難病の方と並べるのもおこがましいが、私自身、昨年、足を折って、ずいぶん不自由な思いをした。では、歩けないでいた間中ずっと不自由を感じていたのかというと、案外そんなこともない。歩けないなりの暮らしの中で、小さなことを面白がったり、できる範囲の暮らしの中に生きがいを見出したりして、それなりに楽しく暮らしていた。

 とすれば、病気をすることも、年を取ることも、そんなに怖いことではない。

 私個人は、あらゆる条件の人間を生存させるために社会があるのだという、学校で習った通りのお花畑ライクな社会観をそのまま鵜呑みにしている。

 社会に出て、さすがに、その目的が完全に達成可能とまでは思っていない。だが、病気になっても、足を折って動けなくなっても、目に見えるカタチで社会の役に立っていなくても、誰であれ、生きているだけで、立派に社会の一員として胸を張って生きて良いのだと考えている。

 最後に、何回かネット上で話題になっている、「ヤフー知恵袋」の回答にリンクを張っておく(こちら)。

 社会は、個人の弱さをカバーするためのシステムだ。
 他人に死んだほうが良いと言えるような人間は死んだ方が良い。
 というこの言い方は、永久にループするわけだが。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

「寛容さ」と社会の強さをそろばんずくで考えるなら、この本と、
最強国の条件』(エイミー・チュア)も面白いかもしれません。

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