくばくかの後ろめたさを感じている次第だ。

 42年間にわたって、複数の省庁が障害者雇用率の数値を偽って報告していたことは、これは、何度強調しても足りないことだが、実にとんでもない驚天動地の醜行だ。
 が、その一方で、私たちは、その、おそらくかなり数多くの関係者が感知し得ていたはずの事実について、ずっと知らん顔をしていた当事者でもある。

 42年間も発覚しなかったということは、「巧妙に隠蔽されていた」とか、「関係省庁が全力を挙げて秘密の保持に心を砕いていた」というようなスジのお話ではない。この間の経緯は、どちらかといえば、「公然の秘密」として見てみぬふりをされてきた前提だったことを物語るもので、つまるところ、われわれは、その種のごまかしを半ば「常識」として容認してきたのだ。

 実際
 「そりゃ、お役所だって、きょうびそんなにのんびりした職場じゃないわけだしさ」
 てな調子で「冷徹」な見解をツイートする匿名の論客が活動しはじめている。
 そういうふうに「残酷」に受け止めてみせるのが、普通の人間の普通の感覚だと、彼らはテンから信じてやまない。

 彼らにしてみれば、障害者の排除に憤ってみせている「自称リベラル」こそが、「偽善者」の「お花畑」の「素敵なポエムを唱えていれば世界が素敵なファンタジーランドに変貌すると思い込んでいる夢想家」だというお話になる。

 彼らが想定している「あたりまえな世間」では、中学校の公民の教科書に載っているテの話をわざわざ持ち出すタイプの人間は、この世界のリアルと、教科書が教えていたお上品な建前の区別をつけることができない低能ぐらいな扱いになる。あるいは「おリベラル」「おサヨクさま」といった調子の尊称まじりの呼びかけ方で揶揄する対象に過ぎない。いずれにしても、マトモな人間としては扱われない。

 「あんたたちが学校の教室で吹き込まれてきた理念だの理想だのは、校門の外に出たら通用しないんだぜ」
 「な、いいかげんに学習してくれよ。学校の教室で勉強ができたという君たちのその栄光の物語は、卒業した時点でとっくに終わってるんだから」
 「そんなわけなんで、あんたらのその人権アヒャアヒャ踊りの輪は、どうか仲間うちだけで静かにやってくれるとうれしい。当方からは以上だ」

 ネット上に盤踞する冷笑系の空論家でなくても、われら一般国民にしたところで、役所の人事採用が額面通りに障害者に門戸を開いていないことに薄々気づいていながらそれを黙認していた人間たちではあるわけで、つまるところ、われわれは、駅のベンチにうずくまって苦しんでいる人のそばを通り過ぎる通勤客みたいな調子で、知らん顔をしていたのである。

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